45話 大量にもらいました
ゆっくり寝たおかげで、すっきりと目覚める事が出来た。
野ネズミ用の罠は昨日のうちに完成させてある。
今日はまず、野兎の罠を確認して、お肉が確保できたら村へ戻ろう。
それから野ネズミの罠を仕掛けようかな。
森の木の実を食べながら、今日の予定を立てて行く。
あ、木の実もこれで最後だった。
確か川の近くに収穫できそうな実を付けている木が数本あったな、服も洗いたいしあとで川へ行こう。
後は……ソラ用のポーションと罠用の材料を捨て場で拾う事ぐらいかな?
ソラを見ると勢いよくポーションを消化している。
あれ、何かいつもと違うような?
あっ!
ソラの色は半透明の青色のはずなのに、部分的に赤い色が見える。
体の色が変わるのだろうか?
ん~……ソラの状態が分からない。
食欲もあるし、元気に飛び跳ねているから問題ないと思うけど。
食べ終わったのか縦運動を勢いよくしている。
それにしても随分と縦に伸びられるようになったな。
大丈夫なのかな?
お茶を飲んで食後の休憩をしていると、ソラも落ち着いたようだ。
テントを開ける前にソラをバッグに入れる。
お肉が確保できない可能性もあるので、罠と汚れた服をバッグに入れてテントから出る。
まだ日が出たばかりなので少し薄暗い。
広場の出入り口に向かうと、なんだか少し騒がしい。
どうやら冒険者たちが、酒場から帰って来たところのようだ。
管理人に何かを言っている様子が見える。
あっ、暴れ出した。
どうしようかと迷っている間に、解決していた。
管理人は強い人だったようだ。
グルグル巻きに捕まっている冒険者達の横を、軽く頭を下げながら急ぎ足で広場から出る。
管理人さんの顔を見たけれど初めて見た人だった。
……笑顔なのになぜかちょっと怖かった。
あの冒険者達、何を言ったのだろう?
村の門番と朝の挨拶を交わし、森の奥へ足を進める。
少しずつ挨拶を交わす事にも慣れてきた、まだドキドキするけど。
仕掛けておいた場所を目指して歩くと、何だか不思議な気配を感じる。
立ち止まって、周りを確認するが異変は無い。
何だろう?
深呼吸して気配を深く探るが、気配が消えていた。
気のせいかな?
とりあえず、仕掛けておいた罠を確認していく。
2つの罠は押し潰されてしまっていた。
駄目かな?
3つめの罠で1匹の野兎を確保!
「やった!」
バッグから出て私の隣を飛び跳ねていたソラも、嬉しそうに野兎の周りを飛び跳ねる。
野兎を用意していたカゴに入れて、次の仕掛けた場所へ移動する。
最後の仕掛けは川に近い場所なので、すぐに解体が出来る。
最後の1つは仕掛けた時の状態のままだった。
「収穫は1匹か~」
罠を多くすれば、もっと多くの野兎が狩れるかな?
1匹の野兎が入ったカゴを持って川へ向かう。
川辺で解体の準備をしながら、実のなっている木があるか周りを見回す。
川からあまり離れていない場所に、数種類の木の実を見つけることが出来た。
後で収穫しようと考えながら、解体を始める。
解体していると、後ろに気配を感じた。
慌てて振り返ると、昨日の魔物が何かを咥えて近づいて来る。
本を読みなおして覚えたアダンダラの特徴を、目の前の魔物で確認する。
この魔物はやっぱりアダンダラだ。
大きな爪に目の色、尻尾にある模様……死を呼ぶと言われるアダンダラ。
近づいたアダンダラからグルルと喉がなる音が聞こえる。
手を急いで洗って、頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める。
本に書いてあった事って嘘なのかな?
全然、怖くないのだけど。
アダンダラは一歩下がると、口に咥えている物を地面に下ろした。
見間違いかなっと思ったけど間違いない、大量の野兎だ。
微かに動いているので生きているようだ。
野兎を見ていると前足で私の方へ移動させる。
……もしかして。
「譲ってくれるの?」
グルルという音が少し大きくなる。
迷っていると、アダンダラは鼻先で野兎を私の方へ寄せる。
もらう事にしようかな、くれるみたいだし。
「ありがとう」
8匹も譲ってくれた、ありがたい。
それにしても、8匹すべてが無傷で失神している。
どうやって捕まえたのだろう?
「とりあえず解体だ!」
ソラを見ると、アダンダラの前足でソラが突かれている所だった。
突かれたソラが転がって行く。
止めようとしたのだが、ソラの雰囲気が何だか楽しそうに感じたので少し様子を見る。
転がされたソラは、アダンダラの所に戻ってプルプルと震える。
そうするとまた、アダンダラはソラを突いて転がす。
何度も繰り返すソラとアダンダラ。
……あれは、楽しいのか?
あっ、そんな事より早く解体しないと。
お肉を売るなら鮮度が大切だ。
「ふぅ~、終わった~」
解体を終えたお肉を、2匹ずつバナの葉で包んでバッグへ入れる。
疲れた~。
ソラを探すと、アダンダラのお腹に潜り込んで寝ている。
……まぁ、良いけどさ。