54話 そろそろ準備をしようかな
テントの中に戻り、口座のプレートを見つめる。
自分の名前が刻まれている。
何だか、私と言う存在がちょっと認められたようでうれしい。
そろそろ、オトルワ町へ行く準備を始めようかな。
ラトメ村とは離れがたいけど、もっといろいろな村や町を見て回りたい。
それにラトミ村でお世話になった占い師に、王都の隣町へ行くように言われているし。
何があるのかは知らないけれど、必ず行くように言われた。
何度か理由を聞いたけど言葉を濁されたっけ、でもあの時の占い師は真剣だった。
何があるか分からないけど、約束は守りたい。
うん、旅の準備をしよう。
あ、忘れる所だった。
ソプラの実を取って来たんだった。
皮を乾燥させて、粉にしないと。
とりあえず、旅に出る前にこれは完成させよう。
乾燥させる時間は、罠を仕掛けてお金を増やそう。
そうと決まれば、まずはソプラの実から皮を剥がさないと。
「疲れた~」
頑張って収穫してきたので、思った以上にソプラの実があった。
それの皮を1つ1つ剥いで行くのは結構な労力だ。
固まった肩をほぐしながら、テントの外に布を広げてソプラの皮を並べる。
乾燥には2、3日ぐらいかかるかな。
天気が続きそうだから大丈夫だけど、雨には気を付けないとな。
さて、次は……。
ソプラの皮を干して、テントに戻るとソラが転がってくる。
「どうしたの?」
ソラの視線がバッグへと移動する。
お腹すいたのかな?
ソラの専用ポーションを取り出して前に並べる。
すぐにポーションの上に乗って食事を始めたので、お腹が空いていたようだ。
「さて、私は罠を作るね」
野ネズミ用の罠と、野兎用の罠を作っていく。
アダンダラがまた来たら、この村を離れる事を話しておこう。
それにしても随分と助けられているな。
ソラが助けたのに、最終的には私が助けられている。
旅の準備には何が必要かな?
服は問題なし、罠の準備は旅の間は要らないし、縄はいるな。
後は木の実の食料がもう少し欲しいかな、少し不安な量だな。
ソラのポーションは、バッグに入るだけ持っていこう。
「出来た!」
各10個ずつ作ってバッグに入れる。
ソラはいつもの通り寝ている。
ソプラの実の乾燥状態を確認して、空を見る。
夜まで天気が持つか不安だな、テントの中に入れておこう。
お湯を沸かしてお茶を作る。
干し肉にお茶に木の実。
いつもの食事にホッとする。
新しくお湯を沸かして、テントの中で体を拭いて早めに休息。
明日は罠をいっぱい仕掛けるため、森をかなり歩く事になる。
良い場所が見つかればいいけど。
「ソラ、お休み」
……
うっすらと目を開けると、微かにテントの中が明るくなってきている。
少し早いと思ったが、仰向けで腕を伸ばして体をほぐす。
村を出るなら少し警戒心を元に戻さないとな。
テントで寝るようになってから、少し緩みすぎかも。
「ソラ、おはよう」
ソラと一緒に食事を済ませ、お茶で休憩。
罠を詰め込んだバッグと、ソラを入れているバッグを持ってテントを出る。
広場の管理人さんと挨拶をして、見回りの人とも軽く頭を下げて挨拶をする。
さすがに回数をこなして来たので、照れずに出来るようになった。
これも、成長?
「おっ、アイビー早いな、おはよう」
「おはようございます。ヴェリヴェラ副隊長、昨日は大丈夫でしたか?」
やっぱり気になる。
これぐらいなら大丈夫だよね。
「あぁ、隊長に全て丸投げしたからな」
……なんだろう、ものすごく清々しい表情なんだけど。
オグト隊長大丈夫かな?
「えっと、そうですか……では、行ってきます!」
「おお、気を付けてな」
聞かない方がよかったかな。
オグト隊長が気になる。
森の中を野兎と野ネズミの痕跡を探しながら歩きまわる。
痕跡を見つけても、周りを見ると大きな動物の痕跡も見つかる。
罠を仕掛けても、また壊される可能性が高い。
なかなかいい場所が見つからないな。
あ、またこの気配だ。
これって……。
立ち止まって周りを見回す。
しばらく待つが、何も起こらない。
違ったかな?
「グルル」
やっぱり!
声が聞こえた方向へ視線を向けると、アダンダラが口に何かを咥えて立っている。
見えない気配を感じた後にアダンダラが来るから、もしかしてと考えたが正解かな。
「おはよう、アダンダラ」
「グルル」
アダンダラは私を見て歩き出す。
不思議に思って眺めていると、ソラがアダンダラの後を追いかけてしまう。
慌てて、私も後を追う。
しばらくすると、川にたどり着いた。
「どうしたの?」
アダンダラは咥えていた物を置くと、前足で私の方へ寄せる。
野兎と野ネズミだ。
「アダンダラ、これは君の食料でしょ?もう充分とお礼はしてもらったから気にしなくてもいいよ」
瞳を見つめながら話すが、アダンダラはもう一度私の方へと寄せる。
どうしよう。
もう十分すぎるほど、お礼はしてもらったし。
アダンダラを見る。
耳がへたりと下がってしまっている。
「今回が最後。もらうね。ありがとう」
「グルル」
耳がピンと立って喉を鳴らす。
頭を撫でると、目が細くなって気持ちよさそうな表情を見せる。
可愛いな。
よし、解体を始めよう。
見るからに、今日も多いし。
あ、罠……解体を急ごう。