46話 野兎を売りに行こう
村へ戻るため、ソラを起こす。
熟睡をしていたようで何とも反応が悪い。
森の中なので、もう少し警戒してほしいところだ。
「ソラ、野兎を売りたいから村へ戻ろう」
「ぷっぷ~」
ようやく目が覚めたようだ。
アダンダラから離れてピョンピョン跳ねている。
アダンダラは、体を伸ばし筋肉をほぐしているようだ。
ソラが申し訳ない。
「えっと、お肉、いっぱい譲ってくれてありがとう」
まっすぐ私の目を見るアダンダラにお礼を言って、手を振る。
グルルっと喉を鳴らすと、昨日同様颯爽と走り去った。
相変わらず速いな。
お肉の鮮度が気になるので、足早に村へ戻る。
ソラは楽しそうに私の隣をピョンピョンと跳ねている。
そう言えば、ソラの移動するスピードも速くなったよな。
跳ねる力もついたし。
ソラを見ると、着地した場所にあった木に引っ掛かって転んでいた。
どんくさいのは改善されてないな。
村へ近づいたので、ソラをバッグに入れる。
スライムについて早く調べないとな。
門番に挨拶すると、なぜかものすごく笑顔で迎えられた。
ちょっと疑問に思うも、今はお肉を早く売りたいので肉屋へ向かう。
「すみません」
「あら、この間の」
店の奥から、野兎の事を教えてくれたおばさんが出て来た。
その後ろから、少し強面の男性が出てくる。
ちょっと怖くて、びくついてしまう。
「アハハ、大丈夫だよ。これはうちの旦那だから」
「あっ、すみません。野兎の肉を売りたいのですが」
「いいわよ、お肉を見せてもらえるかい?」
「はい」
おばさんの前にある机に、野兎のお肉を全て並べる。
「おや、こんなに狩れたのかい」
アダンダラにもらったお肉がほとんどなので、ちょっと苦笑いをしてしまう。
「良い状態だね。お肉もしっかりと厚みがあるから、干し肉にはとても良いし」
よかった。
初めて野兎を解体したので、少し不安だったのだ。
野ネズミとほとんど同じだったが、肉に厚みがあるぶん野ネズミより時間がかかってしまった。
「うん、問題なし。全部で9匹だね。1匹95ダルだから855ダルになるけど問題ないかい?」
「ないです。ありがとうございます」
野ネズミが1匹、基本100ダル、野兎は1匹95ダルか。
大きくて狩りやすいって言うけど……私には野ネズミの方が狩りやすいな。
今日のはアダンダラが譲ってくれた物だし。
野ネズミの狩りの方が効率が良いかな?
お金を受け取って肉屋を出ると、すぐに森へ向かう。
野ネズミの罠を仕掛けるためだ。
野兎の罠を仕掛ける時に良い場所を数か所見つけておいたので、それほど時間はかからないだろう。
罠を仕掛ける時間より、仕掛ける場所を探す方が時間がかかる。
門の所で、森の見回りを終わらせた様子の人達と遭遇した。
「行ってらっしゃい、気を付けて」
「えっ、はい」
何故か声をかけられた。
門番の人も手を振っている。
さっきから、何なんだろう?
不思議に思いながら森を進む。
見つけておいた場所に仕掛けが終わると、次は川へ行く。
木の実の確保と洗濯だ。
解体が多かったので、予定より少し遅れている。
解体した場所からは離れた川で洗濯を終わらせたら、少し水けを切っている間に木の実を探す。
木に近づく時はソラの様子を必ず見るようにしている。
襲われるのは1度で十分だ。
甘酸っぱくて好きな木の実を発見!
これはうれしい。
栄養価が高い木の実も確保できた。
湿っている服をカゴに入れる。
後は広場で乾燥させればいいだろう。
次は捨て場へ急ぐ。
捨て場に着くと、前に見た時よりゴミが増えている。
これっていつか、お金を出して処理するんだよね。
大変だな~。
ソラのポーションを探すが、探す必要が無いぐらい捨てられている。
手当たり次第に拾ってはバッグに入れる。
次に罠の材料を探す。
野兎用の罠の材料はどれくらい必要だろう?
とりあえず野ネズミの罠と同じ、10個分ぐらいでいいかな?
後は……あっ、誰か来る。
慌てて近くで縦運動をしていたソラをバッグに入れる。
捨て場から出ると、ちょうど見回りの人が私に気がついたようだ。
「あっ!隊長が言ってたアイビーか?」
え?
どちら様でしょうか?
「はい。えっとあなたは?」
「あぁ、俺はガンズベルだ。たぶん門番の時に会ってるはずだが」
顔を確認するが、覚えていない。
「すみません」
「いや、いいって。人数が多いからな」
「何をいじめているんだ?」
「先輩、酷い。苛めてないよな?」
「えっと、はい」
「悪いな。ほら見回りに行くぞ。アイビーも気を付けてな」
「えっ、はい。ありがとうございます」
2人で見回りをしているようで、捨て場を確認したら森へ入っていった。
……と言うか、なんで名前が知られているのだろう。
「隊長が言ってた」って、オグト隊長さんから聞いたって事?
とりあえず、必要な物だけ拾って村へ戻ろう。