③ 匂い
「次に、ボディソープ/シャンプーリンス/柔軟剤について、話そうか。」
「? 何か特別な物を使っているのですか?」
「アレルギー反応を調べないといけないけど、それよりも、尋ねたい事が有るんよ。」
「?」
「性フェロモンについて、なんだけど。」
「性フェロモンは【無臭】なんだけど、触媒としては優秀でね。
合う匂いと混ざると、芳香を放ち。
合わない匂いと混ざると、悪臭を放つ。んよ。」
「同じ香水でも、人によって匂いが違うって情報、知らない?」
「あれって、そういうことだったんですか。」
「そう。」
「んで、貴女が見ず知らずの人達の注目を集めたいなら、貴女に合う匂いを探し出して、それをシャンプー/リンス/ボディソープ/柔軟剤/香水に混ぜようと思うんだよね。」
「入浴剤もいいけど、浴槽は俺も使うから、そっちはなしでね。」
「できるんですか、そんな事?」
「俺のやっている事業の1つだから、可能だよ。」
「旦那様は持っているんですか?」
「持っているけど、使わない。
商談だと、相手は男性が多いから、下手すりゃ敵対行為になるから。」
「なるほど。
………将来的には、商談には、私も同行しますよね?」
「多分、そうなる、かな?」
「ちなみに、旦那様の事業って、何なんですか?」
「あー、それは知らなったか。」
「すいません。」
「謝る必要はないよ。
俺のやっている事業は、世間だと、評判が悪いから。
国の要望通りの事業なんだけどね。」
「?」
「国は今、少子化って言ってるでしょ。」
「赤ちゃんポストに週間平均何人捨てられるか。」
「生まれた瞬間に殺させる赤ん坊がいる事。」
「教育放棄、ネグレクトがどれだけいるか。」
「親の愛情を感じられない子供が、家族の温もりを感じられない子供が、どれだけ多いか、知ってるのかと言いたいけど、」
「………」
「けど、国が指示を出しているんだから、従わないといけない。」
「だけど、我が国が、正規の方法で子供が生まれにくいのも事実。」
「旦那様に教えていただいた内容だと、そうですね。」
「だからね。 俺は、さっき貴女に教えた内容に関連する職業を、1つのビルに集めて、営業しているんだ。」
「ごった煮ビルって、聴いた事ないかな?
1階。 食事処と甘味処(洋菓子8割和菓子2割)。
2階。 カラオケ。
3階。 エステとサウナとヨガ。
4階。 ジムとフィットネスとドラックストア。
5階以上は会員になる必用があるけど、」
「5階。 食事処と酒処とドラックストア。
6階。 性具販売所と簡易コスプレ販売所と下着販売所と衣類販売所。
7階以上、ホテルとラブホテル
をやっているよ。」
「噂には聴いてましたが、本当にごった煮ですね。
会員制とは、」
「酒の怖さを知っているのに、お客様に何も教えないのは、不誠実だからね。 会員様には、ちゃんと教えてるんよ。」
「なるほど。
次の質問ですけど、何故、ホテルとラブホテルが同居しているのですか?」
「………大人になると、知りたくない事も知るようになるよね。」
「?」
「旅館や夜景の見えるホテルに泊まるカップルや夫婦って、そういう事、する人らもいるでしょ。」
「まあ、そりゃあいるでしょうね。」
「それ自体が悪いとは思わない。
こんなけ、いろんな事を知ってからは、むしろ、するのが当たり前だと思うしね。」
「そうですか。」
「だけど、したかもしれない布団で寝るのは、嫌だよね。 いくら清掃したとしても。」
「まあ、そうですね。」
「だからね、いっそのこと、ホテルの1階を半分に区切って、半分を普通のホテル。 もう半分を、それ専用のホテルにしようと思ったんだよね。 勿論、防音設備完備で。」
「そうすれば、ラブホテルでも、ホテルと同じサービスをすることが出来るし、景色も、左右の違いはあるけど、ホテルと同じになるしね。」
「それに、清掃する時も、楽になると思うんだよね。」
「会員制にしているから、もし、そうじゃない方で性行為をしても、誰か判るしね。」
「なるほど〜。」
「それで、どうすんの?」
「………いきなり、見ず知らずの人達の注目を浴びるのは怖いので、薄めから慣らすのは、ダメですか?」
「解った。 後日、調べに行こうか。」
「はい。」
「あっ! そうや。 そん時、貴女の服も買おうか。」
「? ………コスプレですか?」
「ちゃうちゃう。 普通の服や。」
「?私服は、後日、配達される予定ですけど?」
「あ〜、どう言えばいいかな?
………日本のスポーツ選手が渡米すると、物理的に大きくなってるの、見たことない?」
「目の錯覚や、筋肉量が増えた。 以外に何かあるんですね。」
「俺がそうなんだけど、骨を強化する食事にしてから、体が大きくなってね。
具体的に言うと、6L着ないと、肩コリがえげつなくなったんだよね。」
「マジですか!!
………もしかして、私もそうなる可能性が有る?」
「可能性だけなら。
それと、胸についてなんだけど。」
「豊胸については、今も、色んな説があるけど、その中に、血行促進が有るんだよね。」
「………それに加えて、成長ホルモンも加わるから、大きくなる可能性が有る。 ということですか?」
「そ。 だから、どっちみち、服は購入しないといけないんだよね。」
「………大きくなる目安は、どれくらいですか?」
「さあ? 若いから、半年ごとに測定してみたらいいんちゃう?」
「では、そうします。」
「ちなみに、今日の夜、着る服は?」
「下着は持ってきてますので、それ以外は、お借りしようかと。」
(友達に言われた、彼シャツ作戦。)
「………危険性については、」
「覚悟しています。」
旦那様は部屋を出ていき、黒い服を持って、戻ってこられた。
「これ、俺のアンダーシャツ。」
「………ワンピースですよね。」
「とりあえず、上からでも着てみ。」
「はい。」
「やっぱり、ワンピースですね。」
「………下の服が透けているように見えないから、それでどうかな?」
「………旦那様的には、どうですか?」
「黒いワンピースにしか、見えないね。」
「そうではなく。」
「ん?」
「私の今の状態は、世間一般的に言う、彼シャツ状態です。
性的に興奮したり、透けなくてガッカリしたりしませんか?」
「あー、何やろ。 嬉しさみたいなもんは有るかな?」
「よく解らないです。」
「俺も、よくわかん。」
「あと、グレーな商売として、【女性が女性の性欲、蓄積したホルモンの発散】をしている。」
「………理由を訊いても?」
「〈若者の性の乱れ〉って、聴いた事ない?」
「有ります。」
「さっきの俺の説明。 血行促進、高血圧による性欲減退を聞いた後だと、どう思う?」
「………」
「冷凍技術、輸送技術が発展して、食材や調味料が増えた。 さっき食べた、小松菜のようにね。」
「情報媒体から得た、中途半端な知識で行う、健康意識。 ハーブティーとか。」
「大手企業が管理している、弁当や総菜。」
「ここまで食生活が変わったのに、何故、俺等の体に、なんの影響もないと思えるんだろうな。」
「オマケに、親の愛情や家族愛を、肉欲に求めるのは、昔から言われていることや。 ドラマや成年向け漫画で、見飽きるほどにな。」
「な、の、に、文句言う奴は、最終的に、漫画やアニメ、ゲームが悪いと言う。」
「………」
「巫山戯んな。 何時まで現実逃避すんねん。」
「だからな、俺はこの仕事を立ち上げてん。」
「!!」
「今はまだ、地位の高い人達からの繋がりからしか、利用できる人達がいないけど、いつの日か、一般の人でも利用できるようにしてみせる。」
「そして、最終的には、捨て子、亡子を、限りなく零にしてみせる。」
「これが、俺の人生の目標や。」