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モブNo.84:『怖じ気づいたか下賎な傭兵共が!行け!我がマンタス子爵家の勇猛さをみせつけるのだ!全軍突撃!』

 そんな現状待機の最中、味方中央の部隊がある方向に、一部の敵艦隊から火線が走ったのが確認された。

 それを皮切りに、各所で戦闘が開始されると直ぐ様、

『傭兵部隊は今の状態のままで良いのでそのまま前進して戦闘を開始。敵にある程度損害を与えたら此方の合図で即座に転進・離脱しろ。その指示をだした後、補給が必要な船はそのまま補給に。他の船は暫くは一緒に付いていって、合図があったら再度反転。敵艦に向けて攻撃を開始しろ』

 との命令があった。

 どうやら『釣り出し』をやるらしい。

『釣り出し』というのは、まずこちらが攻め、相手が反撃をしてきたら、怖じ気づいたふりをして退却する。

 相手がそれで勢いづいて追っかけてきたところを、待ち伏せしていた部隊が叩くという集団戦闘での戦法の一つだ。

 この戦法は、相手を激怒させて冷静さを失わせるか、物凄く巧妙に引き込まなければ引っ掛かるものではない。

 が、相手が単純な人間だったり、戦術を知らなかったりした場合は話が違ってくる。

 さらに潜伏部隊となる第11艦隊は、ステルス機能があるらしく、傭兵部隊が攻めている間にそれを展開して配置に着くつもりらしい。

 ともかく僕らは命令どおり、前進して敵艦隊に攻撃を仕掛けた。

 幾つもの光線が飛び交い、破壊されたり、障壁(バリア)で弾かれたりした閃光が幾つも瞬き始める。

 僕の近くを光線が通り抜け、爆発の振動が響いてくる。

 時間にすればほんの10分もなかったはずだけど、まるで何時間も経過したと思っている時に、転進・離脱の命令があった。

 推進エネルギー枯渇(ガス欠)まであまり余裕がない連中はいそいで離脱していった。

 その様子を見た敵の指揮官は、

『怖じ気づいたか下賎な傭兵共が!行け!我がマンタス子爵家の勇猛さをみせつけるのだ!全軍突撃!』

 とでも言わんばかりに艦隊を進撃させてきた。

 ちなみに反乱軍はご丁寧にも家紋を掲げているため、検索すれば何者(だれ)かは直ぐにわかるようになっていた。

 相手に情報を与えるのは戦術的にも戦略的にもどうかと思うけど、此方に有利になるのはありがたい。

 まあこっちの第11艦隊だって旗艦にはちゃんとナンバーが入ってるんだから似たようなもんだけどね。

 そうして、僕達傭兵部隊を追ってきたマンタス子爵家の部隊が味方から離されたところで、第11艦隊司令官メイリングス・アーリーヘンジ少将閣下から指示があった。

『間抜けめ…。潜伏部隊一斉射撃開始。傭兵部隊は反転後敵艦隊への攻撃。逃げる奴は追わなくてかまわん!味方の砲撃には当たるな!』

 宇宙空間に何百本もの火線が走り船が爆発していく。

 逃げる奴は追わなくてかまわんとは言っていたけど、この状態じゃあ逃げれないね。

 そうして突出した敵部隊を軽く殲滅すると、

『我々第11艦隊はこのまま敵の穴に向かう。傭兵部隊は最初に補給した部隊が戻ってきたら順番に補給に向かえ。遠い順だ。戻ってきた部隊は本隊に合流せよ』

 今この第11艦隊の配下には、5つの惑星の傭兵が集められており、僕の所属する惑星イッツはその中で3番目になる。

 僕達より先に到着して補給を済ましているとはいえ、第11艦隊の進軍を見守りながら待機するのはなかなか申し訳なく感じるが、推進エネルギー枯渇(ガス欠)ビームエネルギー枯渇(弾切れ)のことを考えると、大人しく順番待ちするしかない。

 そのうちに補給を終えた連中が戻ってきて、第11艦隊の後を追っていった。

 そうして僕達の番になり、補給艦隊の指示にしたがって補給を終えると、第11艦隊のいる方向に進軍した。

 当然だけど、本来なら全ての部隊が綺麗に陣形を組み、一矢乱れずに行動しての戦闘をするはずが、今現在は全ての部隊が独自に戦闘を開始してしまっているわけだから戦場はかなりの混乱状態だ。

 原因は反乱軍側の一部の艦隊だけが発砲したこと。

 たったそれだけの事と思うかもしれないが、そんなことが戦場を左右することがあるから怖いんだよね。

 多分反乱軍側もこんなことになるとは思って無かったんじゃないかな?

 アーリーヘンジ少将閣下はそのあたりはきっちり理解して指示を出してるんだろうし。

 第11艦隊に追い付いてからは、アーリーヘンジ少将閣下の指揮の(もと)、やれ右、やれ左、やれ上だ下だと指示を飛ばされまくり、それにしたがっているだけで比較的安全に敵を落とすことができた。

 こちらは被弾はしているものの、宇宙の塵になった奴はまだいなかった。

 とはいえ、戦闘をするということは燃料・弾薬が減ると言うことで、それが無くなれば晴れて宇宙の塵の仲間入りになるわけだが、そのギリギリなところで敵軍の陣容から抜け出すことができた。

 疲労や消耗は向こうも同じ、いや、それ以上なようで、追いかけてくるようすはなかった。

 そしてある程度安全圏まで下がったところで、

『全部隊はこのまま補給用のコロニーに。被弾したものは修理用のコロニーに向かえ。おそらく敵軍はこのまま一旦惑星の衛星軌道上付近まで下がるだろう。

 コロニー到着後は指示があるまで出撃準備をしたままで待機しろ』

 との命令が下った。

 反乱軍側からのいきなり発砲から約3時間。

 何とか生き残ることができた。

 もちろんこれで終わったわけではないので、まだまだ気を抜くことは出来ない。

 まあ今回生き残れたのはアーリーヘンジ少将閣下のお陰ってのは大きいかな。

 出来るだけ味方の消耗を出さないように動いていた感じだった。

 とはいえ消耗させる時は容赦ないだろうなぁ…。



反乱軍別動隊サイド:第三者(かみの)視点


 惑星ガトハガのあるゾン宙域で戦闘が開始されていた頃、首都惑星ハインに集まるべく向かっている数多くの艦隊があった。

 今現在帝国には、正規軍人・傭兵・警察以外の全ての貴族・平民に対し戒厳令がしかれているにも拘らず、である。

 その全てが一部の貴族が率いる私兵部隊であり、ある目的を持って首都に向かっていた。

 この集団がなんのために首都に向かっているか?

 その目的は皇帝陛下捕縛と帝都占拠。そしてそれに伴う様々な利権の確保であり、つまるところ彼らは反乱軍の別動隊であった。

 その中の1人、オーレス・クルムレフス男爵は7代以上も前から()()があるレビルトス・バーレントン伯爵の命令で、大型戦闘艇(巡洋艦)1隻と中型戦闘艇(駆逐艦)4隻を中心とし、それ以外は無人砲撃艦だけという艦隊に、私兵と共に自分の家族を乗せ、首都に向かう大船団の中にいた。

 彼の領地惑星である惑星ルバはかなり辺境にあり、ここに来るまでにもかなりの費用がかかっている。

 本来なら来たくはなかったのだが、7代以上前から()()があるレビルトス・バーレントン伯爵の命令により来ざるをえなかった。

 そうしなければ、伯爵の手により領地の利益や人民の命を奪われかねないからだ。

 おそらく他にも、来たくはないが様々なしがらみにより来ざるをえなかった者は多数存在している。

 無論その逆で嬉々として参加している者も数多く存在していた。

 その大型戦闘艇(巡洋艦)の艦長室に、2人の人物がいた。

「あなた。本当にこのまま皇帝陛下に弓引くのですか?」

「やむを得まい。()()あるバーレントン伯爵の命だ。それに成功すれば、我が領地も潤うはずだ…」

 オーレス・クルムレフスは、妻アレリアの問い掛けに、自分を納得させるように返答した。

 その夫の返答に、妻アレリアは怒りを露にする。

「恩義といっても150年前。しかもあれは向こうが仕組んだ事である事が濃厚という話ではないですか!

 たとえ仕組んだことでなかったとしても、それを盾に理不尽な要求を押し付けるばかりではありませんか!

 その事も踏まえて皇帝陛下に謁見して陳情申し上げましょう!今上(きんじょう)陛下なら必ず聞き入れてくださいます!」

 妻アレリアは興奮した様子で夫にそう提案する。

 しかし夫である男爵は、深くため息をついたのち、諦めているその理由を語り始めた。

「男爵である私が陛下に謁見するには、謁見伺いの申請書を提出し、幾つもの審査をへて合格し、さらには順番待ちをへてようやく謁見が可能になる。

 それを過去に2回。その内の1回は私の祖父が、謁見伺いの申請書を提出したが不合格だった。先祖も結果は同じだったそうだ。

 そしてその不合格の通知が来た後に、領地で原因不明の災害が多発した。まるで示し合わせたかのようにな…」

「!」

 夫の説明に、その災害が起きた理由を理解した妻は言葉を失った。

 その時、2人の乗る船の前方に、美しく輝く首都惑星ハインの姿が見えてきた。


反乱軍別動隊サイド:終了

何とか完成…

戦闘描写は苦手です


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