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モブNo.9:「単刀直入に申し上げます。私に乗り換えませんか?」

今回は、モブ(主人公)の出番は極少ですのであしからず

ヒロイン?サイド:小型戦闘艇WVSー09・ロスヴァイゼ


私は運がいい。

私が乗せるにふさわしい存在が、2人も同時に現れたのですから。

かたや超一流の傭兵。

かたや親衛隊の隊長で大将。

どちらであっても不足はありません!

いま私に乗っている、失禁気絶男とは格が違いますね。

さて…どちらに声をかけましょうか?

よし!傭兵の彼にしましょう。

私は戦闘艇ですからね。真価は戦場にあります。

私にとって、相手の番号を調べたり、セキュリティを黙らせる事なと、赤子の手を捻るより簡単です。

そして数回のコールで出てきたのは、黒髪に濃い紫の眼をした、精悍そうなイケメン、アルベルト・サークルードです。

今私に乗っている失禁(ランベルト・)気絶男(リアグラズ)も、顔だけなら同格です。

「初めまして。私は小型戦闘艇WVSー09・ロスヴァイゼともうします。そちらはアルベルト・サークルード氏の船『ディアボロス号』そしてあなたが船長で傭兵のアルベルト・サークルード氏で間違いありませんか?」

『なんの用だ?』

アルベルト・サークルードは驚きながらもこちらを凝視しています。

なので私は直ぐに用件を切り出しました。

「単刀直入に申し上げます。私に乗り換えませんか?」

『なに?』

『私は小型戦闘艇WVSー09・ロスヴァイゼ。あなた方がいうところの、古代文明の遺跡から発掘された意思のある超兵器なのです。いま貴方が使用している戦闘艇は、私達ワーグナー・(W)ヴァルキュリア・(V)シスターズ(S)を模して製作されたもののようですが、私には遥かに及びません。それは先ほど証明済みのはずです」

それを聞いたアルベルト・サークルードはピクリと眉を動かした。

「ですが今私に乗っているのは、貴方とは比べ物にならないゴミであるため、私の性能を十分に発揮できないのです。しかし貴方なら!私の性能を100%発揮できると思うのです」

『なるほど…』

アルベルト・サークルードは真剣な表情で私を見つめてきた。

これは堕ちたわね。

ではさっそくランベルト・リアグラ(ゴミ)ズを船外に叩き出す準備をしましょうか♪

「お分かりになりましたか?では早速こちらに…」

『いらん』

「え?」

私は集音マイク(みみ)を疑った。

いまなんて?

どうして向こうの男は不機嫌な顔をしているの?

『俺にはこの『ディアボロス』がある。それに、乗ってた奴を自分が気に入らないから追い出すってんだろ?誰がてめえみたいな尻軽ビッチのご機嫌取りなんかするもんかよ。二度と関わるな』

アルベルト・サークルードはそう言い捨てると、通信を切った。

私はしばらく呆然としたけど、直ぐに怒りが湧いてきた。

なんなんですかあの真っ黒男は!

意思のある古代兵器ですよ?

この時代で私に勝てる船なんかあるわけないのに!

勘違い失禁気絶男といい、あのキモオタといい、傭兵なんて連中にろくな連中が居ないわね!


やっぱり私にふさわしいのは大将閣下ね♪

私の船内にいれば絶対に安全だもの、本当に優秀な方なら私の価値が分かるはず。

即座に個人番号をチェックすると、さまざまなセキュリティが張ってあった。

しかし私にとっては、この時代のセキュリティなんかないのと一緒。

いいこいいこして簡単に通してもらったわ。

そうして何回かの呼び出し音(コール)の後、金髪で切れ長の碧眼の美形の青年が姿を現した。

『どちら様かな?』

「初めまして。私は小型戦闘艇WVSー09・ロスヴァイゼともうします。そちらはキーレクト・エルンディバー大将閣下の汎用端末(ツール)で、貴方がキーレクト・エルンディバー大将閣下御本人で間違いはございませんか?」

私がそう笑顔の映像を送り(ほほえみながら)質問すると、キーレクト・エルンディバーは軽く笑みを浮かべ

『ふむ。私の家族と友人。そして一部の腹心しか知らない私の個人番号を手に入れ、さらには数々用意されていたセキュリティを有効のまま沈黙させ、私に初めての通信(コール)をしてきたのが美しい女性とはね。正直驚きを隠せない』

「それは光栄ですわ」

私の優秀さを実感した台詞をはいた。

『それで?私に何用かな?』

そしてその笑顔のまま、私に質問を投げてきた。

なので私もストレートに用件を告げる。

交渉は搦め手でくる事が多いから、ストレートなのは新鮮に写るはずよ。

「単刀直入に申し上げます。私にお乗りになりませんか?私は小型戦闘艇WVSー09・ロスヴァイゼ。あなた方がいうところの、古代文明の遺跡から発掘された意思のある超兵器なのです。

いま貴殿方が使用している戦闘艇や戦艦は、束になっても私には傷一つつきません。貴方が安全に任務をこなすためにも、私に乗ることは損にはなりませんよ?

今は燃料補給や停泊のために人間を乗せていますが、これは私に乗るには相応しくない人物なので、すぐに叩き出しますから御安心を」

私のプレゼンテーションを聞いたキーレクト・エルンディバーは、眼を閉じ、色々と思考を廻らせはじめた。

そしてしばらくして眼を開けると、

『ふむ…確かに古代超文明が作り上げた戦闘艇なら、私の身の安全は確実に保証される事になることは間違いないかな』

納得した表情のまま笑顔を浮かべていた。

みなさい!真に私にふさわしい人は、私の価値を理解できるのよ!

「ではいまからそちらの船に接舷を…」

『だが私はその話に乗るつもりはない』

「え?」

私はまた集音マイク(みみ)を疑った。

『まず、『単純に信じられない』だ。

今まで何百年と探していて、いまだに発見されていないのに、超兵器でございといって出てくれは、詐欺か冗談のどちらかだ。

次に、仮に貴女がその本物の超兵器だとして、今貴女に乗っている人物を叩き出すといっていた。

乗せたは良いが、自分には相応しくなかったからと。

ならば、私も貴女の理想と違えば叩き出される可能性がある。

しかも貴女に人格があり、搭乗者に対して高位に出れるということは、私がお守りしようとしている方を乗せたとしても、貴女の気分一つで放り出されてしまう可能性も否定できない』

キーレクト・エルンディバーは軽くため息をつき、

『ゆえに、私は貴女を必要としない。ああ、傭兵としての報酬は弾んでおこう。では失礼。まだ作戦中なのでね』

あっさりと通信を切ってしまった。


私は突然の事にフリーズした。

なんなのよ?なんなのよなんなのよなんなのよなんなのよっ!

バッカじゃないの!

私がどれだけ優秀なのかわかってないじゃない!

トップクラスの傭兵も親衛隊隊長の大将閣下もとんだ節穴ね!

そうだわ!

なにも男にこだわらなくてもいいじゃない!

女同士のベストコンビってのもアリだし♪

あ!幼い美少年を乗せて私好みに教育してもいいわよね!

その辺りを探すにしても、補給には人間が必要よね。

仕方がない、もう少し乗せてやるしかないか…

私はいまだに気絶している失禁(ランベルト・)気絶男(リアグラズ)を見つめ、出るはずのないため息をついてしまいます。


ヒロイン?サイド:終了


部隊が突入してからは、幸い逃げ出す奴等も居らず、実に平和だった。

買ってきたラノベは当たりだったし、ヒーロー君にも絡まれなかった。

周りものんびりムードで、簡易修理をしている連中までいるほどだっだ。

ただ1人(1機?)、搭乗勧誘(逆ナンパ)に失敗し、愚痴を吐き出していたかと思えば、いきなり気味の悪い笑い声をあげるロスヴァイゼさんを除いて。

そして部隊が突入してから64分ほどたったころ、

『施設の完全制圧を完了した!』

作戦終了の報告が入り、カイデス海賊団壊滅作戦は無事に終了した。

もちろんそれで直ぐに解散ではない。

大将閣下の味方称賛(ながばなし)をちゃんと聞いてから、ようやく解散になる。

軍の仕事の時のお決まりとはいえ、大将閣下(はなすほう)もなんとなくうんざりしているようにみえなくもない。

御苦労様です。

突入部隊はまともで優秀な連中だったようです。


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