モブNo.79:「私の母が親父さんと知り合いで、その頃からの付き合いなんですよ」
「戦闘艇用のレーダーを探してます。出来るだけ範囲の広いやつを」
「どのくらい行けるやつ?」
「最低でも20億㎞は探知できるやつがいいんですけど」
「20かあ。7年くらい前の最新型の一つ手前だね。いまだと28くらいまではいけるかな?最新型の新品がいい?」
「いや。実績のあるやつで25くらいのやつはないですかね?」
闇市商店街にある『
「そうだねえ…じゃあこれなんかどうかな?フォログ社製『PKRE-88』探査距離は26億㎞。基本機能は全て搭載。省エネかつ連続使用720時間だよ」
あっという間に、僕が欲しがっている品物を出してきてくれた。
それ自体は縦50㎝✕横70㎝✕高さ50㎝位のボックスで、見た目だけならそんなすごいものには見えないが、重さはかなり重い。
まあ、レーダーとしては標準的なサイズだ。
「お値段は?」
「これくらいかな。わりと安くしてるからこれ以上値引きは出来ないけどね」
その提示された値段は230万クレジットだった。
買えない額では無いけどなかなかの金額なのと、おやっさんにもレーダーを頼んでいるのもあって、即座に購入というのはためらわれたので、
「実は『ドルグ整備工場』でもレーダーを頼んでて、そっちの方が良ければそっちをのせる予定なんです。できれば
と、おやっさんにもレーダーを頼んでいる事を打ち明け、
「『ドルグ整備工場』ってビル・ドルグの親父さんのところ?」
「はいそうですが?」
「だったら大丈夫かも。さっきドルクの親父さんから『いいレーダーがないか?』って電話が来たんだけど多分貴方のを探してたんだと思うんだよね。ちょっと確認してみるよ。貴方の名前は?」
「ありがとうございます!ジョン・ウーゾスといいます。ドルグのおやっさんと知り合いだったんですね」
「私の母が親父さんと知り合いで、その頃からの付き合いなんですよ」
店長さんはそういうと、自分の
世間は広いようで狭いなあ…。
翌日にはゴンザレスに頼んで、内装品のあれこれを探してもらい、見つかったその日に代金を支払い、当日配達できるやつは配達をしてもらった。
おやっさんの所に置きっぱなしは心苦しいので、おやっさんの店の近くのレンタル倉庫を借りてそちらに配達してもらい、収納しておく事にした。
そんな船の内装は、船が届いてなおかつ自分に合わせたセッティングに変更してからになるので、その方がいいだろう。
そうして今日できる事を全部終らせたので、たまには居酒屋にでもいって、居酒屋メニューで晩御飯でも食べよう。
そう思って繁華街に行ったところ、かなり嫌なやつに出くわしてしまった。
すぐに
「以前あれほど親切に助言したのに、まだ軍に入隊していないようだね?」
僕を捕まえた嫌なやつ、リオル・バーンネクストは苛立った感じで僕に話しかけてきた。
「入るメリットがないからね」
僕は不機嫌全開で返答するけど、もちろん向こうが気にする事はない。
「アーミ…皇帝陛下に危機が迫っているんだ!今まで庇護を受けてきた植民地民なら、陛下に忠誠を捧げてお守りしようと思わないのか!?」
「僕は軍隊では働けない。君が言うところの植民地民だからね。手柄を立てても貴族や純帝国民に手柄は奪い取られるように出来ている。それはなんの役にも立っていないのと同じなんだよ」
一番最初に勧誘された時のやり取りと、ほぼ変わらないやり取りをまた繰り返した。
「だったら僕の直属の部隊に配属されるようにしておく。そうすれば…」
「それこそ何の役にも立てない自信があるね。君みたいな人気者の直属部隊ともなれば、僕みたいな異物をとことん嫌うだろう。役に立つとするなら君や部下がミスをしたときの身代りくらいだろうね」
「…」
僕の指摘に対して、バーンネクストは黙ってしまった。
どうやら部下の行動に予測がつき、本人は考えていなかったとしても、彼の上官や部下が僕を身代りにするであろうことは予測できたからだろう。
さらには、ポロッと話してしまった事に切り込んでみた。
「それに、皇帝陛下に危機が迫っているってなに?
先代・今代の皇帝陛下には感謝している国民は多いし、海賊やらテロリストやらに対しても軍は負け無し。何処に危機が迫ってるのさ?」
「一部の貴族が陛下を
そういうと腰にある銃に手を掛ける。
抜きこそしないが、本気なのがわかる。
少なくとも
「こう見えても君の『目』は買ってるつもりなんだがな」
「サイバーの義眼にはしてないんだけど?」
しかし最初から不思議だったんだけど、なんでこいつは僕の勧誘に躍起になってるお?
貴族出身で有能な人材くらいいっぱいいるだろうに。
仕方なく僕も腰の銃に手を伸ばそうとした時、
「何をしている?」
と、何者かが声をかけてきたので、僕とバーンネクストは思わず視線向けた。
そこには、バーンネクストと同じ帝国軍の軍服姿の集団がおり、そのなかで一番がガタイのでかい男がこちらを睨んでいた。
すると、その男を見たバーンネクストが弾け飛ぶように敬礼をした。
その男はバーンネクストの行動には一切反応せず、
「
と、笑いながらパンチを繰り出すジェスチャーをした。
「閣下。いいかげんな事を言わないで下さい」
すると横にいたクールビューティーな感じの女性が、呆れた感じで男をたしなめた。
そして男はバーンネクストに視線をむけ、
「お前さんの姓名と階級と所属は何処だ?ちなみに俺はジャック・バルドー・ブレスキン。階級は大将。所属は中央艦隊討伐部隊総司令官兼第1艦隊司令官だ」
そう自己紹介をした。
なるほどバーンネクストが弾け飛ぶように敬礼するわけだね。
以前のカイデス海賊団退治の時に作戦指揮官を務めたキーレクト・エルンディバー親衛隊長と同格の地位にある人で、同じく侯爵様でもあるはずだ。
「自分はリオル・バーンネクスト少佐であります!所属は惑星防衛艦隊・帝都防衛部隊所属、第18航宙部隊隊長であります!」
バーンネクストは改めて敬礼をし、自己紹介をした。
「たしかプロパガンダの部隊だな。軍の広告塔がこんなところで女をかけた決闘なんかするもんじゃねえぜ?」
ブレスキン閣下は、やれやれという表情で僕とバーンネクストを見つめてくる。
しかしその目の奥には、事情によっては僕にも制裁を加える意思があるのが理解できた。
数少ない安全枠の女性と、新しい軍の偉いさんの登場です。
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