モブNo.80:「ありゃまたやらかすな。焦ってやがる」
おそらく僕が犯罪者で、それをバーンネクストが説得なり逮捕なりをしようとしていた場合は、閣下一行は間違いなく僕を捕縛の方向に向かうだろう。
「彼とは高校時代の知人でして、軍に入れとしつこく勧誘されていたんですよ」
なので、まごうことない真実を話す事にした。
すると、大将閣下は僕の発言を信じてくれたのか、バーンネクストに視線を向け、
「昔は徴兵制だったが今では志願制だ。嫌がる奴を無理やり入れたところで戦果を上げてはくれんぞ?」
諭すように声をかけた。
「それを何度も言ってるのに聞いてくれないんですよ」
「おいおい。しつこい男は男女関係なく嫌われるぞ?」
それに乗っかってさらに発言すると、大将閣下は『どうしようもない奴だな』という視線をバーンネクストに向ける。
「しかしそれは「てめえの立身出世のために他者の生命を平気で使い捨てる奴も、男女関係なく嫌われるぜ?」」
その発言に対してバーンネクストが反論しようとするのを
バーンネクスト本人にそのつもりはなくても、他人から見れば自分の利益の為に、強引に入隊させようとしているようにしか見えないだろう。
そう言われて、バーンネクストは下を向いて黙ってしまった。
「じゃあ私はこれで失礼します」
これはチャンスだと思い、大将閣下に挨拶をしてその場を離れようとした。
「おう。部署違いとはいえ部下が迷惑をかけたな」
「いえいえ。では…」
やった、たすかった!
てっきり止められるかと思ったけど、あっさり帰してくれたのは有難いお!
しかしあれが『
お近づきにはなりたくないね。
別サイド:ジャック・バルドー・ブレスキン
俺は目の前にいる若い佐官を
プロバガンダ部隊を率いるだけあって見た目は良い。
たしか
だが人材スカウトには不得手だったらしいな。
「バーンネクスト少佐。強引な勧誘は敵を作る。あの民間人の敵意がお前にだけならともかく、軍全体に向いた場合、面倒なのはわかるな?」
「はい…」
自分でも下手をうったのは理解しているのか、余計な言い訳はしなかった。
この辺りは、自分のミスを認めなかったり他人に擦り付けたりする奴よりはマシだな。
「ならば金輪際ああいった勧誘は止めておけ。所属は違うが、上官からのアドバイスだ」
「承知いたしました…」
「よし。行っていいぞ」
「失礼いたします…」
「ありゃまたやらかすな。焦ってやがる」
こっちの忠告を一応は受け入れたみたいだが、あの分だとまたやるなあれは。
「理由の一つとして考えられるのは、リオル・バーンネクスト少佐はアーミリア・フランノードル・オーヴォールス女帝陛下の幼馴染みというやつです」
俺の副官のシュネーラ・フロス中佐が、
「なるほどな。手柄を立てて
「ちょっとお待ちを」
「名前はジョン・ウーゾス。傭兵ギルドの
何年か前に起きた有名な事件だから良く覚えている。
バーンネクスト少佐の顔を見てどこかでと思い、名前を聞いた瞬間に、目の前の
俺が被害者遺族だったら犯人のクソ教師は絶対に殴り殺してやったところだ。
「その事件は俺もよく覚えてるが、たしか生き残りもう1人は女だったよな?」
俺の記憶では生き残りは2人で、1人はあのバーンネクスト少佐。もう1人は女子生徒で有名人だったはずだ。
「はい。プラネットレーサーのスクーナ・ノスワイルです。今年度もプラネットレースでの賞金ランキングチャンピオンが期待されていますね」
「しかし、そのジョン・ウーゾスという名前は聞いたことがないな」
事件は良く覚えているが、その名前に聞き覚えがない。俺がボケていなければ、だが。
「当時のマスコミは、
マスコミって奴はなんともエグい事をするもんだな。
つまり、あいつの腕を知ってるのは傭兵の仲間とその2人だけってやつか。
傭兵としての名前は売れてはいないが、勧誘する価値があるって訳か。
「軽く調べてくれ。
「承知いたしました」
おそらく勧誘は無駄だろうから、仕事を頼む形にしてみるか。
別サイド:終了
嫌なやつと出くわしてから3日後。
ついにおやっさんから電話があった。
『届いたぜ』
その一言に僕は歓喜に震え、翌日に喜び勇んでおやっさんの店に向かった。
そこにあった
「まずは操縦関係の手直しだな」
「はい。場所お借り出来ますか?」
「おう」
以前の『パッチワーク号』は、イオフス社の『スリッツ』の中古をベースに様々な安い部品を探しだし、自分で7割ほど組み上げたときに行き詰まってしまった時におやっさんに出会い、色々教えてもらいながら組み上げたものだった。
そのとき僕がこだわったのは操縦系統だ。
自分の操縦の癖を把握し、僕が一番のパフォーマンスをできるように調整する。レーダー・防御面以上にこだわっている部分だ。
そしていま目の前にあるイオフス社の『ノルテゲレーム』は新品なので部品を調達して交換する必要はないけれど、操縦系統の改造・調整はしないといけない。
これをしないと僕の船ではない。
おやっさんに場所を借り、その作業を1人で黙々とこなしていく。もちろんおやっさんにチェックをしてもらうのは忘れない。
調整しては試験飛行、調整しては試験飛行を繰り返して、一番しっくりくるまで5日もかかってしまった。
その作業が終了してから、ようやく以前購入した高性能レーダーのフォログ社製『PKRE-88』の搭載や、追加武装の搭載、内装の設置なんかを開始する。
そうして3日かけて搭載や設置が終わっても、まだ使用する事は出来ない。
食料や寝具や救急箱や工具箱、パイロットスーツの予備に武器の予備、簡単な調理器具に食器、トイレットペーパーや歯磨き・石鹸などの衛生用品なんかも買い揃える必要がある、
それらがそろってようやく運用開始をする事ができるわけだ。
今回はこっちが先になりました
ようやく船が復活です!
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