第五話 放課後
ネフェリル神聖王国の宰相の息子クロウに、戦いを挑まれたステラ。クロウには自分の正体もバレている。果たしてステラはどのようにして、乗り越えていくのか…
「今日からは、生活も共にする仲間だ。仲良くしろよ。男子は第四男子寮に、女子は第四女子寮に帰宅してくれ。部屋は入学式前に配った、生徒会員手帳に書いてあるから、それをみて確認するように。以上」
「礼」
「「「「ありがとうございました」」」」
ようやく、一日目が終わった。一日が長く感じたのは人生で初めてだ。1時間目は自己紹介、2時間目は学校案内、3時間目は学年集会、4時間目はクラスミーティングがあった。毎日この生活が続くのか。大変だけど頑張ろう。
それに、これからは男子寮で生活するか…
少し不安だが、新しい生活にも慣れていかないと。僕は立ち上がり、男子寮に向かおうとした。その時、
「ステラ君、先程の件本当にすまない」
と誰かに謝られた。
後ろを振り向くと、誤っていたのはさっき戦った、レインだった。
「いやいや、僕の方こそ馬鹿にして本当にごめん。悪気はないんだ。だから、顔をあげてよ」
「そうか。でもこれだけは言わしてくれ、君のおかげで目が覚めたよ。試験の成績だけでは計れない実力がある。試験だけではその人のことを知らないってね」
「よかった。なあレイン、これから4年間友人としてよろしく頼む」
「ああ、こちらこそ」
「俺、ゼルザよろしく」
「僕は、レフト」
「みんな、よろしく」
こうして、一日で僕はすっかりクラスに馴染んだ。
だけど、アメリアさんとはあの事を話した後、一度も話していない。どうしたら話せるか、考えても考えても答えが見つからない。
第一教室棟 一年下駄箱前
「えーと、これってどっちに行ったらいいのかな?」
僕は迷ってしまった。この学園は沢山の校舎と、施設があるからすぐ迷う。1年生、それも入学してまだ一日も経っていない僕たちにとっては。
「お困りのようですね。どうしましたか?」
突然誰かに声をかけられた。
「いや〜今から第四男子寮に行こうと思ったのですが、どこにあるのか分からなくて」
「そうでしたか。では途中まで案内しましょう」
「ありがとうございます」
優しそうな人だった。この服は多分2年生の先輩だろう。
安心している僕だが、この後、僕は天と地がひっくり返ったような感じがした。
「そういえば、まだ君の名前を聞いていませんでしたね」
「そうでしたね。僕は1年4組のステラ・ゼロです」
「ステラ…」
「何か言いましたか?」
「いや、気にしないでください。私は2年8組のクロウ・ラージュと申します」
あれ?聞いたことあるな。僕は先輩の名前を聞いて違和感を感じた。
「先輩だったんですね。だからここにお詳しいですのですね」
「いえいえ、そんなことはないですよ。私だってよく間違えますし…」
「どうしましたか?」
「少々考え事を‥もしかして貴方、ステラ・フォン・エレファンですか?」
「!!!なんのことでしょうか?」
まさか、クロウ先輩には正体がバレているのか。そんなはずはないと思うが。だが、仮に僕の正体を知っているとしたら。僕は古の紋章がある左手を隠した。
「その左手の紋章、報告書どうりですね。やはり貴方は、エレファン侯爵家次期当主ステラ・フォン・エレファンで間違いない」
「なあ先輩。僕の正体を知っているんだったら、今のことは少し見逃してくれないか?」
「それは無理ですね。今やネフェリル神聖王国は貴方を必要としていますから」
「そんなことを父から聞いたよ。でも、ここで捕まるわけにいかない。覚悟しろ」
「いいでしょう。貴方がその気なら受けて立ちましょう」
僕は、咄嗟に剣を抜いた。僕の剣は鮮やかな青色で出来た名刀。
先輩も剣を抜いた。先輩の剣は漆黒の色で出来た剣だった。しかも、神聖王国最強の宰相の紋章が刻まれていた。
僕はその時、先輩いやクロウの家柄が分かった。彼はネフェリル神聖王国の中でも、特に権力を持っている7人貴族七聖人の一人、グロウェル・ラージュの息子だった。
これはまずい。何がまずいかと言うと、今の僕の力では勝てない相手だ。
「そういえばステラ、貴方入学式の前は派手に戦ったと聞きました。あれは紋章のおかげで勝ったのでしょうか?」
「あれは実力だ」
「そうですか。聞いているだけでは無駄と言うことですね。一瞬で終わらしましょう」
クロウの剣の構え、あれは軍の構え方か。少しずつクロウが近づいてきた。一歩、また一歩。後ろには壁。僕には逃げ場がないか…クロウに勝つにはこの技しかないのか。使いたくなかったけど、まあいいか。今は緊急事態だ。
「分かりましたよ先輩。もし僕が勝ったら見逃してくれますか」
「いいでしょう。ですが勝ったらの話ですけど」
クロウの表情は余裕そうだ。
「このコインが落ちたら始めるとしましょう」
「分かった」
「では」
クロウの手からコインが、上に高く上げられた。
コインはくるくると地面に落ちた。
「行くぞ」
「どこからでもどうぞ」
〝王国式剣術最上級第三級〈閃光〉〟
まさかこの場所で、王国剣術最上級第三級を使ってくるとはな。さすが宰相の息子だ。ならばこっちも。
(一撃で仕留める!)
〝エレファン家秘伝一級剣技〈速風斬花〉〟
周りの建物を破壊して、クロウの技とぶつかった。バーンと巨大音が鳴り響き、僕とクロウはその場に立ち止まった。
バタ
クロウが倒れた。
初めて強いやつと本気で戦いこれに勝利した。
「勝った‥のか」
僕は嬉しくなった。でも僕も大技を使った影響で、その場に倒れてしまった。
「う…」
気がつくと僕は保健室にいた。
「あれ僕は確かクロウと戦って、勝ったんだよな。なぜ僕はここにいるんだ」
「気が付いたか」
「先生…」
「倒れた建物の中に人が倒れているって聞いた時は、驚いたがな、いったい何があったんだ?」
「何もありませんでしたよ」
「本当か。だが後もう一人倒れていたのを発見しだが」
「建物が倒れそうだったので、助けようとしただけですよ」
「はあー。お前が言うなら、これ以上は聞かないようにする。だがステラ、これ以上は気をつけろ」
「僕が何者か、先生は知っているんですね」
「当然だ。私を誰だと思っているのかね」
「そうでした」
メリシア先生は僕の担任だ。
先生の兄が七聖人の一人で、この学園で僕のことを知っている一人だ。入学前から僕のことを知っていたらしい。まあ、僕の父と先生の兄は昔から仲が良かったらしいから、知って当然か。
「左手の紋章のことなんだが、これをつけておくといい」
「これは?」
「手袋だ。それもかなり上等の皮で作られている」
「ありがとうございます」
「大したことないよ。それじゃ私は行く。痛みが引いたら早く寮に戻れ。そういえば、ここに連れてきてくれたのは、アメリアだったらしいぞ。お前のことすごく心配していた。後で礼言っとけよ」
「分かりました」
「…じゃあな」
バタン
先生が保健室を出て5分ぐらいした後、クロウがやってきた。
「大丈夫でしたか?」
「怪我のことですか、大丈夫ですよ。これぐらいは覚悟していましたから」
「そうですか」
クロウは何か言いたそうな顔だった。
「何か言いたいことでもあるのではないでしょうか?」
「実は先程、父上から連絡が来まして。『エレファン侯爵家次期当主がアレスト王国立学園にいるなら、お前が全力でお支えしろ』と言っていました」
「そうなんですね…はい?お支えする‥先輩が!」
「そうです。そのため、父上が強引に私を、2年生から1年生に変えました」
「そんなことがあったのですね。僕のために本当にごめんなさい」
「いえいえ。私も強い主人をお支えできるなんて光栄だと思います。それと、同じ学年ですので敬語はやめましょうか」
「そうです‥いや、そうだな。改めて、ステラ・ゼロよろしく」
「よろしくステラ。私はクロウ・ラージュ」
「知っているよ、クロウ」
一度剣を交えば、沢山の人と出会える。敵同士だった者も、一試合で友人となる。僕は今回の戦いをして改めて思った。
そして僕はクロウに向かってこう言った。
「さあ、新しい時代の幕開けだ。ついてくるよなクロウ!」
「ええ、もちろん。どこまでもお供します」
この時初めて、皇帝と宰相の長き物語が幕を開けたのである。
「お待たせしました」
「あの男について分かったか」
「ええ、分かりましたよ。グレン様の言う通り、あの男の名はステラ・フォン・エレファンと言います」
「やはりそうか。あの次期エレファン侯爵家当主の小僧。フハハ‥面白い。今はどこにいる?」
「アレスト王国立学園にいるそうです」
グレン・セルド・アクティナスは立ち上がり、
「ならば行こうか。王国立学園に」
「「「「はい!」」」」
「楽しみだぞ、お前と会う日が」
グレンはそう言ってその場から離れた。
第五話読んでくださりありがとうございます。
読んでくださった皆様、どうでしたか?正直、かっこが多過ぎだったと思います。反省はこのぐらいにしておいて。
さて、ステラの右腕クロウが今回登場しました。あの戦いでは、ステラもクロウも紋章を使っていません。全ては実力勝負で戦っていました。両者の実力は計り知れない者ですね。
バトルアクションの小説を書くのは初めてです。うまく書けていれば嬉しいですが、まだまだ練習不足だと思います。これから書いていくうちに上手くなればいいな〜
最後に、これからも帝国英雄戦記を読んでくれたら嬉しいです。ではまた次回でお会いしましょう!