モブNo.97:「私は軍人としての仕事をしただけですので、感謝の言葉は結構です。それでは報告がありますので失礼します」
幸いファディルナ・プリリエラ嬢の船は大破することなく原型を保っていた。
脱出装置が動かないということは、気を失っている可能性が高いかな。
取り敢えずビームの来た方向に視線をむけると、最新型の戦闘艇であるティウルサッド社の『ヴェルタスク』が6機程近づいてきて、その中のリーダーらしい男から、信じがたい通信を受け取った。
『おい大丈夫か?俺の攻撃が間一髪間に合って良かったな!』
リーダーらしい男の通信内容に、一瞬なにを言っているのか理解出来なかった。
「いや、危なかったのは向こうで、こっちはあと少しで足を止めれるところだったんだけど?」
しかし横入りをされて黙っているわけにはいかないので文句をいうが、
『なにいってんだ?お前が戦っていた相手は元・
階級の話を持ち出してきて、こちらの話に聞く耳を持つ気はないらしい。
その間に、彼の仲間がプリリエラの乗っているコクピットを脱出装置ごと引きずりだしていた。
そうしていると、ようやく軍と警察がやってきた。
ヴァストーグ元侯爵親子はもちろん、ヴァストーグ元侯爵の私兵達も軍と警察に拘束されていった。
リーダーらしい男は、自分達が襲撃をかけて捕らえたのだと主張していた。
まあその事は
しかしファディルナ・プリリエラの捕縛に関してだけは、自分の都合のいいように話していたので反論させてもらった。
「ファディルナ・プリリエラは私が捕縛しようとした寸前に、そちらの人が横入りをしてきたんです!」
「なにいってんだ!俺が助けてやらなきゃやられるところだったろうが!」
リーダーらしい男、オレード・ガーブライトはそう反論してくる。
こりゃ水掛け論になった後に、ガーブライトに賛同する連中が増えてこっちが負けるかなと思っていたら、
「そちらのガーブライトさんがウーゾスさんの『
パイロットスーツ姿の女性が僕の味方として現れた。
「ちがう!こいつがピンチだったから助けてやったんだ!」
「ファディルナ・プリリエラが劣勢になるまで静観を決め込み、絶妙なタイミングで横入りをしたでしょう?なんなら映像と音声もありますが?」
「そ……そんなもの偽造だ偽造!」
ガーブライトは一瞬怯むがそれでも食い下がって反論するが、僕の味方をしてくれた女性がガーブライトを冷たい目で睨み付けると、
そうして彼女が公開した映像と音声を確認すると、間違いなく横入りを狙って行動した証拠がバッチリ映っていた。
「他人の功績を奪い取るのは愚行以外の何者でもありませんね。何よりも自分の価値を下げます」
「ぐっ……」
改めて彼女に睨まれ、ガーブライトは苦虫を噛み潰したような表情をして、それ以上しゃべることはなかった。
ちなみに僕は、その女性に見覚えがあった。
何処であったのかは思い出せないけど、たしかに見覚えがあった。
だれだったかなと考えていると、警察に身分をたずねられたらしく、
「私は中央艦隊討伐部隊第1艦隊所属のシュネーラ・フロス中佐です。休暇でこちらに来ていたところにおかしなスカウトに声をかけられたので、直属の上司に許可をもらって潜入捜査をしていました」
そう答えながら彼女が身分証を提示すると、その場にいた軍人はもちろん、警官も佇まいを正した。
それを聞いて、ようやく彼女を何処で見たか思い出した。
バーンネクストに絡まれた時に助けてくれた、ジャック・バルドー・ブレスキン将軍の横にいた秘書っぽい女の人だ。
この人がいなかったら、ガーブライト達に押しきられて手柄を横取りされて泣き寝入りになっていただろう。
ともかく感謝しかないのでお礼と感謝を述べたところ、
「あの……助けていただき、ありがとうございました」
「私は軍人としての仕事をしただけですので、感謝の言葉は結構です。それでは報告がありますので失礼します」
と、キビキビとした動きで軍の船に向かっていった。
それから、僕を始めとした捜索の依頼を受けていた傭兵は、身分証と傭兵ギルドへの問い合わせだけで解放されたけれど、話に乗った一般の人は長めの調書取りと取り調べがあったらしい。
ちなみに、オレード・ガーブライトは首謀者を襲撃した主人公君気質な人達と行動は共にしていたけど、彼等の仲間ではなかったらしい
こうして、ヴァストーグ元侯爵親子、ファディルナ・プリリエラの主犯3人を始めとして、ヴァストーグ元侯爵の私兵達や、警察から手配書が出ていたような連中が大量に捕縛され、反乱をきっかけに海賊になった元貴族がまた2人逮捕された。
情報料は発見した人数が多かったので10万クレジット程度だったけど、ファディルナ・プリリエラの確保で400万クレジットの懸賞金が手に入る事になった。
ちなみに発見されたゲートは、発見者が犯罪者ということもあり政府が没収。そのまま管理される事になるらしい。
精神的にも肉体的にも疲れた身体に鞭打って、何とか惑星イッツに帰ってきたものの、このまま家に帰るとしばらく外出したくなくなりそうだったので、先に様々な用を済ませておく事にした。
まずはローンズのおっちゃんのところに行って情報料と懸賞金をいただくことにした。
「ういっす。お久し振りっす」
「おう、戻ったか。お前さんがファディルナ・プリリエラを捕まえて、そこに横入りしたやつがいたそうだな」
「耳がはやいね」
ローンズのおっさんが知っているということは、弟のユーリィ・プリリエラことヒーロー君にも知られているということだ。気を付けないとヤバいかもしれない。
その僕の不安に気がつく訳はなく、ローンズのおっちゃんは話を続ける。
「そのお前に横入りした奴な、別の支部で問題視されていた奴で、ついにお縄になったらしい。手口はお前が体験したとおりで、戦闘艇での
「よく今までバレずにやってこれてたね?」
「もぎ取られた奴を家の権力を使って脅してたらしい」
ちなみに襲撃の立役者は、やっぱり美男美女の傭兵チームで、潜入していたシュネーラ・フロス中佐といっしょなら見栄えも良いしマスコミも喜ぶだろうね。
それにしても、反乱に参加していなかった『正当な貴族』は結構いるかもしれないねこりゃ。
「で、その情報料とファディルナ・プリリエラを捕まえた懸賞金あわせて、410万クレジットだ。
ともかく今日は早いとこ用事をすませて、家で飽きるまで眠りたいな……。
ヒロイン?サイド:シュネーラ・フロス
反乱鎮圧後に休暇を申請して、
放置しても良かったのですが、反乱の首謀者であるヴァストーグ侯爵絡みかもしれなかったので
首謀者を襲撃した連中の手際は酷く稚拙なものでしたが成功はしました。
ですがやはり穴があり、首謀者の一人が脱出してしまったのでそれを追いかけたところ、何者かがそれを察知していたのか、逃走経路を塞ぎ、
そしてその決着が着こうとしているとき、私より後に来た連中が足止めを眺めていたかと思えば、決着が着くタイミングを見計らって首謀者側を襲撃して横入りをしたので、潜入時の証拠用に録画していた映像で、横入りを証明してやりました。
しかし驚いたのは、足止めをしていた相手でした。
私が以前
彼の
私も戦闘艇に乗りますが、私では敵わないでしょうね。
取り敢えずこの事は報告しておきましょう。
ヒロイン?サイド:終了
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お詫び
本作品での初めての書籍化作業に追われ、執筆時間が削れてしまっています。
なので、更新が滞るかもしれません。
先に謝っておきます。ごめんなさい