第六話 魔法測定
今日はステラにとって、初めての授業だ。
しかし初めての授業は、魔法測定だった。ステラの古の紋章には魔法が全て使えると言う噂がある。果たして、ステラは全ての魔法が使えるのか?
女神暦8484年4月3日
学園生活が始まって一日が経った。
「はあ〜眠い」
昨日の出来事があまりにも多すぎて、寝ても疲れが取れない。もう少し寝させてくれよ。休みたいな〜なんてこんなこと言っている場合じゃないな。気合入れていこう!
今日からは普通に授業が始まる。今日は授業一回目なのに、魔法測定があると言う。
魔法か…あまり使いたくはないのだが。僕は古の紋章の影響で、魔法が全種類使えるらしい。凄いことなんだけど、まだ属性も知らないクラスメイトたちに見られるのはまずいかもしれない。あまり目立たないようにしよう。
「レイン、おはよう」
「おはよう、ステラ。昨日は大丈夫だったか?」
「ああ、昨日のことは心配ないよ。怪我も治っているし」
「そうだと良いけど。噂で聞いたけど、ある生徒がステラと誰が揉めているところを見たって。あれってほんとなのか」
「違う違う。あれはただ話していただけだ。その後に、建物が壊れて瓦礫の下敷きになり、保健室に運ばれたわけ」
「よく死ななかったな。普通は病院送りだぞ」
「かもな」
実際は違うけど。だけど、一体誰が見ていたのだろうか?僕は少し気になっていた。僕はレインにその事を聞こうとした。その時、アメリアさんを見つけた。
「ごめん、話は後で」
「分かったよ。行ってこい」
「ありがとう」
僕はすぐにアメリアさんのところまで駆けつけた。
「アメリアさん!おはよう」
「おはよう」
気まずい空気だ。僕の本当の正体を話した後、一度も話していないため、なんで言えば良いのか分からない。
「あの、アメリアさん。少し話したいことが」
「アメリア…」
「はい?」
「私もアメリアって呼んで。さんなんていらない」
「良いけど、なんで?」
「だって、私以外みんな呼び捨てで呼んでいるじゃない」
アメリアさ…アメリアは恥ずかしそうに言った。
「ああ〜なるほど。えーと、アメリア」
「なーに」
とても嬉しそうな顔だった。
「少し話したいことがあるんだけど」
「ええ、良いけど」
「実は昨日のことで」
「僕がエレファン侯爵家の息子のこと。それとも、私のこと?」
「両方だ。まず、アメリアは一体何者なんだ」
「私は……」
「おいお前ら、席につけ。朝のホームルーム始めるぞ」
タイミング悪すぎだろ。肝心なところを聞き逃してしまった。
「また後で」
「うん」
僕とアメリアはそれぞれの席についた。早く終わらないかな。
「今日の連絡は二つある。まず一つ目は、4組に転属生が来ることになった」
まだ入学してから一日しか経っていないのに、転属生が来るなんて珍しいな。いや待てよ、もしかするとな…
「では入ってもらおう。いいぞ」
思った通りだった。クロウが2年から1年に転属し、うちのクラスに入ってきた。
「あれって確か、宰相様の息子じゃないか」
「ええ、そう見たいね」
「もしかして、彼が転属生なのか」
クラスメイトたちはざわつき始めた。
「どうして、先輩がここにいるんだ。何か知っているかステラ」
「いや知らないな」
本当は知っているけど。しかし、一日でここまで転属手続きを済ませるとは。普通なら転属は出来ないと思うけど。恐るべしクロウの父。
まあ、このご時世だ。いつ内戦、他国との戦争が起きるか分からない状況だし。仕方ないとは思うけど…
それに昨日は確かに、僕をお支えするとか言っていたけど、流石に転属は可哀想だろ。だが、クロウがそれでいいと言うなら仕方ないことかもしれない。
「はじめまして。2年8組からこのクラスに転属させていただきました。クロウ・ラージュと申します」
「キャー!」
まじかよ、女子はメロメロだ。相手はあの宰相の息子だぞ。どこがいいのかさっぱり分からん。
「お前たち、静かに出来ないのか。まあいい、クロウは空いている席についてくれ」
「分かりました。では…」
クロウは僕の隣の席に来た。
「先生、ここでいいですか?」
「別にいいが」
「ありがとうございます。今日ぶりですね、ステラ」
「おや、ステラとは知り合いか」
「いえいえ、昨日会ったばかりでして」
「そうか」
おいおい、これ以上喋らないでほしいな〜昨日のことは、先生にあまり話していないから。
「それでなんでこのクラスに」
「昨日も言ったではありませんか。どこまでもお供するって」
「言っていたな。まあ、クラスメイトになったんだし、これからよろしく頼む」
「ええ、こちらこそ」
「全くお前らは‥はあ」
先生はため息をつき次の話に移った。
「転属生のことはこれで終わりにしておいて。二つ目は、今日の魔法測定についてだ。本当はクラスだけでしたかったのだが、急遽3組との合同魔法測定及び、魔法訓練に変わった」
急すぎないか。それに3組は、魔法の天才〈星の王子〉と言われる者がいると聞いたが。
「みんなも知っていると思うが、現在この世界には火属性魔法、水属性魔法、土属性魔法、風属性魔法、精霊魔法、光属性魔法、闇属性魔法、無属性魔法の八つの属性魔法が存在する。今回の合同対抗訓練は、自分たちがどの属性魔法が使えるかを確認し、3組と戦ってもらう」
「まじかよ…」
「あんな強いクラスと戦うなんて‥それに、まだ私たちは扱い方も知らないのよ」
「うるさい。私だって最初はみんなと同じ気持ちだった。でもな、訓練を重ねるうちに魔法が得意になった。今回の訓練は、君たちにとっては少し怖いかもしれない。勇気を持て、勇気をだ」
「先生……」
「分かりました先生!やってやりましょうよ」
「ああ、そうだな。3組に見せてあげようじゃないか」
「みんな頑張るぞー」
「「「「おーーーー!」」」」
みんな楽しそうだ。僕も流石に本気出さないとな。あの星の王子だけは負けたくないな。
「どうした、クロウ」
「ステラの持つ、古の紋章は確か全属性魔法が使えたはずです」
「そうらしいな」
「古の紋章について調べたくて古文書を読んだのですが、元々は八つの属性魔法ではなく、九つの属性魔法があったらしいですよ」
「そうなのか。九つ目があるのか」
「はい。詳しくは載っていませんでいたが」
「そうか。まあ仕方ないよな。現代の魔法はかなり枝分かれしているし。でも僕は使えるのかな。九つ目の魔法属性」
「ええ、使えますが。いくら古文書を読んでも、九つ目の魔法属性は載っていませんでしたよ。もしかすると、現代では使える人はいないのでは」
おかしいな。僕の父も言っていたが、ネフェリルが生きていた時代にあったとされる魔法が、現代でも使える人がいると聞いたげど。
「だったら僕が使うよ。九つ目の魔法属性」
「でしたら、私は全力で調べます!」
「心強いな。頼むぞクロウ」
「はい」
クロウはやる気だ。僕も目の前の魔法測定と訓練に集中しないと。
「お前ら話は終わったか。今日のホームルームは以上だ。十分後、第一訓練場にこい。遅刻するなよ」
「「「「「はい!」」」」」
第一訓練場か‥確かこの学園で一番デカい訓練場だ。多少、本気を出しても壊れないよな。近接戦闘じゃないし。
「クロウ、それにみんな頑張ろうな」
「「「「おう!」」」」
「では行こうか、第一訓練場に」
こうして僕たちは訓練場に向かった。
一時間目;魔法測定 第一訓練場
いや〜第一訓練場はやっぱり広いな。ここなら、近接格闘でも壊れないな。それに、対戦の時はちゃんとシールドが張られる仕組みになっている。相当頑丈な堅さだ。ここで対戦してみたいな。
「あれを見ろ、3組の連中だぜ」
「ほんとだ。それにあそこにいるのは、星の王子だ」
「やっぱり出てきたか。子爵家の次男なのに、あんなに気取りやがって。ムカつくー」
「なあ、俺たち早く魔法属性知ってさ、あいつと戦ってみようぜ」
「いいぞ、いいぞ。あんな涼しそうな顔を泣き顔に変えてやろう!」
全く4組の男子はどうなっているのだ。いくら自分たちより下だと言って、手出しできる相手ではないぞ。あいつは、あんな若さで経験しているんだ。戦争をな。
「ハルク、4組の連中やたらと騒がしくないか」
「ほっとけばいい。それに僕が気になっているのは、あの子だ」
「あいつは確か‥‥学年最下位の成績を持つ劣等生ですぜ。なぜあんな奴を」
「彼はとても面白い雰囲気だからね。劣等生なのにクラスに馴染んでいる」
「確かに。普通の劣等生ならあんなに馴染めないはず」
「きっと何かあるんだろうな」
「はあ。あんまり無茶はしないでくださいよ。我がリーダー」
「元よりそのつもりだ」
そう言って、星の王子ことハルク・ラ・フィセルは4組を後にした。
「3組、4組集合!」
集合の合図が聞こえたので、僕たちは先生のいる方向に向かった。
「4組の皆さん初めまして。私は3組の担任をしております、カルロン・ラファエルと申します。今日は3組と4組の合同魔法測定と魔法訓練です。生徒の皆さんは自分の使える魔法属性を知り、その魔法を実践で使えるように訓練していただきます。今日はまず、自分の魔法属性を知りましょうか。生徒の皆さんは、こちらの端末に手を置き、自分の紋章、あるいは名前を言ってください。そうすると、魔法属性がこの画面に映ります」
「こんな物がこの学園にあるとはな」
「ああ、さすが最新技術が集結した学園だ」
確かに、僕もこの装置には驚いた。まさかこんな物がこの学園にあるなんてな。
「カルロン先生!魔法は使える人と使えない人がいると聞きましたが」
「ええ、もちろん使えない人もいます。ですが、ここにいる生徒の皆さんは、全員試験を無事に合格しているので、心配はありませんよ」
「そうなんですね。お答えいただきありがとうございます」
「ほかに質問のある人は…いないみたいなので、早速測っていきましょうか」
「「「「はい!」」」」
全く面倒だ。父の言う通り、魔法全て使えって画面に出たらどんな反応するのだろう。みんなの表情は楽しみだが、同時にこれは大きなリスクが伴う。慎重に行こう。
「ハルク君の魔法属性が出ました。ハルク君は……すごいです、光属性魔法、風属性魔法、水属性魔法、無属性魔法の四つの魔法が使えるみたいですよ」
「予想通りだ」
「キャー!ハルク様」
全くいい気なもんだ。それは全部紋章と家柄が関係しているからだろ。いいよな、モテる男って。
「どうしましたか?ステラ」
「いや、四つの魔法属性が使えるだけであんなに騒がれるのか」
「もちろんですとも。私は光属性魔法、風属性魔法、闇属性魔法の三つしか使えませんが、結構騒がれましたよ。普通生徒や一般の人でも、二つ魔法が使えるのは珍しいケースらしいですよ」
「珍しいね…」
「ステラはもちろん、全属性使えますよね」
「まあ、測ってみないと分からないが」
そんなに期待されなくてもいいがな。大したことないだろ。
「次、ステラ君」
「はい」
いざ測るとなると、緊張するな〜それにみんなの視線を感じる。やばい、心臓がちぎれそう。
「では紋章を」
あまり使いたくないんだが、手袋をしている状態だしここで発動しても、大丈夫だよな。まあ、バレたらそこで終わりだ。一か八かやってみよう。
〝古の紋章〟
古の紋章を発動した僕だが、魔法属性が映し出されている画面を見ると、
〝1年4組ステラ・ゼロ
魔法属性:火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、精霊魔法、光属性魔法、闇属性魔法、無属性魔法、古代魔法 ほか〟
やっぱりクロウの言う通り、全属性の魔法が使えたのだ。でも僕は最後の、古代魔法が気になってしまった。聞いたことのない魔法だ。
「ステラ君……嘘でしょ!全属性使えます…」
「まじかよ」
「ハルク様よりも使える人がこの学園にいるなんて…」
「おい、何かの勘違いなのでは」
「そうだそうだ!」
「やめろ!」
「ハルク様…」
「王国の最新技術が備わった、魔法測定器が出した結果だ。みんな、素直にこの結果を受け入れよう」
「ハルク…」
僕の結果を見て3組と4組の生徒は全員、怯えた表情をしていた。
「ステラお前…」
「ごめん、怖がらせちゃったかな」
「いや、その反対だ。すごいなお前」
「全属性使えるなんて聞いたことないぞ」
「私もよ」
「僕もだ」
「あはは、そうかな」
「ステラ、自分の結果に胸を張りなさい。私たちみんなは貴方の味方ですから」
「ありがとう!みんな」
こうして、魔法測定は無事に終了した。
でも一体、古代魔法ってなんだろうか?なぜ、僕だけが使えるのだろうか?例えば紋章の影響だとすると…いや、これ以上は考えないようにしょう。僕は立ち上がり、次の訓練場に向かった。
「ほお。あの4組のステラ・ゼロ、全属性使えるらしいぞ。それになんだ、あの最後の古代魔法って」
「まあ、調べてみる価値は十分にありそだ。後でステラ君を、我が研究室に連れてこい」
「分かりました。研究長」
そう言って、研究長は自分の研究室へと戻っていった。
第六話読んでくださりありがとうございます!
ようやく帝国英雄戦記も、学園ぽくなってきました。でも、戦記ぽくはないかも…
さて、ステラが気にしていた魔法、古代魔法とは一体どんな強さがあるのでしょうか?実際は…わかりません。多分、他の魔法より計り知れない強さがあるのだと思います。
最後に、読んでくださった皆様、応援本当にありがとうございます!これからも、帝国英雄戦記を読んでくれたら嬉しいです‼︎