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モブNo.57:「あー。私に女性に縁がないのは納得ずみなんで、止まってくれますかね?止まらないなら撃ち落としますよ?」

ハンズ・ブラザーズ(ふたりぐみ)の船にビーコンを取り付ける事になんとか成功し、サービスエリアを出た二人組の後を距離を空けてついていった。

幸いそれ以降はどこにも寄らず、あの小惑星に向かっていった。

連中が小惑星に接岸するために速度を落とした瞬間を狙って、連中の船の噴射口(ノズル)を破壊するべくビームを発射した。

しかし当たる直前に、向こうの機体が不意に動き、外してしまった。

もちろん二人組は即座にエンジンを吹かして逃亡を図った。

無駄だとは思うが呼びかけてみるかな。

「海賊の『ハンズ・ブラザーズ』だな!大人しく捕まった方がいいと思うけど?!」

『ふざけんな!俺達は泣く子も黙る『ハンズ・ブラザーズ』だぞ!誰がテメエみたいなオタク野郎に捕まるかよ!』

『俺達は女の方からよってくる。お前みたいなオタク野郎には一生縁はないだろうけどな!』

ゲラゲラと下品な笑いをあげながら、解りやすい大言壮語(たいげんそうご)を吐く。

傭兵ギルドじゃ、兵士階級(ポーンランク)の依頼になってるのに…。

「あー。私に女性に縁がないのは納得ずみなんで、止まってくれますかね?止まらないなら撃ち落としますよ?」

『撃ち落とせるもんならやってみな!』

じゃあ遠慮なく撃たせてもらおう。

しかし、小惑星に接岸する時同様にかわされてしまった。

『テメエ!危ねえだろうが!』

「やってみろっていったのは自分でしょうに!」

『兄貴の腕はすげえんだぞ?さっきもくしゃみしながらテメエのビームを避けたんだからな!』

あー、なるほどね。

何となく自分に通じるところがあって親近感が湧くけど、捕まえないといけないので、

「じゃあ当たるまで撃てばいいですかね?」

数撃てば当たるとばかりに何発かビームを発射したが、かわされてしまった。

『うわっ!こらっ!止めろテメエ!』

そうして彼等は全力で逃げた。

どうやら向こうの方が多少速いらしく、離されないようにするのがやっとだった。

ときおりビームで牽制も兼ねて噴射口(ノズル)を狙うも、多分幸運で、器用に避けられる。

そうして30分ほど追いかけ続け、今度こそと思ってトリガーを引いた瞬間に、中型戦闘艇、いわゆる駆逐艦らしき船の残骸が僕と連中の間に入ってきた。

ビームはその残骸に命中。

その残骸を避けるべく、減速と方向転換を余儀無くされた結果、連中に距離を空けられた。

すぐに残骸を回避し、連中の逃げた方向にむかった。


しかし5分ほど進んだところで、とんでもない事態になった。

なぜか艦隊に出くわしてしまったのだ。

『そこの小型戦闘艇に告げる!これより先はアルティシュルト・ビンギル・オーヴォールス公爵閣下の直轄領地だ!これ以上進むようなら不法侵入者として排除する!』

まあ絶対に勝ち目はないので、メインエンジンを止めて船を停止させた。

「こちらは傭兵ギルドの者です。現在海賊を追跡中で、その海賊が公爵様の領地に侵入した可能性がありまして」

『今のところ発見の報告はない。発見した場合は我々が処理する』

応対しているのは明らかに貴族な中年の男で、多分この艦隊の司令官だろう。

僕を汚いものでも見るように睨み付けていた。

まあこんな些細な事に腹を立てる必要もない。

「了解しました。では捕縛・撃沈をしたら、警察か傭兵ギルドに御一報くださるとありがたいです。それと、必要なら海賊の情報もお渡し致しますが…」

『よし。寄越せ』

そうして情報を渡すと、

『うむ。もういいぞ。さっさと行け』

シッシッ!と、犬を追い払うような仕草をされ、

「はい。では失礼致します」

なんとか無事に解放された。

ハンズ・ブラザーズ(あのきょうだい)が公爵の手下ってことはないよねえ。

だとしたら余りにもお粗末だし。

まあ、公爵の指示だとしたら切り捨てぐらいはするだろうし、深入りは止めておいた方がいいかな。

取り敢えずギルドに連絡して、あの小惑星を買い取って貰うかな。

『はい。傭兵ギルドイッツ支部のローンズだ』

「あーもしもし。騎士階級(ナイトランク)のジョンです。実は『ハンズ・ブラザーズ』を追跡中だったんだけど、連中がアルティシュルト・ビンギル・オーヴォールス公爵閣下の直轄領地に逃げ込んでしまって追跡不可能になっちゃって」

『公爵領地?おいおい。まさかあんなザコが公爵と繋がりがあるのか?』

「そこまではわからないけど、公爵閣下の私設軍隊に通せんぼされたからね。おとなしく引き返したよ」

『ごねても、下手すりゃ命が危ないからな。賢明だ』

「依頼は失敗。でも連中のアジトは押さえたから買い取りよろしく。これ座標ね」

『了解した。気ぃつけて帰ってこいよ』

「うーす」

依頼は失敗だけど、公爵家という不可抗力のためにペナルティにはならないし、あの小惑星を買い取ってもらえばそれなりの額にはなるだろう。

しかし。通信を切った次の瞬間、危険信号(アラート)が鳴った。

慌てて舵を切ると船体のギリギリをビームが通っていった。

マルチカメラで確認すると、グラントロス社製の戦闘艇、G-22『バステス』が2機。

それぞれ白地に赤と、白地に青のカラーリングで、船体には紫で書かれた犬の顔のエンブレムがあった。

彼等が『ハンズ・ブラザーズ』でないのは間違いないが、オーヴォールス公爵閣下と関係があるかと言われると証拠がない。

そうしているうちにも、2機は互いに上下左右を入れ換え続ける、曲芸飛行のような軌道をしながら接近し、断続的にビームを撃ってくる。

相当な腕がないとできない芸当だ。

冗談じゃないお!

公爵領に入ってもないし、ヤバいものを見た記憶もないのに殺されちゃたまらない!

取り敢えず取れる手段の一つは、アジトの小惑星まで逃げること。

そこまでいけば回収の船が来ているかもしれない。

でもまあ多分させてはくれそうにないよね。

燃料も『ハンズ・ブラザーズ』を追いかけたせいでかなり減っているだろう。

だったら、動けなくしておいてからのほうが安全だ。


とはいったものの。

ビームは雨あられと飛んでくるし、離れたり重なったりして動きが読みにくいったらない。

今のところなんとかかわしているけど、このままだと燃料がジリ貧になる。

すると2機はいきなり左右に分れ速度をあげた。

挟み撃ちをするつもりだなと感じたので、僕は咄嗟に機体を右に倒し、機首をあげ・機体下部にある姿勢制御用のスラスターを一瞬だけ全力噴射・メインブースター停止を、タイミングを合わせて同時に行う『撃墜騙し』を利用して右に行った青い方に機首を向け、だいたいの位置にビームを放った。

牽制になって挟み撃ちを崩せればと思ったが、偶然にも方向転換中の青い方の胴体と噴射口(ノズル)に当たって、青い方は方向転換をしきれずにそのままの方向に進んでいった。

そしてそのまま大きく旋回して方向転換を終えた赤い方の背後になんとかまわりこみ、噴射口(ノズル)を破壊できた。

そして降伏勧告をしようとした時、彼等のコクピット部分からカプセル状のものが(あらわ)になった瞬間、ものすごい速さで小惑星のある方向とは逆方向に射出された。

どうやら『高速射出式脱出カプセル』を搭載していたらしい。

たしか結構なお値段の代物だったはずだ。

取り敢えず命の危機は去った。

この2機は、証拠と戦利品を兼ねて曳航していくことにしよう。

たしかロープとフックはあったはず。

船に乗るときは常に宇宙服を着ているから、こういう時に手間がかからなくていい。

それにしても、青い方がやられた後赤い方が青い方に無防備に近づいて行ってくれて助かった。

そのおかげでなんとか生き残る事ができたからね。

新たなるネームド候補の登場です


関係ない話ですが…

ドラッグストアに行った時に、色々なメーカーの正露○がならんでいたのですが、

本家大○製薬の正露○は、新品未開封であるにもかからわず、あの臭いが漂ってきました。

流石だ


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