50話 ソプナの実
村へ戻り肉屋へ向かう。
野バトが売れるかちょっとドキドキする。
「すみません」
「はいはい。あら、おはよう」
「おはようございます。今日も良いですか?」
「大丈夫よ」
おばさんの前にバッグからバナの葉に包まれた肉を取り出す。
「あら、また今日も大量だね」
今日もアダンダラの手柄なので苦笑い。
特に今日は野バトがある。
どうやって捕まえたって聞かれたら、どうしよう。
お肉を1つ1つ確認していくおばさんが、最後の1つを手に取る。
「これ、野バトだね」
「はい。ただ、解体する時にちょっと失敗してしまって」
「ん?あぁ、大丈夫。これぐらいどうってことないよ。あれ?野バトの骨は?」
「骨ですか?」
「あっ、もしかして知らなかった?野バトは骨も売れるんだよ」
「えっ、そうなんですか?捨てて来ちゃいました」
「あらま~、それだと仕方がないね。今度また野バトがあったら骨もよろしくね」
骨なんて何に使うんだろう?
食べるのかな?
でも、解体している時に思ったけど硬かったよな。
何かの材料?
「あの、骨なんて何に使うんですか?」
「骨はね、ここで綺麗に処理して薬屋に売るんだよ」
「薬屋?」
「そう。他の薬や食材と煮て、体力を回復させるスープとして売られているよ」
「そうなんですか」
薬になるんだ。
知らなかったな。
ちょっともったいない事をしてしまった。
「はい、お金だけど、野ネズミが3匹で300ダル、野兎が5匹で475ダル、野バトが1匹で150ダル。合計……925ダル。問題ないかい?」
「はい。ありがとうございます」
お金を受け取って、お礼を言って店を出る。
野バトが1匹で150ダル。
これはデカいな。
でも、罠の本には鳥用の罠が書かれていなかった。
残念だけど、私には捕まえられないな。
さて、今日は……そうだ、洗濯ものを洗ってしまおう。
それと森を少し探索して、必要な木の実を捜そう。
ソプナの実を捜したいな。
髪を洗う時に、ソプナの実があると綺麗に汚れが落ちる気がする。
他には、やっぱり食料探しだな。
そろそろ次のオトルワ町へ向かう準備をしていかないと。
川に向かいながら周りの木を確認して行く。
なかなか探しているソプナの木は見つからないが、食料は確保することが出来た。
もう少しで川に着くと言う場所で、ようやくソプナの木を発見。
沢山実を付けている。
「やった!」
ソプナの実をバッグに入れていく。
ある程度バッグに入れると、川へ行き洗濯する。
洗い終わった洗濯物を近くの木に干す。
「う~、腰が痛い」
周りの気配を探って、魔物や動物や人がいない事を確認する。
髪を濡らしてソプナの実を1つ手の中でつぶして手をこすり合わせる。
少し泡立ったところで髪全体を洗う。
数回川の水で泡を洗い落として、タオルで髪を拭く。
「少し髪が伸びてきたな、あとで切ろうかな」
「ぷっぷ~」
隣で縦運動しているソラは、なんだか機嫌がよさそうだ。
最近は横にプルプル揺れるより、縦に伸びる回数がぐっと増えている。
意味がある様に感じるけれど、何をしているのかは分からない。
ふぅ~、ある程度髪も乾いたし、服を持って帰ろう。
よし、帰ったら罠を作ろう。
…………
門番さんに頭を下げて村へ入る。
「あっ、ちょっと待って。アイビーだよね」
「はい」
「ちょっとついて来てもらっていいかな?」
「どうかしましたか?」
「謝礼金が決まったから、隊長からアイビーを見かけたら詰所まで案内するようにって言われているんだ。何か用事があったらそれが終わってからでもいいが、どうだろう?」
「今からで大丈夫です」
謝礼金の事をすっかり忘れていた。
門番さんについて行くと、少し大きめの建物まで案内される。
村を見て回った時に、不思議に思った建物だ。
出入り口が何個もあり、家ではないし、お店でもない。
ギルドとも違い、何をする建物なのか分からなかったのだ。
「ここだよ。お疲れ様~、隊長」
中に入ると、多くの人が出入りしているのが分かる。
数名で出て行く人達は見回りだろうか?
建物の奥を見ると扉が数枚見えるので部屋もあるようだ。
「アイビー、おはよう。悪いな呼び出して」
「おはようございます、オグト隊長。大丈夫です」
それよりも、皆さんの視線が何だか暖かいと言うか生ぬるいと言うか。
むずむずするようで落ち着かない。
「付いて来てくれ」
「はい」
この場から、離れられるのなら!
少し急ぎ足でオグト隊長の後を追って部屋に入る。
そこには簡易の机と棚。
棚にはびっしりと何かが詰め込まれている。
椅子をすすめられて座ると、オグト隊長がお茶を用意してくれた。
「ありがとうございます」
暖かいお茶にホッとする。
「謝礼金なんだが」
「はい」
「2ラダルと3ギダルになった」
「……えっ?」
あれ?
魔物の情報料より少ないって言っていたと思うけど。
2ラダルって金貨だよね。
どういう事だろう。
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ありがとうございます。
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