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第十三話 生徒会長VSステラII

第三訓練場

 ステラと生徒会長ジュリカは向かい合わせになり、剣を構える。

5…… 4…… 3…… 2…… 1…… 0……

 そしてカウントダウンが0になり、ステラとジュリカは一斉に動き出し、中央で刃が交わる。


「生徒会長の本気、見せてくださいよ」


 と、ステラは質問する。


「私が本気出したらこの訓練場が吹き飛んでしまうから無理だ」

「冗談でしょう」

「さあ…… どうかな」


 笑いながらジュリカは答えた。

 冗談だと思うジュリカの発言は実は本当のことだと、この後ステラは知ることになる。


「まあ、気軽にいこう」

「えぇ……」


 両者は一旦後ろに下がる。

 ジュリカはステラの目を見ながら剣を構える。


「今から使う技は、果たして耐えれるかな」

「?」


(一体どんな攻撃が来るのだろう……)

 ジュリカのこれからの動きに警戒するステラは、攻撃を受ける体制に剣を構えた。すると……


「東北伝統流第三剣技(けんぎ)満月座羅(まんげつざら)〟」


 月のような形をした白銀の刃が、ステラに向かっていく。

 攻撃を受け流したステラだったが、気づいた時には遅かった。

 ジュリカがステラの目の前に入ってきた。

(こっちが本命か……)

 慌てて攻撃しようとしたが……


「東北伝統流第ニ剣技〝闇雲羅刹(やみくもらせつ)〟」


 ジュリカが剣を振り下ろす速さが速くなり、ステラの腹部に当たる。

 攻撃が当たった次の瞬間、切り裂かれそうな痛みが全身に巡った。


「うっ……!」


 ステラはその場に座り込む。

 特殊な制服を着ていたおかげで切られてはいないが、前の模擬戦よりも数倍は痛かった。


「くっ…… 〝治癒(ヒール)〟」


 左手を腹部に当て、光属性魔法を使った。

 

「よく耐え切ったな」

「そう……でしょうか」

 

(今のは痛かったな…… 危ない危ない)

 ほっとしていたステラ。

(それにしても、ジュリカの剣術は一体なんだろう?)

 ステラの知らない剣術を使うジュリカは、ステラにとって脅威だった。

 練習の剣を使っているにも関わらず、剣技を連発するジュリカは一体何者だろう。

 通常、練習の剣で剣技を連発したらその反動で自分にダメージがいくはずなのに、ジュリカは涼しい顔でその場に立っている。

 さすが、学年最強の称号を持つ生徒会長。格が違う。


「さて、次はどうかな」


 瞬きする間もなく、目の前にいたはずのジュリカは消えていた。

(速い!)

 前回の模擬戦よりも試合の難易度が違う。

(こうなったら……)

 模擬戦では見せていない技をするために、ステラは剣の持ち方を変え、刃を斜めに向けた。

(今だ!)

 

「エレファン家秘伝二級剣技〝魁鳳(かいほう)〟」


 ステラは円を描くように剣を振った。

 その瞬間赤い火花が散り、周りが爆発する。

 さすがのジュリカでも、攻撃をやめ姿を現した。だが少し様子が変だった。


「今、()()()()()って言ったか?」


(しまった……)

 いつもなら会場が騒がしいから基本相手にも聞かれずに技を使えるが、今回は朝ということもありとても静かだ。それに、ジュリカと近い距離で使ってしまった為、はっきりと聞こえていたに違いない。

 気づいた時には遅かった。ジュリカの目は鬼のようだ。


「き、聞き間違えじゃないですか?」

「……」


 ステラは何とか誤魔化そうとした。

(聞いていないことを願う)

 ステラはただひたすらに願っていた。


「そうか……」


 その願いは叶ったのか、ジュリカは「聞き間違えか。すまない」と言い、再び剣を構えた。

(良かった〜)

 ステラは安心する。

(これからは気をつけて使わないと)

 そして後ろに下がり、構え直す。


「じゃあ、続きをしようか」


 と、ジュリカは紋章を発動した。

 ジュリカの紋章は美しい形をした《白銀蝶の紋章》だった。

 

「いくぞ」


 ジュリカは動き出した。

(体が……)

 ジュリカが紋章を発動しているためか、やけに体が重い。


風壁(ウィンドウォール)

 

 風属性魔法を使い、体を軽くする。

 ジュリカは動きながら剣を鞘に納め、攻撃する構えをとった。


「東北伝統流第四剣技〝王鳳蘭(おうほうりん)〟」


 蒼光をまとったジュリカの攻撃はより一層速く、そして正確に刃が当たる。

 ステラは攻撃を受け流しながら、隙ができるタイミングを待っていた。たが、隙ができるタイミングがないので、ステラは困っていた。

 

「あまいぞ!」


 ジュリカの動きがさらに複雑になっていく。

 

「東北伝統流第五剣技〝幻刀牢(げんとうろう)〟」


 無数の幻の刃が、ステラの周りを囲む。

 ステラは深く息をし、剣を右肩に近づけ、ジュリカの剣と無数の幻の剣が近づくギリギリの瞬間、体を低い体制にした。


「そうきたか」


 ジュリカは剣の軌道を変えてくる。

 ステラも無数の幻の刃を避け、剣の軌道から距離をおいた。

 そして、頭に浮かんだ言葉を口にしたみる。


「〝修羅(しゅら)〟」

 

 次の瞬間、爆音と共に衝撃波が第三訓練場を駆け巡る。

 そして、手袋をしている左手から光が出てくる。


「ほぉ…… 面白い」


 ステラは何が起きているのかわからないが、《古の紋章》に何らかの異変が起きていることは本人でもわかっていた。


「少し難易度を上げるか」


 ジュリカは動き出す。


「僕も」


 ステラもジュリカに続いて動き出す。しかし……

(そろそろ決着つけないと……)

 紋章に異変が起きており、その副反応として、先程よりも動きの速さは遅くなっていた。


「……一級剣技〝速風斬花(そくふうざんか)〟」


 巨大な風の刃がステラの周りを取り囲む。

(やってみるか……)

 ステラは一か八かの賭けをしようとしていた。

 ジュリカの攻撃を避けながら、ステラは深く息を吐いた。そして……


「……三段剣術〝獅子炎(ししえん)〟」


 剣を振るう速さが獅子のように速く、炎のように強い勇ましい刃が、ジュリカの腕に当たる。

 しかし、当たった感触があるにも関わらず、ジュリカはステラより少し離れたところで、剣を構えていた。


「嘘だろ」


 悪いことに大技を連発して使ったためか、ステラの剣が半分に割れてしまった。

 再びジュリカの方に視線を向けると、夥しい量の魔力がジュリカに流れていた。

 咄嗟に風属性魔法を使おうとしたが、時はすでに遅かった。

 ステラはジュリカが大技を放つ時にこう思った。()()()()()()()()()()()()と。そして……


「東北伝統流奥義〝冥心劉霞(めいしんりゅうか)〟」


 ジュリカを中心として巨大な光の柱が訓練場全体を包み、次の瞬間、大きな爆発音と共に訓練場を破壊した。

 

「何事だ!」


 爆発音が聞いて、沢山の生徒や教師が第三訓練場の前に集まっていた。


「誰と誰が戦っているの?」

「さぁ……」

「メリシア先生は何か知っているのですか?」

「いや……」


 生徒や教師は一体誰が戦っているのか検討もつかなかった。

 一方、第三訓練場の中では……


「フッ…… よく耐え切ったな。ステラよ」


 ジュリカは倒れたステラを見て言った。

 ステラは目を閉じて寝ていた。よっぽど魔力と体力を使い切ったからだろう。


「全く、訓練場がメチャクチャだ。まぁ、仕方ないか」


 辺りを見渡しながらステラの隣に座る。

 ステラは相変わらず眠っている。


「しかし、何故生きているんだ? 魔力が無くなれば普通……」


 そう、魔力は完全に無くなってあるはずなのに、何故()()()()()のか。

 ジュリカは眠っているステラを見て疑問に思った。


「君は一体……」


 ジュリカは真剣にステラを見つめていた。

 その後、無事に保健室に運ばれたステラとジュリカだったが、教師全員に夜遅くまで怒られた。

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