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4話 森で生き抜いた3年

占い師さんは、あれからも何度か会いに来てくれた。

話をしてくれたり、劣化版のポーションをくれたり。

食料を、分けてくれたりもした。


その間にも、私の環境はどんどん悪化していく。

あの日から1年が過ぎたころ、部屋に入れなくなった。

悲しくて泣きながら、母に向かって机の上にあったコップを、投げつけてしまった。

そのあと父に何度も殴られて、それまで感じた事のない痛みを経験した。

母が父を止める事はなかった。


劣化版だけどポーションが役に立った。

傷跡がいっぱい増えた事が悲しかったけど、涙はでなかった。


森に隠れて住むようになると、おかしな事にホッとした。

誰にも会いたくないと思ったので、それからは隠れる技術を磨いた。

見つからないように、ただただその技術を磨いた。


その間に、本を何度も読んで頭に叩き込む。

食べられる木の実、毒草、薬になる薬草。

それぞれの特徴を、覚えて見分けがつくようになった。

これで何とか森での生活が、少しだけ安全になる。

毒草を間違って食べて、苦しんだのも思い出だ。


2冊以外に、獲物を罠で捕まえる方法の、本もあった。

自分でも作れる罠を覚えて実践。

何度か失敗したが、獲物を捕まえる事が出来た。

解体中に、前の私が叫んだような気がするが、気のせいだろう。

久しぶりのお肉に、ちょっと興奮してしまった。


3年。

随分と体力がついたと思う。

森の中を長い時間、走れるようになった。

小さい獲物だが、捕まえられる確率も上がった。

薬草を使って傷の手当てもできるようになった。

森での生活は、順調。


……


気になることがあったので、久々に森から出て村の集落に行く。

……死んだと思われていたのか、驚いた顔をされる。

死んでたまるか。


気になる事とは、占い師の事だ。

2週間ごとに会いに来てくれていたが、1ヵ月ほど会っていない。

何か、有ったのだろうか?

占い師の家には誰もいなかった。

どうしたのかと不安になる。


後ろでひそひそと、声が聞こえる。

耳を澄ましてみると、微かに聞こえる話し声。

話の内容に、胸がギュッと掴まれたように痛くなる。

……その場から走って森へと逃げた。


……


占い師は亡くなっていた。

風邪を拗らせてしまったと、聞こえた。

村長が持っているポーションがあれば、治せたらしい。

でも……村長はポーションでの治療を拒否。

原因は私にあるようだ。

私に良くした占い師は、村から煙たがられていたらしい。

知らなかった。

私のせいで……。


隠れ住んでいる住処に戻る。

何もする気が起きない。

悲しいのに、なぜか涙は出なかった。


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