同居の罠 見えない毒(相互)
「………つまり、これから私に、性感帯の開発?と概念破壊を施すんですね。」
「そうだね。」
「では、」
「今日からやりますか。 その2つ。」
「……………………」
「??」
「………その前に、覚悟を聞きたい。」
「覚悟?」
「性フェロモンについては、調べた?」
「顔合わせの日に。」
「今から言うのは、おそらく、どこにも書いていない情報だと思うけど、」
「はい?」
「性フェロモンも、依存性が有る。 と思う。」
「はっ!?」
「ちなみに、実体験だよ。」
「………童貞ですよね? 嘘だったんですか?」
「嘘じゃないよ。」
「大学生の時、女友達が生理になった。
その時、臭いを拾ってしまったんだよ。」
「そしたら、スライムというかゼリーというか、そんな感じのものが鼻の奥にくっついて、何をしても、離れなくなったんだよ。 1日中。」
「その日1日は、ずーと船酔いになるし、本当に最悪だったよ。」
「たいへんだったんですね?」
「いいや。 本当にたいへんだったのは、翌日からだよ。」
「??」
「無意識に、彼女の体を触りにいった。」
「ええ!! セクハラ。」
「そうだよ。」
「条件反射というか、俺ってあんなに速く動けたんだっていうか、そんな感じで、彼女に触りにいったな。」
「止められなかったんですね?」
「気ーついたら、体が動いた後だからな。 無理やった。」
「運が良かったのは、彼女を強姦せえへんかったことやな。 犯そうという感情は、浮かばへんかった。」
「良かったですね?」
「ああ。」
「犯していたら、俺は、多分、成人向け漫画のような、爛れた生活をしていたと思う。」
「嘘だと思うやろ。
けどな、そう考える、根拠もあるんよ。」
「教えてください。」
「その後、色々あって、大学を辞めたんだけど、7〜8年間、俺は彼女の事ばかり考えてた。 無意識に、な。」
「!!………7〜8年間の根拠は何ですか?」
「朝、起きて、いつも通り、彼女のことを考えて、違和感を持ったんだよ。」
「違和感?」
「何故、合わなくなって7〜8年経った人の事を考えたんだろうって。」
「それで、自分が依存状態だったと気づいたんですね。」
「そうだよ。」
「それから、記憶を掘り起こしていって、船酔いになった日の事を思い出したんだよ。」
「調べてみたら、船酔いとは情報過多、オーバーフローになると、起こるらしい。」
「意外ですね。 三半規管とか、関係していると思っていました。」
「俺もそうや。 やから、調べ直すまで、気にもとめてへんかった。
しかも、この情報は、最近解った内容やし。」
「ん。 性フェロモンとは、完璧な遺伝子をつくるために、足りない遺伝子情報を、匂いで判別する方法。」
「おそらくだが、俺と彼女の相性は、良すぎるんだろうな。」
そう言い終わる旦那さまの顔は、何とも言えない表情をされていた。
旦那様は、頭を振ると
「俺と貴女の相性は、良くも悪くもない。 から、依存状態になるとは考えにくい。」
「だけど、同居するなら、話は別や。」
「ここは、俺の匂いが染み付いた、俺の家や。
そして、子作りするとなれば、俺の性フェロモンを嗅ぐ量は増える。」
「何年かかるか判らないが、貴女が俺に依存する確率は、必ず増える。」
「それでも、貴女は一緒に住む覚悟が有りますか?」