6話 初めての旅はハードだ!
目指すのは、オトルワ町。
ラトミ村から一番近い町だ。
オトルワ町までは何個かの村があるが、ラトミ村と取引している行商が居るため、あまり長居はしない予定だ。
わざわざ探すことはないだろうけど、もしかしてと言う不安がある。
隣の村で捕まるとか、考えただけでムカつく。
村道はある。
でも、姿をなるべく見られたくないので、村道に一番近い獣道を歩く。
……
やばい!
必死になって足を動かす。
少しでも早く走れるように。
後ろからドドッドドッと、追いかけて来る音がする。
何が追いかけてきているのか、確かめる余裕はない!
分かることは……止まったら死ぬ!
どうしよう、どうしよう。
えっと、この場合は木の上に逃げる。
……登れる木が無い!
次は……ダメだ。
追いつかれる。
ああ!木、木を発見。
絶対に、あそこまで逃げ切る!
死にもの狂いで木まで走り、がむしゃらに木を登る。
逃げ切れた……助かった~。
全身から、汗が大量に流れている。
よかった、木に登れる魔物じゃなくて、本当によかった。
村を出て、ちょっと気が緩んでいたかもしれない。
気を引き締めないと、森は危険だ。
今日はこのまま、ここで休憩しよう。
疲れて動けないし。
それにしても、何に追いかけられたんだろう?
……はぁ。
先が不安だ。
……
怖くて、あまり寝られなかった。
仕方がないか。
とりあえず、木から降りて移動しよう。
え!
高い!
自分のいる場所を確認して、驚いた。
そうとう背の高い大木の、かなり上の方まで登ってしまったみたいだ。
……降りるのが怖い。
切り傷に擦り傷が大量にできたが、降りられた……よかった。
劣化版ポーション4本分を、消費して傷を治す。
今回のポーションは、ちょっと劣化しすぎていたようだ。
村道を見る。
少し考えて、やっぱり獣道を進むことに決めた。
今度は周りをしっかりと警戒しながら進む。
歩みは遅くなるけど、命は大切だから。
干し肉をかじりながら歩く。
匂いで魔物が来ないか心配だが、仕方がない、お腹が空いた。
……
何度も追いかけられたが、ぎりぎり逃げ切ることができている。
怪我が増えているが、命があるので大丈夫。
想像していたより、森の中には凶暴な動物や魔物が多くいるようだ。
もっと早く、気配に気付けるようにならなければ。
8日目に、人のにぎわいが微かに聞こえてくる場所に、辿りつくことができた。
ようやく隣の村の近くまで来られたようだ。
でも、ここは回避することに決めているので、村を迂回するように進む。
村から見つからないように少し遠回りな道を進むと、広い場所に出た。
周りを見て確信する、ここは捨て場だ。
人と魔物たちの気配を気にしながらゴミを見ていく。
マジックバッグがある。
劣化版だろうけど、これは絶対に欲しい。
確認すると10個のマジックバッグが捨ててある。
全部を持っていきたいけど……荷物になるし……。
しばらくゴミを漁っていると、人の気配が近づいて来る。
体が隠せる岩が近くにあったので、様子を見るために隠れた。
「早くしろって!」
「わかってるよ!」
ガチャガチャと音がして、しばらくすると気配が遠ざかる。
子供の声だった、おそらく練習した何かを捨てに来たのだろう。
見つからなくてよかった。
新しく捨てられたのはポーションのようだ。
数本のポーションを、肩から掛けているバッグに入れる。
迷ったけど、10個のマジックバッグを持って移動した。