モブNo.8:『キャプテン・ウーゾス。貴方には残念な報告があります…。私は…運命の方をみつけてしまいました…』
イキリ君の名前を変更しました
傭兵ギルド全体でも12人しかいない
まさかあんな有名人が出てくるとは思わなかった。
長身でイケメンなのはもちろん、『ワンマンフリート』『漆黒の悪魔』なんて異名がつくほどの実力者だ。
噂だと、乗ってる船はある造船所が試験的に製作したバケモノ船で、彼以外操縦できないらしい。
そんな彼がいるなら、今回のカイデス海賊団の基地襲撃のための橋頭堡確保の仕事はうまく行く可能性は高いだろう。
もしかすると、ハイリアット大尉は彼に協力を取り付けてから、今回の作戦を立案したのかもしれない。
それからすぐに作戦の説明が始まった。
まず、各惑星ごとに集合地点に時間までに集結。
その後、まず傭兵部隊が包囲してから、迎撃部隊を殲滅。
その後に軍の親衛隊が基地内に突入・制圧する。
作戦としては至極オーソドックスかつ使い古した戦法だ。
基地からの砲撃・迎撃部隊の抵抗も当然想定内。
もちろん傭兵の消耗する確率も。
それは別にいい。
傭兵はそんなことは覚悟の上で仕事をしている訳だし。
だが問題なのは、基地内に突入・制圧する帝国軍の連中だ。
本来なら、中央艦隊の討伐部隊や、惑星防衛艦隊が適任なのに、どうして親衛隊が主軸になっているかということだ。
帝国親衛隊は、帝国の長たる皇帝陛下のための部隊だ。
海賊退治に駆り出していい部隊じゃない。
にもかかわらず、主軸となって動くということは、一種の軍事的示威活動なのだろうと思いたい。
なのでもちろん腕利きの部隊が向かってくれるとは思うが、もし、
基地内に入ってないのに、どうやってそっちの邪魔をしたことになるお?
正直付き合っていられない話だ。
まあ今回は有名人がいるからなかなか擦り付けられないだろう。
戦力についても、ロスヴァイゼさんにヒーロー君もいるわけだし。
『このように、強力な援軍もそろいました。帝国の平和のために、この作戦を必ず成功させましょう!』
ハイリアット大尉は、芝居がかった口調でブリーフィングを終了させ、
『では、銀河標準時20:00までに指定の宙域に集合せよ!』
そして、ガタイのいい軍人の言葉で、作戦準備が開始された。
既に燃料と弾薬は満載してあるので、駐艇場から戦闘艇が次々と出発していく。
僕はもちろん最後の方に出発だ。
出発してから1時間程で、指定宙域にたどり着き、僕達傭兵はカイデス海賊団のアジトを包囲した。
そこには辺り一帯が、様々な戦闘艇でひしめき合い、まるで戦闘艇の見本市のようになっていた。
そのなかで異彩を放ってるのは、
アルベルト・サークルードの、船体全部が黒一色で、胴体の部分にデフォルメされた悪魔のイラストが小さく書いてあるだけの機体と、
イキリ君こと、ランベルト・リアグラズ君が
それだけ見ると、あの2隻がトップエースにしか見えない。
そしてその集団の後ろから、帝国軍親衛隊の艦隊が到着し、直ぐ様全艦艇に向けての通達があった。
『全将兵の諸君!私は銀河大帝国軍親衛隊隊長、キーレクト・エルンディバー!大将の階級と、公爵の爵位を持つものだ!』
画面には正に王子様だと言わんばかりのイケメンが登場した。
いまの皇帝の従兄弟だそうで、話によってはこいつを皇帝にしようなんて話が何処かで持ち上がってるらしい。
『凶悪なカイデス海賊団壊滅のための本作戦は、諸君らの双肩にかかっている!帝国のいや、世界の平和を脅かす存在を、必ずや壊滅に追い込んでやろうではないか!』
大将閣下の言葉に全員が盛り上がるが、一部の男達は『イケメン爆発しろ!』と、怨嗟の声をあげているはずだ。
ともかく、カイデス海賊団壊滅作戦は開始された。
カイデス海賊団のアジトは巨大な小惑星を改造した要塞だった。
つまり、数日前に捕まえたおっちゃん達の
これだけの数の船が近づいたのだから、もちろん向こうからは迎撃のためビーム発射口が姿を表した。
『ビーム発射口確認!』
僕はその報告を聞いた瞬間に機体を発射口からずらした。
バリアがあるとはいえ、消耗はおさえるべきだと思ったからだ。
ほかの傭兵達もなれたもので、ルーキー以外は軽々とかわしていく。
アルベルト・サークルードと、ロスヴァイゼさんにいたっては、ビームをかわしながら発射口を次々と潰していく。
さすが『漆黒の悪魔』と『意思のある超兵器』はやることが違う。
向こうもヤバイと思ったのだろう、小型の有人戦闘艇から、超小型の無人戦闘艇までがわらわらと現れた。
さすがに海賊船は出せないようだ。
さあ、お仕事お仕事!
そうして戦闘が始まってわずか30分。
すでに敵の戦闘艇の半分以上が壊滅していた。
主にロスヴァイゼさんが原因だ。
おおよそ人間には不可能な軌道を
さすがの『漆黒の悪魔』もかなわないようで、やってることは同じでも、ロスヴァイゼさんの1/3ぐらいのペースで、軌道も人間の範疇だ。
ロスヴァイゼさんに乗っているイキリ君こと、ランベルト・リアグラズ君は大丈夫なんだろうか?
しかしこれで、イキリ君は益々の注目株になったのは間違いない。
たぶん本人は気絶してそうだけど。
つか、絶対気絶するお、あんなの!
でもそのお陰で、こちらの被害は最小限に抑えられていた。
あくまでも最小限で、被害が無いわけではない。
それからさして時間もかからず、外に居た戦闘艇は全て撃墜され、砲門も沈黙した。
『よし!傭兵達ご苦労!あとは我々に任せてくれたまえ!』
キーレクト・エルンディバー大将閣下の号令と共に、制圧部隊がアジトに潜入していく。
あとは、アジトから脱出してくる連中がいたら、捕縛なり撃墜なりすればいい。
それがなければ、あとは終了するまでのんびりしていればいい。
僕は、ボックスにいれておいたプラボックスのコーヒーと、買ったばかりのラノベを取り出した。
その時、ロスヴァイゼさんから
ろくでもない事だろうとは思うが、とりあえず出てみることにする。
「はい。もしもし?」
するとロスヴァイゼさんは、深刻そうな表情で
『キャプテン・ウーゾス。貴方には残念な報告があります…。私は…運命の方をみつけてしまいました…』
やっぱりろくでもない事だった。
だが予想はできていたので、
「アルベルト・サークルードですか?それともキーレクト・エルンディバー大将閣下ですか?」
と、答えたところ、
『そうよ!貴方以上に素晴らしく魅力的な方が2人も居るなんて信じられないわ!私に乗ってもらうのはあの2人のどちらかしかないのよ!貴方は早いうちに私に乗り換えておけばよかったんですよ。残念でしたね♪』
満面の笑みを浮かべながら、尻軽女のようなセリフを吐いた。
いやあ、乗り換えてても絶対同じこといったでしょ貴女は。
やっぱり断っておいて正解だったお。
『ねえ!どっちがいいと思います?アルベルトさんは戦闘艇乗りの
とりあえず僕は、はしゃぎまくるロスヴァイゼさんをそのままにして、ラノベを読み始めた。
多分長くなるから、この対応で間違いないだろう。
あとは、制圧部隊の作戦終了を待つだけだ。
『漆黒の悪魔』の元ネタは、
第二次世界大戦時のドイツのエースパイロットのエーリッヒ・ハルトマンの異名の一つ『黒い悪魔』からです
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