モブNo.88:「いらっしゃい。…なんだお前か。隣国の胡散臭い宰相閣下のお友達には会えなかったみたいだな」
長々と続いたロスヴァイゼさんの話の内容はこんな感じだ。
まずは、一部の貴族軍人達による大量のナンパと嫌味。そしてランベルト君共々の軍への勧誘。これに対しての愚痴が大多数を占めていた。
他には、ゲルヒルデさんと再会した時の事。
ランベルト君というパートナーができた事をゲルヒルデさんが喜んでくれた事。
ゲルヒルデさんが自分も探すと宣言し、その見つけたパートナーと今回の戦場にきた事。
ランベルト君がかなり成長し、気絶をしなくなり、戦闘もかなり強くなっているという事。
さらには、自分のアバターが無かったのは、予算の都合だったという事まで話してくれた。
愚痴以外はわりと有用な話だったと思うが、お陰で睡眠時間が4時間も削られ、機体の燃料補給と点検・風呂と飲食物の買い物で2時間はたっているので、あと6時間しか残らなかった。
それでも寝ないよりはマシなので、ロスヴァイゼさんが電話を切ったら即座に寝た。
そうして目を覚ました頃には、コロニーの退所時間間近になっていた。
寝起きは危ないのと、いつもどおり混雑を避けるために、他の人達が全員コロニーを出るまで待ち、一番最後にコロニーを出て、そのままイッツへの帰路についた。
とはいえ、ゲートの関係で行きよりも倍以上の時間がかかるんだけどね。
そうして出発してから丸2日も移動に費やし、3日目の昼過ぎに何とか無事に惑星イッツの傭兵ギルドにたどり着いた。
即座に家に帰りたくはあったけれど、ローンズのおっさんへの支払いもあるのでギルドの
そのロビーでは、『羽兜』のランベルト君と、今回の事で騎士階級に昇格したアーサー君の2人をギルドを挙げて大歓待していた。
皇帝陛下の護衛といえど、傭兵であるため戦闘が無かったわけではなく、そこでこの2人はかなり活躍していたらしい。
その集団のなかには、ロスヴァイゼさんとセイラ嬢の姿もあった。
僕はその喧騒を避けて、ローンズのおっさんの窓口に向かった。
「戻ったよ」
「代金を踏み倒されずにすんでよかったぜ」
にっこり笑うおっさんとそう言葉を交わして、拳をぶつけあった。
「報酬はもうでてるぞ。傭兵には一律500万クレジットだそうだ」
「早いし大盤振る舞いだね。絶対ショボイ上に、払い渋ると思ってたのに」
以前の惑星テウラのテロリスト退治の時のイコライ伯爵は早かったけど、今回の反乱に参加しなかったけれど、おなじくらいろくでもない貴族が沢山いる軍と政府となれば、死ぬほどごねるか安く済まそうとするのは当たり前のはずだ。
「皇帝陛下の御配慮だとさ」
「そりゃありがたいなあ」
たとえ人気取りの為だとしても、この辺の気遣いが出来るのが今代の皇帝陛下の支持率の高さの理由だろう。
そんなことを考えつつ、報酬を30万だけ現金で、後は
「じゃあこれ、地図の代金ね」
「ありがたく貰っとくぜ。これで娘が欲しがってたスポーツウェアをプレゼントできる!」
おっさんは嬉しそうに現金を懐にしまいながら、
「地図は役に立ったか?」
と、聞いてきた。
「役には立ったけど出番は無かったかな」
「そうか。そいつは悪かったな散財させて」
そうはいうが、おっさんはなんとなく嬉しそうだった。
そして人だかりの方に目を向けると、
「そうそう。
「うわー面倒臭そう!」
という、ロスヴァイゼさんとセイラ嬢が激怒しそうな情報を教えてくれた。
「で、お前はこれからどうするんだ?」
「今すぐ帰って寝たいけど、寄るところがあるんで、そこにいってから帰るよ。明日からはしばらく休みかな」
用件が終わり、ローンズのおっさんとそんな会話を交わしてから、ギルド内の喧騒を無視してギルドを後にした。
まずは銀行に行き、今回の報酬の1/3の170万クレジットを仕送りとして両親に振り込んだ。正確には166万6666…とかになるので、切りよく170万を振り込んだ。
街中は、反乱軍が鎮圧されたことで、情報や戒厳令が解除された事と、それによりろくでもない貴族が大量に逮捕されたことに歓喜の声が響き、皇帝陛下を讃えるディスプレイやポスターが至るところにあった。
それは闇市商店街も例外ではなかったけど、ディスプレイもポスターの
そして例の肉屋さんは、『愚か者共が断罪されし記念の宴』と銘打ち、『油泥に堕落せし、地を這いし翼竜の末裔・大海の源に囚われし者』と、『油泥に堕落せし、地を這いし翼竜の末裔・大地に蔓延り、千変万化せし者の涙に溺れし者』の2種類を、200g50クレジットで販売していた。しかも丁度揚げたてを出してきたので、思わず『油泥に堕落せし、地を這いし翼竜の末裔・大海の源に囚われし者』を400g購入してしまった。
肉屋さん以外にも、『マンドラゴラのサラダ』と『オーク肉の柔らか角煮』の特売をやってる惣菜屋や、『ジャックオーランタン特価』『黄金の林檎・蟠桃果が2割引!』とかやっている八百屋。『ネクタルの新酒入荷!』の張り紙が貼られた酒屋なんかもあった。
そんなこの商店街独特の喧騒を楽しみながら、パットソン調剤薬局に向かった。
薬局内はいつもとかわりなく、ゴンザレスは新聞を読んでいた。
「よう」
なので僕もいつもとかわりなく薬局内に入り、
「いらっしゃい。…なんだお前か。隣国の胡散臭い宰相閣下のお友達には会えなかったみたいだな」
「一応戦場には居たらしいけど、『鬼神』がいたから逃げ帰ったらしいよ」
僕は椅子を勝手に持ってくるとカウンターを挟んで座り、
「お陰で死ななかったじゃないか」
「その辺りは、お世話になった第11艦隊のお陰もあるかもね」
いつものような会話を交わした。
「それで、何か入り用か?」
「いつもの飴をね。あとは出番は無かったけど役に立った地図のお礼を」
「そうか」
そういうとゴンザレスはいつもの飴をカウンターに並べながら、
「でも礼をするなら手土産くらい持ってこいよ」
と、言ってきたので、さっきの『油泥に堕落せし、地を這いし翼竜の末裔・大海の源に囚われし者』をカウンターに置いた。
「それアローワン魔物精肉店のやつだろ」
「揚げたてだったんでつい…」
するとゴンザレスが冷蔵庫から炭酸飲料を2本取り出し、1本を僕に渡してきたので、僕は『油泥に堕落せし、地を這いし翼竜の末裔・大海の源に囚われし者』の容器をあける。もちろんまだ暖かく、湯気が立ち上っていた。
そうして2人で炭酸飲料のキャップを開け、黙って乾杯をする。プラボトルなので良い音はしなかったけどね。
ちなみにこの日から3ヶ月後には、反乱に参加した者達に対し、
平民で無理矢理徴兵された者は罰金1200万クレジット、もしくは最大2年の禁固刑に。
平民で蜂起に志願した者は最低5年の懲役刑から、個人別には更なる厳罰が。
蜂起に強制参加させられた貴族は罰金5億4000万クレジット、もしくは最大5年の懲役刑が。
自ら蜂起に参加した貴族は、爵位剥奪・領地取り上げ・最低10年の懲役刑、場合によっては死刑もあり。
そして蜂起を促した中心人物は、爵位剥奪・領地取り上げの後に公開処刑。
という判決が下され、一部の貴族は控訴・上告を希望したが棄却された。
実は、モブのお父さんの借金の金額によって、モブの年収がかなり違ってくる事が判明しました。
共通条件
○モブの勤続は完済日までを7年間とし、その7年で完済している。
○モブの収入は、年度によって増減があるため全体を平均化する
○モブは収入の1/3を借金に当てているため、収入は仕送りの3倍とする
○両親側からの返済は考慮しない。モブの仕送りだけで返済
○1クレジット以下のは端数は切り捨て
条件①借金が5000万だった場合
仕送り額が1年で714万2857クレジットになり、1年間の収入は2142万8,571クレジットになります。
条件②借金が1億の場合
仕送り額が1年で1428万5714クレジットになり、1年間の収入は4285万7142クレジットになります。
条件③借金が2億の場合
仕送り額が1年で2857万1428クレジットになり、1年間の収入は8571万4284クレジットになります。
貴族のアホボンがやらかした事の濡れ衣を着せられ、退職にまで追い込まれた事を考えると1億ぐらいかなと思います。
実行には初年度。2年目は少なく3~6年目にかなりの額を稼いだのだと思います。
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