モブNo.66:「ともかく、一度は家に帰って来なさい。大丈夫!近所のババア共はだまらせたから!」
その話が終わると同時に、報酬支払いの手続きが終了したので、そのまま銀行に向かうことにした。
その理由は、前回の失敗の時の戦闘機を売り払った金がリストコムにはいったままなのと、両親への仕送りをしてなかったからだ。
つまり今現在、生活用の金とは別に1200万クレジットもの金が手持ちにあると言うことだ。
気がついたからには、出来るだけ早いとこ銀行に入れておきたい。
その銀行に向かう途中、不意に電話がかかってきた。
誰だろうと相手を確認したら、父さんからだった。
「もしもし父さん?どうしたの突然?」
『お前、今どこだ?』
「ギルドで仕事の色んな手続きが終わって、家に帰るところだけど?」
『ギルドってことは今いるのは惑星イッツだな?だったら会わないか?実は母さんの姪っ子の結婚式に呼ばれてイッツに来てるんだ』
そう言われてよく見れば、父さんの格好が作業着や普段着ではなく背広だった。
母さんの姪っ子とは、子供の頃には会ったのかもしれないがはっきりいって記憶も面識もない。
当然だが父さんと母さんは面識があるのだろう。
ともかくせっかく来ているなら久しぶりに会うことにしたいと思う。
「あー。そっちは今どこにいるの?」
『今ちょうどパルベア駅だ』
パルベア駅は傭兵ギルドから一番近い公共交通機関だ。
「近いね。だったらそこの近くにある『ペガサスメテオ』ってファミレスで落ち合うのでいい?ちょっと用事も済ませてくるから40分ぐらいかかるかもだから、遅れるようならまた連絡するよ」
『わかった。またあとでな』
父さんからの電話を切ると、そのまま銀行にいき、前回の買取額と今回の依頼料との合計報酬1200万クレジットの3分の2、800万クレジットを口座に入れてから、約束したファミレス『ペガサスメテオ』にむかった。
僕がファミレスに到着すると、父さん達は既に到着してソファー席に座っていた。
「お待たせ」
「久しぶりねジョン。元気そうで良かったわ」
「母さんは…痩せたね…」
「カラオケと毎日の畑仕事のおかげよ!」
久しぶりに会った母さんは、別人のようにほっそりしていた。
実は痩身治療を受けたんじゃないだろうか?
でもまあ、健康的になったんだから問題ないだろう。
それよりも大事な話かある。
「そうだ父さん。借金の方はどうなったの?」
「ああ、おまえが送ってくれた金で、元金利息含めて全て返済できた。借用書もこのとおりだ」
父さんが見せてくれた借用書は、間違いなく本物だった。
というか父さん
「完済できて良かったよ。変な横槍もはいらなくて良かったね」
金融機関がまともだったとしても、濡れ衣を着せた連中が難癖をつけてくる場合もあるので警戒していたのだけれど、それもなかったのはありがたい事だ。
「お前には迷惑をかけたな。大学も諦めさせてしまった」
父さんはそういって申し訳なさそうな顔をする。
「でもまあ、おかげで稼ぎのいい職につけたからね。そこは有難いよ」
これはたらればだけど、もし僕が大学を出ていたとしても、ろくな就職先はなかったと思う。
条件のいい所は貴族が押さえているだろうし、企業によっては見た目採用をしているところも多いし、人材を育てず即戦力だけ欲しがるところや、激務を押し付ける癖に給料が激安だったりするところも多々ある。
なにより僕にはアピールポイントがなかったしね。
それにくらべれば、容姿関係無しの完全実力主義で、ハイリスクだがハイリターンの傭兵は有難い職場だろう。
ある意味、高一の時の事件は僕に将来を指し示してくれたといえる。
そんなことを考えていると、いつの間にかチョコレートパフェを注文していた母さんが、
「ともかく、一度は家に帰って来なさい。大丈夫!近所のババア共はだまらせたから!」
と言った。
近所のババア共と言うのは、僕の仕事が傭兵だと聞いて、色々悪口を広めてくれた人達で、僕がその話を聞いて実家に行くのを避けている原因だ。
顔すら知らないけど。
そのババア共を黙らせたというのは実に気になった。
「なにやったの?」
「『うちの息子は月に3回も仕送りをしてくれるんですよ。しかも今月は1回に200万も送ってくれたんですよ』っていったら、即座に掌返してきたわ!」
それって毎回おんなじ額じゃないのはしってるよね?
なんで毎回そんな額をもらってるみたいな感じだしてるわけ?
多分母さんも腹に据えかねていたんだろう。
それに僕としてもあんまり強くはいえない。
なぜなら、今から渡す分はさっきの話に拍車をかけることになるからだ。
「あーじゃあこれその仕送り。2回分の報酬をあわせた額の1/3にしてあるから」
「もう借金はないんだぞ?」
僕が
借金も無くなったのに何故だ!といったところだろう。
「僕の仕事のモチベーションにつながるから受け取ってよ」
しかし当分は止めるつもりはないので、
「…わかった。ありがたく受け取っておく」
父さんはため息をつき、諦めた感じで受け取ってくれた。
その金額は、1155万と45万の合計1200万の3分の1の400万クレジットだ。
「…すごいわね。これで1/3なの?」
その金額に母さんはかなり驚き、
「たった2回の仕事で私のサラリーマン時代の年収を軽く越えるのか…」
父さんは落ち込んでしまった。
たしかに報酬はいいけど、その代わり命懸けだからね。
それから軽くフリーズした両親を再起動させ、久しぶりの家族での食事を楽しんだ。
食事が終わると同時に、母さんがまたパフェを頼んだので、そのタイミングでちょっとトイレにいった。
あれはすぐにリバウンドするね。
そうしてトイレから出て、通路に出たところでパーカーでフードを被ったお客が店に入ってきた。
真っ昼間で雨も降ってなければ、寒い季節でもないのにフードを被るのには、なにか理由があるんだろうななんて考えていると、その客が僕の方向をじっと見つめてきた。
すると不意に腰を落とし、パーカーのポケットから手を出した。
その手には銃が握られており、そのフードの端からは一瞬ピンクの髪が見えた。
それを見た瞬間、僕はトイレの方に身を隠した。
それと同時に轟音が響き、近くのソファーが破壊され、店内には悲鳴が響き渡った。
席に人が座ってなかったのが幸いだった。
刑務所なり精神病院なりに収監されたはずのコイツがどうしてこんなところにいるのか?
色々気になったが、僕は壁の影に隠れつつ、
「逮捕されたんじゃなかったでしたか?」
と、
「あんなのは不当逮捕よ!貴族の男爵令嬢の私が庶民から金銭を上納させたり、銃で撃ったからって罪になるわけないでしょう?」
ピンク頭は、さも正当な自分の権利を主張しただけといった感じだった。
「それで僕を襲いにきたと?」
「ここに入ったのは偶然よ。でもちょうどいいわ。男爵令嬢たる私の命令に背いた下民を粛清してやるわ!あの生意気な
あれは間違いなく話し合いは出来ないよね。
あと
ともかくピンク頭が僕に気を取られている内に、店員さんがお客さん達を逃がして、警察に連絡をしてくれるとありがたい。
が、ピンク頭の様子から見るにこのままだと他に被害
が出そうなので、
僕は
ピンク頭再登場。
母方のいとことは、子供(小1)の時に母方の祖父の葬儀であったきりです。
それ以降はモブが嫌がって行かなかったので
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