休憩
「ところで、」
「はい?」
「今で大体、8割くらい話してんけど、休憩する?」
「………そうですね、一度整理したいので、休憩させてください。」
「書くもん欲しかったら、用意するけど。」
「それじゃあ、お願いします。」
「はいよ。」
席を立ち、部屋の隅に置かれていた、色の着いたレジ袋を持つと、こちらに戻ってきて、
「はい。 メモ用紙とペンに、俺のノート。」
「ありがとうございます。
何故、レジ袋の中に入っているのですか?」
「情報を収集したり、纏めたりすんのに、何時でも書けるようにや。
スマホの中も、そんな感じでゴチャゴチャしとるで。」
「そうなんですね。」
実際に、ノートの中には、様々なことが書かれている。 整理された情報から、関係なさそうな情報まで。
「あの、」
「どうしたん?」
「ここに書かれている【洗脳】とは、どういうことですか?」
「それか。
それな、確証が無い内容やから話さんかってん。」
「今までの内容も、充分信じられない内容でしたよ。」
「それでも、色んなところから情報を集めて、似た情報が多いのを話たんよ。」
「そんで、【洗脳】やけど、文字通りそのまんまや。
ただし、どういう原理で、なおかつ、どのくらいの洗脳効果が有るかは、よう解ってないねん。」
「そもそも、何で、そんなヤバイ効能ばかりなんですか。」
「俺が知りたいよ。」
「あっ!!もしかして、体の危険信号を性的絶頂と思い込むのにも、関係しているのですか?」
「えっ??………その発想は無かったな。
そうだよな。何でそう思い込むんだって思ってたけど、そう考えたら当て嵌まるな。」
「我が国は情報社会。 そういんもんだと思い込めば、思い込ませれば、充分有り得る。 国民性も含めれば、尚更か………。」
「………もしかしたら、不感症やダウナー系と呼ばれるのも、説明がつく、のか………。」
「機能していない性感帯には、弄られても反応が無いのが有る。 それなら、洗脳が意味無いどころか、理解できない方が、普通か。」
「いや、そもそも、単に出し入れするピストン運動しかしない男性も多いからな。 一概にそうとは言えないか?」
そう言う旦那様の表情は、狂気じみているように見えた。
「ありがとう。貴女のおかげで、新たに解明できることが増えたかもしれない。
本当に、ありがとう。」
「いえ。お役に立てて何よりです。」
気まずい。
しばらく、彼を観察していたが、自分の世界に入ったようだ。
なので、こちらも気にせずに、纏めに取り掛かった。
情報を纏めれば纏めるほど、異質さが目立つ。
【多幸感】【依存】と、先程書き加えられた【洗脳】。
この3つがなければ、どうなるだろう?
性感帯を弄ることで達する、性的絶頂を、快楽として捉えることはなくなる。
でも、妊娠時の負担は大きくなると予想される。 出産後も同じかな。
【洗脳】は、未来への負担の軽減に使える、
【多幸感】は、そのまま。
【依存】は、どうなのでしょう?
「………旦那様は、」
「はい。」
「どうして、このような構造をしていると思われますか?」
「………それは、残り2割の内容を終えてから、考えた方がいいと思うよ。
なんせ、そっちも厄介だからね。」
「はい。」
「ただし、8割の内容からでも、言えることはある。」
「ハッキリ言って、【女性から男性への性的奉仕】は、悪手や。 体の構造が違いすぎる。」
「………そうですね。」
「………ところで、」
「?」
「旦那様は手慣れていると思っても、よろしいのでしょうか?」
「ぶっ!!」
「ここまで詳細に調べ上げられてますから、当然、実技についてもお詳しいと思うのですが、如何でしょうか?」
「………やり方は知っているが、実践は無いよ。」
「ご謙遜を、」
「事実だよ。」
「はぁ。 俺は、この情報を受け入れるのに、1年半以上かかったよ。」
「!?」
「受け入れるたびに新たな可能性を思い付き、調べて、計1年半以上。」
「………」
「その間、性的な事を考えるだけで、吐き気がしてたよ。」
「まあ、衝撃的な内容ですからね。」
「それよりも、義務教育で教えていない事の方が、衝撃が大きい。」
「理由はね、解るんよ。
こんな情報、迂闊に広めていい情報じゃないって。」
「けどさ、【依存】だよ。【依存】。
さっきも言うたけど、何で教えへんねん。」
「………」
「他にも、【酒】の問題もある。」
「?」
「俺の調べだと、【酒】には5つの問題がある。
ぶっちゃけると、酒飲ませての強姦は、終身刑ぐらいが妥当だと思ってる。」
「えっ! そんなに危険な物でしたっけ?」
「体に馴染ませたら問題ないと思うけど。 それと、【カクテル】の、さわりでもいいから知識を得ていたら、問題ないと思うよ。」
「まぁ、これは後で話そうと思っていた内容だから、詳しくは、その時にね。」
「解りました。」
「話を戻すけど、一番腹立つのは、多分やけど、
《依存物質を、他人が操作して分泌させられる事の怖さ》を、理解していない人が多い事や。」
「怖さ、ですか?」
「薬物依存者が、薬の効能がきれた時、薬物を求めるのは、何でだと思う?」
「えっ!? ………考えたこともありませんでした。」
「簡単な話。 摂取した薬により、その効能が発生することを知っているからや。」
「………当たり前の事ですね。」
「じゃあさ、薬を使わずに、その効能が発生させられたとしたら、どうなると思う?」
「えっ?」
「例えば料理。 もっと言えば、食材のみとか。」
「………それしか、食べなくなると思います。 いえ、それだけを強く求めると思います。」
「せやろな。
ちなみに今のは、料理人のタブーの話や。
なんせ、実際にやったら簡単に、大繁盛店が出来るからな。 その料理人の技量に関係なくな。」
「はい。」
「それじゃあ、人はどうなる?」
「………」
「イメージしやすいのは、【強姦】、かな。」
「複数人の男性に、身動きできひんように押さえつけられて、体中の性感帯を刺激させられて、犯される。
薬、酒を飲まされて、複数人に犯される。
暴力だって有り得る。」
「どんな方法でだって、ストレスは必須で、そのダメージは天井知らず。」
「オマケに、嫌がれば嫌がるほど、精神的ストレスはかかるから、更に分泌される。」
「そこに+して【依存症状】が出るから、更に精神的ストレスに拍車がかかる。 繰り返す。」
「ホンマに、巫山戯た話や。
強姦被害者に、【薬物依存者用の治療】が必要な可能性が有るなんて、誰が思いつくねん。」
「洗脳には、【自己暗示】や【ルーティン】が関係していると思われる。」
「せやけど、そうなると、ランナーズハイの時にしか分泌していないのが、気になる。」
「成程。」
「第一、体を動かしていないのに、【自己暗示】や【ルーティン】が出来るのが、よくわからん。」
「情報は?」
「セミナーとか講習とかが多くてな、調べられん。」
「そうですか。」