モブNo.85:『よって、その原因である貴殿らを殲滅する』
いきなり始まった前哨戦が終了し、味方の全部隊は一旦コロニーのあるところにまで下がり、休息をとることになった。
とはいえコロニーでゆっくり休むのではなく、補給が終了したものから、自分の船で待機する形での休憩だ。
いつ敵の別動隊やら伏兵やらが現れるかもしれないとなれば当然の警戒ではある。
反乱軍も惑星ガトハガの衛星軌道上ぐらいまで撤退し、同じように休息を取っているだろう。
僕はその時間を利用して、ゴンザレスから買った宙域地図を眺めながら、載せたばかりのレーダーを起動させ、地図と実際の地形を照らし合わせていた。
ゴンザレスから買った地図によると、惑星ガトハガ周辺の宙域は国境が近いのもあって要塞コロニーなんかがぽつぽつと記載され、放置された解体待ちの古いコロニーやでかい宇宙船の残骸の位置までもが細かく記載されていた。
その仕事に感心していると、地図上ではなにもない場所になにかの反応があった。
詳しく見てみると、惑星ガトハガから18億㎞ほど離れた位置に、地図に記載されていない衛星型の機動要塞のような物があった。
ゴンザレスが手に入れた地図にもないということは、政府か軍が極秘に建造していたか、何者かが勝手に建造していたかだが、事変の直前まで周辺宙域の
この存在をアーリーヘンジ少将閣下が見逃している筈はないだろうから気にする事はないかな。一応向こうの方向に何かあったら
そうして休息を開始してから6時間後、再び戦闘を開始するべく進軍命令が下った。
反乱軍は惑星ガトハガの衛星軌道上から離れ、此方を迎え撃つ準備を整えていた。
両軍は最初の時同様に相対し、ゆっくりとその距離を縮めていった。
その時、皇帝陛下の御座船から味方の全ての船に一斉に通信が入った。
『将兵諸君、先の突発的な戦闘は御苦労だった。味方被害も少なくて
この号令を下すと言うことは、相手が非道をおこなった者達とはいえ、私が自国民に手を掛けたという確たる事実の証拠になる。
しかし、
そう言い切った皇帝陛下の表情は、凛々しくも美しいものだった。
そうしているうちに敵・反乱軍との距離は近づき、戦闘可能な距離になった時、
『全軍砲撃用意。目標は前方敵部隊。…撃てぇ!』
皇帝陛下の号令と同時に、ビームの雨が反乱軍に降り注いだ。
無論向こうもそれぐらいは承知しているから、バリアを展開したり回避をしたり反撃をしてきたりしてきたりと基本的な対処をし、攻撃をしながら距離を詰めてきた。
ここからは僕のよく知る、戦場になることがまちがいないようだ。
僕は
そんなことをしたところでレーダーがあるのだからすぐに位置はバレる。しかし戦闘に集中しているとどうしても視野が狭くなる。特に自分の機体の下側はどうしても甘くなる。その隙をついた戦法を今から実行するつもりだ。
本来は惑星上の空中戦闘のやり方、しかもかなり非常識なやり方の一つなのだけれど、それを自分なりに宇宙戦闘用に工夫してみたものだ。
その戦法は、敵集団の機体の下方向に向かって進み、ある程度距離をとったら機体の下方向から襲撃をかける。
その際は螺旋を描くように動きながら攻撃をしながら上昇し、少しでも広い面積に当たるように心がける。
この戦法は、上にいる敵の腹を目掛けて攻撃をするので、惑星上の対空兵器の名前をもらって『高射砲奇襲』と呼んでいる。
そうして奇襲が成功したら即座に戦域を離れ、ある程度引き離したら回頭して撃破に向かうというのが基本だ。
そしてこの戦法には、集団戦で使用すると有利になることがある。
奇襲に成功すると、腹を立て追って来ようとする奴がでてくる。すると当然僕の味方に一瞬でも無防備を晒すため、撃墜される確率が上がるのだ。
これはおなじ部隊に連続しては使えないけれど、敵集団を撹乱するには有効だ。
しかしこの『高射砲奇襲』は、わかる人が見ればわかるかもしれないけど、大抵は逃げているように見えるため、『逃げるな臆病者!』とか言われて味方から撃たれることがある。
なのでできるだけ乱戦・混戦になる寸前か、乱戦・混戦になった状態で実行するのがバレないコツだ。
今回は幸いにして味方に咎め立てされることはなかった。
そうして運良く敵集団の下方までやってこれたので、螺旋の動きをしながら上昇して3機を撃ち落とし、それに怒った敵が味方に撃たれて撃沈した。
開幕でなかなかの戦果が上がったが、戦闘は始まったばかりだ。
生き残るためには、情けないと言われようと卑怯と言われようと使える手は全て使うべきだ。
なんといわれようと、死んだら御仕舞いだからね。
反乱軍別動隊サイド:
反乱軍。いや、彼等の視点で呼称するならば革命軍となのる大船団は、首都惑星ハインを目の前にして大いに盛り上がり、代表者であるレビルトス・バーレントン伯爵による演説が行われていた。
『諸君!我々は大銀河帝国の正統にして歴史ある貴族として!貴族を
レビルトス・バーレントン伯爵は、この状況にかなり浮かれていた。
広いとはいえ田舎臭い領地しか持っていなかった自分が、この革命が成功すれば
そしてなにより、この革命が絶対に成功する確信があった。
『そしてなにより、我々には心強い味方がおられるのだ!』
その言葉と同時に、
その投影された人物は、先々代の皇帝陛下の弟・先代の皇帝陛下の叔父・今代の皇帝陛下の
『諸君。良く集まってくれた。君たちは現・皇帝であり私の甥の娘であるアーミリア・フランノードル・オーヴォールスに対する不満がある者達であり、現在の帝国の有り様を憂いてくれている者達だと理解し、歓迎する』
その公爵の言葉に、バーレントン伯爵を始めとした
公爵はさらに言葉を続ける。
『本来帝国民や植民地民というものは、勤勉に働き、身分の高い者を敬い、その富を喜んで献上するのが当然の
公爵が手をあげると、船団の背後に、首都惑星にのこっていた12ある中央艦隊討伐部隊の3・4・5・6・9・10の6部隊が姿を表した。
その光景に貴族達は歓声をあげる。
味方である公爵に、これだけの数の中央艦隊がついているのなら、革命は間違いなく成功したのだと。
しかし次に公爵が発した言葉は、彼等の歓喜の表情を一瞬で凍結させた。
『よって、その原因である貴殿らを殲滅する』
その瞬間、革命軍の全ての船から
反乱軍別動隊サイド:継続
何とか出来上がり。
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