第十六話 Gグループ
6月15日 第八訓練場
「今よ」
「まかせろ」
一人の選手が相手の選手に向かって剣を振り下ろす。
閃光のように剣が相手の選手に直撃した。そして、攻撃を受けた相手の選手は「これ以上は戦えない」と言って降参宣言し、試合は終了した。
「今の一撃…… なかなかね」
「まぁ、先輩だからな」
ステラは剣を鞘に収める選手を見つめながら答えた。アメリアも会場を見え渡していた。
今日は試合がないステラとアメリアは第八訓練場に来ていた。理由はクロウとローズがこの会場で試合をすると聞いたため応援しにきていたからだ。
『Gグループの次の試合は三十分後におこなわれます。出場する選手は、控え室にお越しください』
アナウンスが終えた数十秒間後、ステラの魔法石に一通のメールが届く。
(誰からだろう……)
とりあえずステラはメールを開けてみる。
「アメリア。クロウからきたぞ」
「ん?」
開けたメールをアメリアに見せる。
〝ステラ、私達は次の試合に出ます!〟
「次の試合か〜 対戦相手は誰だろう?」
「見てみる」
ステラは開けたメールを閉じ、Gグループのトーナメント表を見る。
「クロウ達の対戦相手は…… 2年の先輩方らしい」
「強いのかな?」
「ん~ 普通かな」
ステータスではいたって普通だったため、何とも言えなかった。魔法石をしまったステラは破壊された会場の中央を向いた。
向いた先にいたのは二人の教師だった。教師の顔にはサングラス手には杖が握られていた。
(一体何を……)
すると、教師たちは杖を円を描きながら振り回し始める。
「ステラ、あの人達何してるのだろう?」
疑問に感じたアメリア。だが次の瞬間、教師を中心とし土属性魔法特有の魔法陣が会場全体現れ、同時に光が放たれる。
「くっ……」
あまりにも眩しかったため、思わず目を閉じた。再び目を開けると、壊れた床や壁、照明などが次々と元に戻っていた。
(なるほど……)
ステラは納得した表情でアメリア肩をたたいた。
「今の光…… 一体何?」
「おそらく土属性魔法のよるものだろう。あの光によって壊れた会場が元に戻ったと思う」
よく考えたら、先月ジュリカと戦った際、第三訓練場がめちゃくちゃに破壊されたのにもかかわらず、なぜいまだに元に戻っていないだろうか。
(今のように魔法属性魔法を使えば、一瞬で元に戻るはずだが……)
何かしらの事情があるんだろうとステラは感じた。時は少し経って……
『まもなく、Gグループ第二試合を開始します!』
会場にアナウンスがはいる。会場は少しずつ盛り上がりをみせていた。
「いよいよだね」
「そうだな。あの二人だから、この試合はとても面白くなりそうだ」
一方控え室では、クロウとローズが試合前に軽くストレッチをしていた。
「クロウ、調子はどう?」
「絶好調ですよ。ローズ様は?」
「私も同じ意見よ。早くこの試合を終わらして、何か美味しいものを食べたいわ」
「そうですね」
平和な会話が控え室でおこなわれていたが……
「クロウ選手、ローズ選手は入場してください」
一人の生徒が控え室に来て、クロウとローズに入場するように伝えた。
「行きましょうか」
「そうですね」
クロウとローズは控え室を出て会場へ向かっていった。さらに数分後……
『それでは、Gグループ第二試合を開始します!』
会場のアナウンスが再び入り、第八訓練場は歓声と拍手で包まれる。
『まず選手の入場ですー。東ゲートからは今注目されている話題のペア、クロウ・ラージュ選手&ローズ・イリネス・ネフェリル選手!』
東ゲートにいたクロウとローズは、アナウンスが言い終わる同時に会場の中央へ歩き出した。
「相手が先輩でも容赦しないわ。全力でいくよ、クロウ」
「はい!」
クロウとローズは規定の位置で止まって、前を見据えた。
『続いては、去年の学年対抗剣舞試合で準優勝したペアが今年も復活! 西ゲートからガイウス・オレリウス選手&シリテス・ベクトリオ選手!』
西ゲートにもスポットライトが照らされ、対戦相手の姿がはっきりと見えるようになった。
ステラは思わず二度見した。名前から強そうに思えてくるが、スポットライトに照らさられた姿はまるで、傭兵みたいな姿だった。
傭兵みたいなガイウスとシリテスは無言で、規定の位置へと歩いていく。そして規定の位置に立ち止まり、ようやく口を開けた。
「久しぶりだな、クロウ」
「ええ、久しぶりですね。ガイウス、シリテス」
クロウは笑顔を見せながら、去年同じクラスだったガイウスとシリテスに手を振った。
ガイウスもシリテスも険しい表情から一変し、優しい表情になっていた。
「それにしても驚いた。噂で聞いただけで冗談だろうと思っていたが、1年に戻っていたとは……」
「相変わらず、1年でも元気でやってるみたいだな」
「えぇ、お陰様で元気にやってますよ」
「それは何よりです」
何気ない会話が両者の緊張を和らげる。
「ところで、どうやったら王女様とパートナーになれるんだよ」
「それは…… 人柄ですよ」
「くっ……」
「ガイウスは無理なだな」
「なんだと!」
「ふっふっ」
審判員が会場の中央に来ても会話は続いていたが……
「そろそろ始めましょう」
流石に時間がなくなってきたことに気づいたローズは、持っていた鞘から剣を抜き、攻撃系魔法陣を展開した。
「そうだな。この話の続きは後でしょう」
「えぇ」
クロウやガイウスたちもローズの後に続いて、攻撃系魔法陣を展開した。
「クロウ、ガイウスと戦ってみたいわ」
「わかりました。では私はシリテスと」
クロウは視線をシリテスに向け、剣を構えた。
審判員はクロウたちが戦闘準備を終えたことを確認し、手を挙げた。そして……
『これより、Gグループ第二試合を開始します。両者、試合を始めてください』
コールとともに、ローズとガイウスは動き出した。