14話 不思議な生き物
最初に出会ったスライムから、ラトトへ向かう道すがら沢山のスライムに出くわした。
ラトトへ向かう村道付近には、スライムが大量に発生するようだ。
情報収集の時には、そんな事は聞かなかったが、弱いスライムの情報はそれほど流れないのかもしれない。
それにしても、逃げるのに疲れた。
もうそろそろ次の村に着く頃だと思うのだが。
やばい、水が切れた。
何処かで水の補充をしなければ。
まだ村が何処にあるのかが、わかっていない。
もしも、この場所から遠かった時の事を考えると、補充は必要だ。
耳を澄ますと微かにだが水の音が聞こえる。
少し遠いようだが仕方がない。
森の中に入って、水の音が聞こえる方向へと足を進める。
「わ~……すごい」
水の音に導かれて着いた場所には、少し大きめの湖があった。
湖の水面には見た事のない花がいっぱい咲いている。
名前は知らないが、水面に大きな葉っぱが浮かび、葉の間の水中から少し茎が伸び、その先に少し大きめの白や薄ピンクの花が揺れている。
少しの間、花に見惚れてしまった。
気が付いて、慌てて周りを見回して異変がないかを確認する。
森の中で気を抜くのは駄目だと言うのに……。
湖にそそぐ川を見つけて、竹筒に水を補充する。
もう少し竹筒を確保できたらいいのだけど、竹筒なんてほとんどの人は使わないし。
捨てられている物は割れてしまっている。
何処かで竹を見つけたら、自分で作ってみようかな。
村道へ戻るために、森の中に付けておいた印を探す。
付けた印は緑の細い紐だ。
紐を回収しながら村道へと戻る。
「……なにこれ」
もう少しで村道へ戻れるという場所に、不思議な生き物がいた。
パッと見てスライムだと思ったのだが、違うような。
体は、なんだかスライムを横に伸ばしたような……。
色は半透明の青い色、目は……魔物だと思うが愛嬌がある。
「……可愛い」
……魔物なのに可愛いと思ってしまった。
これでは、前の私を馬鹿に出来ない。
だが、なんだかこの崩れたような体のスライムもどきは可愛いのだ。
スライムもどきはこちらをじっと見つめている。
……スライムもどき?崩れた……魔物一覧本のスライムの項目で見た覚えがあるな。
「思い出した……崩れスライム?」
名前のないレアスライムがいると、本に載っていた。
最弱スライムと言われたり、見た目から崩れスライムと呼ばれるレアスライムだ。
レアと言えば強いほうを想像するけど唯一、魔物の中で弱いレアだ。
「確か、風が強く吹いても消えちゃうんだったっけ?」
私と一緒で最弱らしい、でも最弱とは言いたくないから崩れスライムと呼ぼう!
ちょっと親近感がわく。
見ていると髪を揺らす程度の風が吹いた。
目の前の崩れスライムがその風にコロコロと転がった。
「……本当に弱いんだね」
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