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第十五話 学年対抗剣舞試合開幕

 いよいよ、学年対抗剣舞試合が開幕しようとしていた。

 アレスト王国立学園では、朝から沢山の人で賑わっている。

 

「只今、第一訓練場は満席となっております」


 開幕会場となる第一訓練場では、約二万人が座れる席が朝の九時時点で満席だった。


「第二訓練、第四訓練場でもご観覧できますので、そちらに移動をお願いします」


 アナウンスを聞いた人達は、続々と第二訓練場や第四訓練場に向かっていった。

 そんな中、ステラは指定された控え室にいた。

 

「いよいよだね」


 ステラの横からアメリアが声をかけてきた。


「そうだな」


 ステラは壁に掛けられてある時計に目を向ける。

 時刻は九時半だった。

(開幕まで残り三十分か……)

 残り時間何しようか悩むステラだった。


「ところで……」


 アメリアは、中央に置かれた石のようなものをじろじろと眺めながら……


「これって一体何だろう?」


 と、不思議そうな顔をして言った。 

(……)

 ステラが来る前からあったものらしく、控え室にいるクラス全員に正体について聞いても「わからない」と答える人が多かった。


「何かと似ているような……」


 ステラは記憶をたどってみるが……


「わからないな」


 なかなか思い出せなかった。すると……


「それは連絡用魔法石ですよ、アメリア」


 声のしたほうを向くと、クロウとローズの姿がみえる。


「こんなに小さいんだ」

「まぁ…… 連絡用ですからね」


 クロウはステラの隣に座る。ローズはクロウの隣に座った。


「この魔法石が第一訓練場の魔法石とつながっており、リアルタイムで見れるんですよ」

「へえ~」


 アメリアは感心した表情で眺め続けた。

 そして、あっという間に時間が過ぎ、開幕式が始まった。

 クロウの言う通り、魔法石から開幕式の様子がリアルタイムでみれる。


『これより〈学年対抗剣舞試合〉の開幕式を始めたいと思います』


 アナウンスが聞こえると同時に、会場は盛り上がりをみせた。

 

『まず初めに、生徒会長ジュリカ・フォメス・ザ・オルトフォートの挨拶です。よろしくお願いします』


 司会者が言い終わると同時に、ジュリカが会場中央の演壇に向かって歩いていく。


『会場にお集まりの皆様、この度はアレスト王国立学園に来ていただきありがとうございます』


 ジュリカは約二万人いる観客に対しスムーズに話す。

 

『皆さんのおかげで、歴史あるこの学園で学年対抗剣舞試合を開催できたこと、生徒を代表して心よりお礼申し上げます』

 

 一礼したジュリカは、再び観客席に向かって話し始める。


『今日から約一か月、生徒たちの頑張りをどうか温かい目で見守ってあげてください。生徒の皆さんは、練習の成果を思う存分発揮してください。以上で生徒会長の挨拶を終わりたいと思います』


 言い終わるのと同時に、観客席から歓声とともに拍手が一斉に巻き起こる。

 ジュリカは観客に対し、にこやかに手を振りながら演壇を降りていく。


「さすがだな」


 ジュリカと一度剣を交えたステラは、改めてジュリカという人物の凄さが感じられ驚いていた。

 その後、退屈な開幕式が四五分続き、ようやく開幕式が閉じようとしていた。


『それではこれで〈学年対抗剣舞試合〉の開会式を終わります。会場にお集まりの皆様は、忘れ物がないかを今一度確認していただき、おかえりください。〈学年対抗剣舞試合〉は明日から対戦がおこなわれます。一般の方も観戦できますので、是非足を運んでみてください』


 アナウンスを聞いた人達は続々と第一訓練場を後にしていった。

 ステラも控え室を出ようとしたが……


「久しぶりだな、お前ら」


 控え室の扉が開き、手を振りながらメリシア先生が入ってくる。


「お久しぶりです、メリシア先生。どうしたんですか」


 クラスで人気者のクルト・ヴァランタランは、席から立ち上がり、メリシア先生に質問する。


「お前らに、明日以降のトーナメント表を見せようと思ってな」

「トーナメント表……」

「あぁ、そうだ。ついてこい」


 そう言いって、ステラを含むクラス全員は四組の教室に向かった。

 中に入ると、各机に小型の魔法石と控え室にあった魔法石と同じものが教卓に置かれていた。


「まぁ…… とりあえず座れ。座ったら、机に置いてある魔法石のことについて説明する」


 ステラ達は恐る恐る自分の席に座る。

 

「さて、机に置いてある魔法石だが…… それはこの大きな連絡用魔法石を小型化したものだ」

 

 メリシア先生は、教卓に置いてある魔法石を叩きながら説明する。

(結構高いぞ…… あれ……)

 ステラは苦笑いしながら説明を聞く。


「使い方を説明したいところだが…… 正直面倒だ。各机に置いてある説明書に全て載ってるから、それを見て使ってくれ」


 なんと無責任な…… と、ステラは突っ込んでしまいそうになった。

 

「さて、そろそろかな……」


 メリシア先生は、腕時計を見る。数十秒後……

 魔法石に〈学年対抗試合 トーナメント表〉と記載された画面が表示された。


「表示されたみたいだな。明日以降の試合は、その魔法石で確認してくれ」


 ステラは沢山名前が記載されているトーナメント表の中から、自分の名前を探した。


「ステラ…… ステラっと……」


 すると、ステラ・ゼロ&アメリア・サフォルトと記載された部分を見つける。

(Jブロックの12番か……)

 ステラは軽くため息をした。


「会場や時間などもその魔法石で表示される。こまめにチェックするように」


 ステラは再び魔法石に目線を向ける。

(明日はないみたいだな……)

 トーナメント表には、6月16日の午後の部に第四訓練場と記載されていた。


「とりあえず、言いたいことは全部言ったし……」


 メリシア先生は教卓の上に置いてある小型魔法石を手に取り……


「まぁ…… 頑張れよ」


 職員室へと戻っていった。

 メリシア先生が職員室に戻っていってから五分後、一通のメールが魔法石に届く。

(なんだろう?)

 ステラはメールの中身を開く。


〝学年対抗試合、優勝目指して頑張れよ。

             ステラ・フォン・エレファン〟


 宛先は不明だが、ステラはなんとなく想像できていた。

(おそらく…… メリシア先生あたりだろう)

 ステラは開けたメールを閉じ、アメリアがいる方に向かっていった。


 

 


 



 



 

 



 

 


 







 

 

 



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