モブNo.77:「汎用型戦闘艇の防御重視?そりゃなかなか難しいな。最近はあまり扱ってないからな」
もしかしたら、条件の合う船を知っているか持っているかしているかもしれないからだ。
「汎用型戦闘艇の防御重視?そりゃなかなか難しいな。最近はあまり扱ってないからな」
「最近はスピードと火力重視っすからね」
修理工場の親方とそのお弟子さんっぽいのが、僕の希望を聞いて頭を悩ませ始めた。
「前はどんなの使ってたんだ?」
「イオフス社の『スリッツ』です」
かなりの改造やパーツ交換はしていたが、ベースとなったのは、かなり古い汎用型戦闘艇だ。
「あー結構前に生産が完全停止した奴か」
「修理用の部品とかエンジンなんかも、最近完全撤廃したっすよね」
「そうなんですよ…近い奴ないですかね?」
「たしか先月出たカタログに近いのがあったような…」
「本当ですか?」
そういって親方が持ってきてくれた
「条件にあうのは…やっぱりイオフス社の『ノルテゲレーム』ってやつですかね」
「『スリッツ』の後継機みたいっすね。つか、防御重視のやつがこれ含めて7タイプしかないのか」
「汎用艇もスピードと火力重視で、こういう固くて重いのは護衛用の一部用途として残ってる感じだな」
カタログには、完全バランス型・火力重視・スピード重視・特殊ギミック型などは1種類で50~200タイプ以上揃っているのに、僕の希望する防御重視の汎用艇はあまりにも数が少ない。
はっきりいって7タイプあるだけマシという奴だ。
そのなかで、イオフス社の『ノルテゲレーム』は僕がベースに使っていた『スリッツ』の後継機で、外見にはほとんど変化はなく、『スリッツ』より少し船内が広く、性能全体が底上げされていた。
価格も今回の賠償金だけでなんとかなりそうだ。
だが重要な問題がある。
「ここには…ないですよね?」
「正式に都市が機能し始めればともかく、今は学術調査基地だからな。帝国首都のハインなり政令指定惑星ならあるかも知れねえな。後はメーカーに注文する位だな」
なら問題はなさそうだ。僕が本拠地にしている惑星イッツは政令指定惑星だからね。
親方とお弟子さんにお礼を言って工場を離れてから、そう言えば今回の事態を報告してなかったのを思いだし、すぐさまローンズのおっちゃんに電話をした。
『もしもし?』
「あ、もしもし。ウーゾスです」
『よう。どうした?なんかミスでもしたか?』
「実は…」
僕は今回あった事の全てを話した。
『なるほど…。そりゃ災難だったな。だが話を聞くかぎり、向こうが責任を問わないってんならそれでいいだろう。実際お前に責任は無いんだからな。賠償金もきっちり貰ってこい』
そういってくれると非常にありがたく頼もしいが、同時に嫌な想像もしてしまう。
「また
『
「そうなりそうなのがいるんだよ…」
僕に釘を指してきたあの女子学生の事が頭をよぎる。
『まあ…あれだ。すぐに仕事が終るんだから、終わったら早いとこその場を離れるのが一番だ。おっと、こっちも仕事だ。じゃあ、気を付けてな』
そういってローンズのおっちゃんは電話を切った。
まあ、もし最悪の事態になったら教授に相談するかな…。
そうして夕方にはまた教授達を迎えにいき、今日の仕事は終了した。
ちなみに事件があった日の時点で契約期間が残り7日ほどだった。
それから4日間は1人でサバイバル。
仕事を再開した今日を含めても2日、つまり明日で契約期限が来てしまうことになる。
仕事をしてなかった4日分くらいは延長しても構わないと教授に打診しようとしたけど、本来の専属パイロットが戻って来たので、これは間違いなくお役御免になるだろう。
ちなみに専属パイロットはかなりのイケメンで、教授の学生時代の先輩だそうだ。
あの女子学生は、その人には噛みつくどころかキラキラした表情を向けている。
本来の専属パイロットの人に罪はないけど、恨めしく思ってしまうのは勘弁して欲しい。
そして翌日。
最後の仕事が終了すると、テーズ教授からの事件に捲き込まれた事への改めての謝罪とねぎらいの言葉をいただいた後に、教授・大学・博士の息子からの賠償金、有り難いことにかなりの額(900万クレジット)。を、
ちなみに仕事自体の報酬と保険金はギルドで受け取る予定だ。
なんならこのまま直ぐにこの星を離れたかったが、ここから惑星イッツに直通する便はないため、いくつか乗り換えが必要だったりするわけだが、本日はもう便がないので出発は明日の朝ということになる。
今日は最後の日ということで飲み会に誘われたがもちろん遠慮した。
会話に入れないし、なによりあの女子学生が怖くてたまらない。
でもまあホテルにいる時に、あの女子学生から『賠償金を返せ』と電話や突撃がなかったのは有り難かったかな。本当に。
翌朝は、教授達が発掘現場に向かうのを見送ってから、軌道エレベーターで
1ヶ月もいないのだからと冷蔵庫を空っぽにしていったので、食料がないからだ。
そうして買い物を終えてから部屋に帰り、掃除と風呂、そしてアニメの鑑賞をしながら食事をする。
そうしてのんびりと一晩を過ごした翌日、傭兵ギルドに足を運んだ。
ギルドは相変わらずの喧騒だったようで、なにかイベントがあったようには感じない。
どうやらゲルヒルデさんは現れていないようで、僕はほっと胸を撫で下ろした。
そしていつも通りローンズのおっちゃんのところに向かうと、
「よう。大変だったな」
と、陽気に声をかけてきた。
「あんたの紹介した仕事で大変になったんだけど?」
「そういうな。俺だってあんなことが起こるなんて予測できるかよ」
「まあそうだけどね…」
咎め立てはするが別に本気ではない。
不測の事態はどんな仕事でも発生する事があり、出くわした場合はその依頼を受けた自分の自己責任だ。
ローンズのおっちゃんもそれをわかっているので、特に気にする事もなく仕事の話を始めた。
「じゃあまずは正規の報酬と船の保険金だ」
「結構な額になったねえ」
「賠償金も含めるとかなりの額になったな」
正規の報酬は1ヶ月で50万。さらに保険金で250万。
ここに賠償金を含めると、全額で1200万クレジット。
奇しくもこの仕事をうけるきっかけになった仕事とほぼ同じ額だった。
なので思わず周囲を見渡してしまうが、当然ピンク頭の姿はない。
なので安心して報酬と保険金を
こうして金銭面は問題なくなったが、問題はまだ残っている。
「問題は代わりの船の入手かな。カタログで良いのがあったけど、代理店で扱ってるかどうか…」
惑星イッツは政令指定惑星だが、メーカーが不人気な品を置いているかどうかだ。
「まあそのあたりは運だが…暫く休んでゆっくり探したらどうだ?」
流石に今回の事を気の毒に思ってくれているらしい。
でもあまり休みすぎるとだらけてくるので、精々今回失った本やデータカードを買うくらいにしておくつもりだ。
また大金がはいりましたが、今回は仕送りは出来ないかな?
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