モブNo.7:『ではただ今より、ブリーフィングを開始する!きちんと聞いておけよ傭兵ども!』
嫌なやつにでくわした昨日は、やっぱりストレスが溜まったのだろう。
サイトのチェックだけといいながら、動画配信なんかを閲覧してたら午前2時になってしまい、それから寝て目を覚ましたら既に正午になっていた。
「昨日行きそびれたから、今日はいっておかないとな…」
今日は、昨日行くはずだったアニメショップ『アニメンバー』で、取り敢えず続きの新刊と同人誌の購入。
アニメのデータカードと新しく読む本の開拓なんかをすることにしよう。
そうそう、古い作品の発掘もしたいから『せいざばん』にも行っとくか。
「昼飯は外で食べるかな」
顔を洗いながら昼食の店を考えはじめる。
もう少し早く起きていたら昼食を作ってもよかったけど、出かける予定があってこの時間なら、掃除を済ませてから昼食の時間帯をずらして食べにいった方がいい。
そんなことを考えながら、部屋の掃除を始める。
最低限、汚部屋にはしないことを目標に必ず掃除だけはするようにしている。
僕の住んでいるこのマンションは、傭兵相手に専門で貸しているところで、家賃の支払い期日や、部屋のカスタマイズなど、色々と融通してくれる。
ただし、家賃未払い状態で、連絡がないまま6ヶ月が経過したら、死亡と判断され、部屋の中にあるものは全て売却・処分されるという契約になっている。
家族がいて、連絡が付いた場合は要相談らしい。
船は、傭兵ギルドの
僕が借りているのは間取りが1LDKで、風呂・トイレ有りの物件。
他には、2LDKや3LDKタイプの部屋がある。
僕の部屋には来客なんか来るはずはないので、リビングにベッドを置いている。
唯一の部屋は、漫画・小説・同人誌・アニメデータカードを棚にきっちりと収納した書庫兼PC部屋になっている。
いかがわしいゲームは、やってると虚しくなるので最初に買ったひとつだけ、フィギュアは並んでると怖いので買わない主義だ。
だから、PC部屋以外は意外と普通の部屋だったりする。
男やもめで少し散らかってはいるが、汚部屋には絶対しない。
というかしてはいけない。
以前汚部屋にして住んでた奴がいたのだけど、何回忠告されても改善しなかったので、そいつが仕事にいっている間に、部屋の中のものを全て売り飛ばされたという実績がある。
ちなみに契約書にもちゃんと記載してあるので、文句は言えない。
掃除も終わらせ、服も綺麗なものに着替えて、いざアニメショップ『アニメンバー』へと向かった。
繁華街にある『アニメンバー』の入っているマシトモビルには、他にも、様々なアニメやホビーやトレカやゲームの店舗がひしめき合っていて、『せいざばん』もこのビルに入っている。
お昼時なのもあって、『アニメンバー』の店内は客が少なかった。
ちなみに、店員はアンドロイドとヒューマンが半々で、コスプレをして接客をしていたりする。
アンドロイドは、身体のパーツを組み替えたりして、キャラそっくりになっていたりする。
いまは『鬼殺しの
僕は自分の好きなラノベ・漫画・同人誌の新刊を探して購入し、『せいざばん』で古い作品を探して発掘を楽しんだあと、軽くいろんなフロアを、そぞろ歩きしてから、マシトモビルを後にした。
それから、昼食時間をすぎて多少は人が少なくなったファーストフードで昼食をすませると、そのまま一回家にもどり、傭兵ギルドに向かうことにした。
その理由は、食事中に、特別召集令状・通称『赤紙』が届いたからだ。
これは、傭兵ギルドがギルド員である全ての傭兵に発布することができるもので、現在別の仕事を請け負っていたり、怪我・病気・女性なら妊娠・出産・戦闘艇の長期修理・喪失などの理由がないかぎり、応じなければならない。
どうやら今回はポウト宙域全体の傭兵ギルドに発せられたらしい。
これを無視したり拒否したりするとそれなりのペナルティがある。
なので、すぐに出発できる準備をして、ギルドにやってきた。
「ちーっす」
「よう。遅かったな」
「ご飯食べてる時だったからびっくりしたっす。で、どういう理由で赤紙が?」
「詳しくは30分後にあるブリーフィングで軍から聞かされるだろうが、どうやら大物の海賊退治の露払いをしろって話だ」
ローンズのおっちゃんに、今回の召集の理由を尋ねたところ、ものすごく嫌な返答が返ってきた。
それから30分の後に、召集された傭兵達は式典なんかに使われるホールに移動させられた。
そこには、あのイキリ君やヒーロー君の姿もあった。
ということは…
『お久しぶりですねキャプテンウーゾス♪』
「やっぱりきたか…」
イキリ君所有の戦闘艇であり、古代文明の遺跡から発掘された意思のある超兵器・小型戦闘艇WVSー09こと、ロスヴァイゼさんから通信が来た。
ブラックリストにしているはずなのに、なぜ繋がったかは考えたくない。
『私に乗り換える話、考えていただきましたか?』
僕の使っている
「それは前に断りましたよね?それにここにいるってことは、あのイキリ君とまだ一緒にいるんでしょ?」
僕が自分の意思を伝え、彼女の現状を指摘すると、
『泣きつかれましたから一緒にいてやっていますが、いつでも見限れますよあんなの』
と、なかなかに鬼畜な発言が返ってきた。
やっぱりこのロスヴァイゼさんは信用できない。
イキリ君より能力が高いから僕に乗り換えるということは、僕より能力が高い奴がいれば、そちらに乗り換えるということだ。
『ではただ今より、ブリーフィングを開始する!きちんと聞いておけよ傭兵ども!』
そんなことをしているうちに、前方の巨大な投影ディスプレイにガタイのいい軍人が現れ、僕達傭兵を怒鳴り付けた。
現実に目の前にいたなら、何人かは喧嘩を売っていたかも知れない。
作戦内容はこいつが説明をするのかと思っていたのだが、その予想は裏切られた。
『では、私の方から説明を』
ガタイのいい軍人の代わりに壇上にあがって説明を始めたのは、リオル・バーンネクストと同じくプロパガンダを務めている有名人、プリシラ・ハイリアット大尉だった。
帝国軍でも1・2を争う有能な将軍として名高いラスコーズ・ハイリアット大将閣下の娘で、帝国親衛隊の副長を務めている。
黒髪に紫の瞳に白い肌、おまけに美人でスタイルもいいと来れば、大概の男は見とれてしまうだろう。
さらには、作戦指揮能力と兵站維持能力においては父親以上との呼び声が高い。
プロパガンダにはうってつけの人材だ。
『今回傭兵の皆さんへの依頼は、カイデス海賊団の基地襲撃のための橋頭堡の確保です。凶悪で強大なカイデス海賊団を殲滅させるためには、どうしても今回の作戦が重要なのです』
そのハイリアット大尉は、真剣な表情で説明をしている。
『私、あの女嫌いです』
そのハイリアット大尉に対して、ロスヴァイゼさんは悪態をつく。
実はハイリアット大尉に対して、ロスヴァイゼさんのような反応をする人達は確かにいる。
なんというかハイリアット大尉は、軍人として振る舞ってはいるけれど、なんとなく保護欲を誘うような雰囲気があり、頼み事が上手で人あしらいも上手。
しかもそれを、テクニックとしてではなく、産まれながらにして身につけている感じがする。
悪くいえば、生まれながらにあざとい女性なのだ。
おそらく本人は真面目にやっているだけに、なんとも不憫な話だ。
まあ僕には縁もゆかりもない人だし興味もないけど。
『なお、今回の作戦実行にあたって、強力な援軍にきていただきました』
ハイリアット大尉が視線を向けた先には、特注品らしい黒いパイロットスーツ姿の男がいた。
『傭兵の方たちならご存知でしょう。全宇宙にひろがる傭兵ギルドという組織において、たった12人しかいない
紹介された黒いパイロットスーツ姿の男は、軽く片手をあげた。
ランキングがすごいことに…
ありがとうございます!
2日は休むところを半休にされてしまったモブ傭兵
アニメショップの名前はつっこまないでいただきたく…
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