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27話 情報料

ラトム村に入ると周りを見回す。

他の村より活気がある。

冒険者の数も多い。

オトルワ町に近づくほど、村も大きくなっているような気がする。

町に近いほうが発展しやすいのかな。


役場は村の入り口の近くにあるはずなので、近くの看板から見て回る。

順番に見て行くと、少し離れた所に役場の印があるのを見つけた。

未成年の1人旅に不信感を持たれるかもしれないが、亡くなった人の事を思うと知らせた方がいいだろう。


「すみません」


役場に入ると、冒険者が4人とお姉さんがいた。

全員の視線をもろに受けて緊張してしまう。


「どうかされましたか?」


緊張で動けない状態の私に、お姉さんが優しく声をかけてくれた。

よかった。


「ラトム村の近くの村道で、何人かの人が魔物に襲われ亡くなっていたのですが……」


「……えっ!……どこの村道に?」


「ラトト村に向かう村道です。でもこの村に近いです」


「えっと、どれくらいの距離かざっとでいいのだけどわかるかな?」


「私の足で、30分もかかっていないと思います」


最後の私の答えにお姉さんが顔を歪ませ、すぐに奥の部屋に駆け込んで行く。


「はぁ?近くに魔物が出ただと?」


「はい、早急に調べないと、村が襲われる可能性もあるかもしれません」


奥の部屋から声が聞こえる。

随分と声が大きい。

役場に居た冒険者たちも奥の部屋を眺めている。


奥から出てきたのは随分と背の高い男性だった。

体のあちらこちらに傷がある。

私の前に来ると、視線が合うようにしゃがみ込んで、声のトーンを少し抑えて話し出した。


「あ~疑っているわけでは無いが、本当にこの村の近くの村道か?」


「はい……見つけた後、怖くて走ったので正確な距離はわかりませんが、すぐに村の声が聞こえたので」


男性はじっと私を見たあとに、大きくため息をついて髪をかきむしる。


「あ~こりゃ、まじだ……魔物か~」


どうやら少し大ごとになりそうな雰囲気だ。

男性は立ち上がって近くにいた冒険者に、声をかける。


「悪いが至急の依頼だ。正確な距離とできれば魔物の種類も。あとで指名依頼としてギルドに通しておく」


冒険者の4人が、すぐに役場から出て行く。

一緒に出て行ったという事はチームだったのだろう。


「ありがとうな、情報料は調べた後になるがいいか?」


「……はい」


情報料ってなんだろう?

もしかして魔物の情報?

いや、魔物に襲われたかもって言っただけだけど……。

私の雰囲気で、理解していない事に気が付いたのだろう。

お姉さんが教えてくれた。

魔物に襲われた情報や、村の近くで亡くなっている人の情報は役場に届けると情報料が出るそうだ。

特に魔物の情報は早い方がいいとの事。

まだ私の持って来た情報が魔物とは確定していないが、亡くなった人の情報料は出るらしい。

そのため明日、役場に顔を出す事になった。


「ありがとうございます」


お姉さんにお礼を言って、役場を出る。

何だかちょっと、想像とは違う方向へ話が行ってしまった。

私としては報告するだけだと思っていたのだ。

だが、確かに村の近くで魔物が出たのだから大変な事だ。

そうだ……魔物が村の近くに居る可能性があるなら森の中は危険だ。

今日は冒険者の広場で休もう。

あっ、その前にソラのご飯を探しに行かないと。

残りは私の分も含めて5本しかない。

そう言えば、移動中はポーションが少ないと横に伸びて不満アピールをしなかったな。

渡す分だけで満足してくれた。

……捨て場に青のポーションが、いっぱいある事を願おう。

お腹いっぱい食べさせてあげたい。

さて、捨て場はどこだろう?


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