34話 ラトメ村へ
ラトス村の冒険者広場は閑散としていて、よく寝ることが出来た。
私としてはうれしい状態だったが、村としては駄目だろう。
どんよりした空気が村全体を包み込んでいるので気分が滅入る。
この村からは早く離れたい。
野ネズミでも捕まえて金を稼ごうかと思ったが次の村に期待しよう。
ラトメ村へは地図上では7日ぐらいで着くはずだ。
拾った地図だが、それほど間違いが無く役立っている。
肉屋を見つけたが、どうも並んでいる肉の状態が悪そうなのでこの村での購入は止めておいた。
旅でお腹を下すのは最悪だ。
赤のポーションで病気は治るが、私の持っている劣化版だと治りが遅い。
予防しておくことが大切だ。
…………
ラトス村から5日ほど、ようやく木の魔物に対しての恐怖心も落ち着いてきた。
森での休憩もしっかり出来るようになったので、よかった。
村道を歩いていると多数の気配を少し遠くに感じたので、ソラをバッグに隠す。
しばらくすると冒険者の集団が、こちらに向かって歩いて来るのが見えた。
チームにしては少し人数が多い。
村道の隅に移動して、通り過ぎるのを待つ。
通り過ぎて行くのを見ていると、奴隷の輪が付いている存在がいる事に気がつく。
奴隷という存在を初めて見た。
小さい村には奴隷はほとんどいないため、今まで見たことが無かったのだ。
町や大きな村には奴隷商というモノがあると聞いていたが、私には関係ないと少し前まで思っていた。
だが、盗賊が人をさらっては、奴隷として売っていると他の冒険者が話しているのを耳にして驚いた。
その冒険者は家族だと思われる子供に、再三注意を繰り返していた。
注意の内容は、旅の途中では人をあまり信用しない事や魔物と同様に森の中では人に近づかない事。
また、怪我をしている人が助けを求めても、1人の時は近づかないようにとも言われていた。
どうやら怪我人を装って襲う盗賊がいるらしい。
盗賊については占い師からも注意を受けていたが、人をさらう盗賊については聞いていなかった。
奴隷には犯罪奴隷と借金奴隷がある。
犯罪奴隷は罪を犯した者が刑期を終えるまで奴隷として国で管理される者達で、
借金奴隷はお金を借りたが返済できなかった者達の事だ。
冒険者が連れているのは借金奴隷かな?
犯罪奴隷は国の事業で駆り出されるなど、結構ハードな仕事があてられると聞いた。
冒険者たちも依頼を失敗して借金を背負うこともあると広場で話しているのを耳にしている。
奴隷落ちにならないように気を付けよう。
これから大きな村や町に行く、盗賊が出やすいと言われている場所でもある。
1人旅は狙われやすい、気を引き締めないと。
村道の周りの気配を探り、問題がない事を確認してからソラをバッグから出す。
以前より、少し大きくなったソラ。
しかも私の傷を治してから、随分としっかりとした体になった。
横に伸びてしまっていた体が、しっかりとした雫の形になってきたのだ。
まぁ、まだ微妙に横に伸びているように見えるが……。
でも、あと少しで普通のスライムと見分けがつかなくなるだろう。
そうなれば、ずっと外に居ても問題がなくなる。
ただ、少し気になるのはソラの半透明の体だ。
何度かテイムされているスライムを見たが、どの子も体は濁った色合いだった。
綺麗な色の子も中にはいたが、半透明のような感じではない。
ソラは半透明の青色だ。
食事をしている時の泡が綺麗に見えるほど、透明に近い半透明なのだ。
そうだ、次の村では本屋に行ってみようかな。
ソラの事は無理でも、スライムの事がもう少し詳しく載っている本があるかもしれない。
色についても何か書かれているだろう。
もし半透明なのがソラだけだったら……形がしっかりしてもやっぱりバッグから出せないし。
ソラがぴょんと村道へ飛び降りる。
私の横をピョンピョンと跳ねながら移動する。
これも私の傷を治してから、出来るようになった行動だ。
最初の頃を覚えているので、随分と逞しく感じる。
出会った当初だったら、絶対に消えてしまうと慌てている所だな。