56話 旅の準備
地図を手に入れるため本屋を見て回ることにしたが、なかなか見つからない。
捜す場所を間違えているのだろうか?
「おっ、アイビーか?」
「えっ? あっテントのお店の」
「おう、どうしたこんな場所で、探し物か?」
「はい、地図を探しています」
「地図? ……この村を離れるのか?」
「はい、そろそろオトルワ町へ行こうかと思いまして」
「そうか。地図だったらギルドにあると思うが?」
「冒険者ギルドですか? 商業ギルドですか?」
「ん? どっちのギルドにもあると思うぞ」
「そうなのですか?」
「あぁ、冒険者の奴らにも、行商の奴らにも地図は必要だからな」
なんだ、本屋ではなくてギルドにあったのか。
だったら商業ギルドに行こうかな。
旅を始める前に、もう少しお金を口座へ移動させようと思っていたから、ちょうどいいな。
「ありがとうございます。早速行ってみます」
「おう。そうだ、テントで困ったことは無いか? あと欲しいモノとか」
「テントはすごく快適なので、問題は無いです。欲しいモノは……」
「なんだ、あるのか? 言ってみな」
「水を入れる竹筒を探していて……」
「竹筒? ……あっ、あるぞ」
「えっ、売ってもらえますか?」
「やるやる。アレは売り物じゃないからな」
「いいのですか?」
「あぁ、問題ない。今から取りに来るか?」
「はい。ありがとうございます!」
欲しかった竹筒が手に入りそうだ。
これで水をもう少し多く持ち運べる。
川を探しながらの移動になると、遠回りだったからな。
お店に行くと7本の竹筒を出してきてくれた。
どれも綺麗で私が持っている物より丈夫そうだ。
「必要なら全部持って行っていいぞ」
「えっ、でも」
「いいって、餞別だ」
「ありがとう!」
「ハハハ」
何度もお礼を言ってお店を出る。
うれしい。
よし、捨て場に行って準備を整えて行こう。
あっ、その前にテントに戻って捨てる物を持っていこう。
……
捨て場は、相変わらずすごい。
まずは壊れる寸前の竹筒を捨てる。
それとサイズが合わなくなってしまった服。
これも随分とお世話になったな。
次は、必要な物を拾って行く。
先ずは私の使うポーション。
ラトメ村の捨て場では、変色の少ないポーションもそれなりの数が捨てられている。
これは他の村では見られなかった光景だ。
私的にはとてもうれしい。
次にソラ用のポーションは、目についた物からどんどんバッグに入れていく。
他には小さい巾着バッグに、マジックバッグも2個見つけることが出来た。
予備として、貰っていこう。
他にも旅に必要だと思う物をバッグに入れる。
「ぷっぷ~」
ソラは捨て場にあるポーションを、自分で見つけては食べているようだ。
1本食べては、うれしそうに声を出している。
まぁ、時々ゴミに挟まっているので救出に向かうが、順調だ。
必要な物は拾い終わったので、捨て場を出る。
気配を探るが、こちらに向かって来ている人はいない。
ただいっぱい拾ったので、ここで選別していると人が来る可能性がある。
テントに戻ってから選別をしようかな。
「ソラ、戻ろうか」
「ぷぷっぷぷ~」
ソラを抱き上げてぎゅっと抱きしめる。
可愛いな~。
ほっこりしながら村へ戻る。
「お疲れ様です」
「お帰り」
門番に挨拶をして村へ入ると、商業ギルドへ向かう。
商業ギルドは前見た時と同じように賑わっている。
とりあえず、口座にお金をもう少し移動させよう。
小部屋に入って小窓を2回叩く。
「はい。入金ですか? 出金ですか?」
「入金をお願いします」
今日は女性の様だ。
小窓から出て来た小さいお皿に銀貨6枚と銅板30枚をプレートを乗せて小窓から女性に渡す。
「しばらくお待ちください」
「お待たせいたしました。ご確認ください」
やっぱり早いな。
戻って来たプレートを小窓の前の白い板に乗せる。
前回の入金金額の下に、本日の日付と入金した金額が表示される。
[銀貨:6枚 銅板:30枚]
そして少し下に合計[金貨:4枚 銀板:1枚 銀貨:11枚 銅板30枚]が新たに追加されていた。
「大丈夫ですか?」
「はい。ありがとうございます」
「ご利用ありがとうございます」
小窓が閉まると、財布バッグの中に残った金額を確かめる。
銀貨2枚 2ギダル 銅板10枚 1000ダル 銅貨197枚 1970ダル 銅片 15枚 15ダル
財布バッグにお金を戻して、小部屋を出る。
「地図はどこだろう?」
商業ギルドを見て回る。
カウンターの近くの本棚にあったのだが、地図が4種類もある。
何が違うんだ?
一番大きい紙を広げて見てみる。
王都や町、小さい村まで全てが載っている地図のようだ。
一番小さい地図を広げてみると、この村の周辺だけが載っている地図だった。
王都まで行く予定なら、一番大きい地図が必要かな?
大きい地図をもう一度広げて確認する。
森で採取できる鉱物などが詳細に書き込まれている。
これは必要ない情報だな。
2番目に大きい地図を広げてみる。
一番大きい地図に似ている。
違いは川や湖が描かれている事だろうか?
他にも、村から村までの距離と、かかる日数が書かれている。
私に必要なのはこの地図かな。
一応、他の地図も確かめる。
王都や町や村の特産品などが詳細に書かれている地図。
これは商人さん用かな。
最後の1つはこの村の魔物や動物が多く見られる場所を示した地図だった。
こんな地図があるんだ、知らなかった。
欲しい地図の金額は500ダル、少し高いがこれから必要になる物だ。
仕方ないよね。
迷って迷って、銅貨50枚で購入した。