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モブNo.51:『貴方達、馬鹿なの?』

ネイムス砦を攻略した後、奪還作戦は順調に進んでいった。

どうやら航空部隊に力をいれていたらしく、地上にあまり敵がいなかったのもあるだろう。

もしかしたら、ネイムス砦を頼りにしていたのかもしれないけど。

しかし、エネルギープラントに到着すると、それ以上奪還作戦は進まなくなった。

テロリストがエネルギープラントに立て籠っているからだ。

エネルギープラントを破壊するわけにはいかず、威力を絞ったビームでも施設は壊れるだろうし、ミサイルなんか直撃したら大変だ。

こうなると、地上部隊に完全におまかせするしかない。

こうなると、僕達地上支援部隊にできるのは、上空から敵の動きを教えるのと、敵航空部隊の味方地上部隊への攻撃を防ぐことだけだ。

その敵航空部隊を相手にしていた味方航空部隊の方も、敵主力は既に排除済みで、2割が残存部隊の捜索・追撃。あとの8割は周囲への警戒をしている。

その事により、ほんのりだけど時間ができたおかげ?で、嫌なものを見てしまった。

あの『青雀蜂(ブルーホーネット)』を見つけてしまったのだ。

アーサー君や『漆黒の悪魔』と敵対していないところを見ると、どうやらこっち側らしい。

が、あんなのに絡まれたら冗談じゃないお!

幸い気がついてないみたいだから、無視するのが一番だ。

それにしてもテロリスト達はしぶといね。

婆さんの話が真実なら、ネキレルマ星王国の軍隊が関わっていても、いや、軍隊そのものだったとしてもおかしくはない。

だとするとますます降伏は出来ないか。

もし純粋にテロリストだったら、歪んだ信念で固まってるだろうから、こっちも降伏はしなさそうだ。

彼等は、ネキレルマ星王国(ほんごく)からの援軍を待っているんだろうけど、惑星周辺に展開していた第5第7の両艦隊により、ネキレルマ星王国のものっぽい艦隊を撃滅したという一報があったので、連中には援軍がくることはない。

このまま時間を掛ければ、エネルギープラントを奪還出来るのは間違いないが、どれだけ時間がかかるかはわからない。

これを待つのが私兵や駐屯兵といった軍人や、僕達傭兵だ。

民兵は、素人なだけにきちんと説明すれば、軍人や傭兵の指示にしたがってくれる。

あとはこのまま、テロリストの脱出を警戒し、地上部隊の活躍を待っていれば良い。


しかし、それを待てない連中がいた。

『おいテメエら!なにやってやがる!航空部隊は周囲の警戒を指示したろうが!』

不意に聞こえてきた伯爵の怒鳴り声に、多分全員が

辺りを見回した。

すると次の瞬間、プラントの近くに何発ものビームが着弾した。

幸いプラントに当たることはなかったけど。

『いつまでだらだらやってんだよ!』

『連中に止めを刺せばデカイ戦果になるでしょ?狙わなきゃ損よね!』

『戦争だぜ?プラントの一つぐらい吹っ飛ばしても問題ねえだろうが!』

『さっさと終わらせて、シャワーとスパークリングワインが飲みたいのよ!』

その待てない連中。プラントを攻撃したのは、航空部隊に所属しているあの陽キャたちだった。

どうやら彼等には、軍規に従うとか、戦況を理解するといった思考はないのだろう。

伯爵の怒鳴り声など聞く耳をもたず、再度エネルギープラントを攻撃するべく、6機編成で旋回行動に入ろうとしていた。

そこにさらに怒鳴り声が聞こえてきた。

『プラントには地上部隊が突入してんだ!連中まで吹っ飛ばす気か?!』

怒鳴り声の主は、伯爵子息のトニーだった。

本気で頭にきているらしく、ものすごい剣幕だった。

『戦争での尊い犠牲って奴だ!』

『勇者になれるんだからいいでしょ?』

『だいたいそいつらが遅いのが悪いのよ!』

しかし陽キャの連中は、その怒鳴り声など気にする様子もなく、軽い口調で返答をしてくる。

どうやら、自分達の都合と願望しか見えていないらしい。

それにしても頭が悪すぎる。

全体の司令官がやめろと命令しているのにやめないとは正気の沙汰じゃない。

もしかすると。いや、もしかしなくても、あの陽キャ達は貴族の子息や令嬢なんだろう。

しかも、伯爵より上の貴族の子息か令嬢がいるんだろうな、あの様子だと。

占い師の婆さんは、ネキレルマ星王国の貴族よりマシなんて言っていたが、こっちにもバカはまだまだ残ってるじゃないか。

しかしここは戦場だ。

彼等のやり取りを聞いて、僕達地上支援部隊は、特に打ち合わせる事もなく、あの陽キャどもを撃ち落とす体制に入った。

戦場で命令違反をしたうえ、私欲のために仲間を殺すような連中は、撃ち落とされても文句は言えないはずだ。

初撃は、味方だった事もあって不意を突かれたが、次はない。

しかし次の瞬間。

閃光が煌めき、陽キャ達の船に爆発が起こった。

しかも、不時着できるぐらいの破壊でとどまっていた。

『きゃあ!』

『くそっ!敵か?周りの連中はなにやってんだよ!』

『いや?味方機か?なんで俺達に攻撃するんだよ!』

自分達の行動を棚にあげて文句を言う彼等に、攻撃をした張本人が声をかけた。

『貴方達、馬鹿なの?』

その攻撃をしたのは、『深紅の女神』の異名をもつ、マリーレヒート・ルイヒェン・ファリナー嬢だった。

ピジョンブラッドの髪に金の瞳、白い肌に、モデルも裸足で逃げ出すスタイル抜群の長身美女の彼女は、見た目どおりの艶っぽい声だった。

『エネルギープラントを奪還するために尽力してるのに、それを嬉々として破壊しようだなんて。おまけに地上部隊もろともとか、なにを考えてるの?取り敢えず、そのまま大人しく不時着しなさい』

ファリナー嬢は至極まともな事を言ったと思うのだけど、彼等は理解していないらしく、

『なにしてくれるのよ!傭兵の分際で!私はルスブル侯爵令嬢なのよ!あんたなんか御父様に頼めば直ぐに処罰してやるわ!』

僕の横に船を置いていた、お貴族様らしいあの陽キャ女が、イラついた口調で生家の階級でマウントをとろうとしていた。

他の連中も、彼女になにやら罵声を浴びせているが、音が割れてよく聞こえない。

そこに、伯爵が怒りを隠すことなく連中を怒鳴り付ける。

『おい、ルスブルの小娘を始め預かったガキ共!駐屯兵であるテメエらのやろうとしたことは重大な軍規違反だ。相当の処罰を覚悟しとけ!』

どうやらあの陽キャ達は、傭兵じゃなくて駐屯兵だったらしい。

船や服装が派手だったから、てっきり傭兵だと思っていた。

『そんな?!私は侯爵令嬢なのよ?どうして咎められるのよ!』

『テメエらがやろうとしたのは、帝国のエネルギーの屋台骨を破壊する行為だって理解してねえようだな。

偶然や不可抗力ならともかく、自分の意思で破壊するとなりゃあ、爵位に関係なく死刑になる事もあるんだよ。とにかくさっさと船を地上に下ろせ!

下りねえなら、エネルギープラント攻撃の意思ありってことで、裏切り者(スパイ)として撃ち落とすぞ!』

伯爵の迫力にビビったらしい陽キャ貴族女とその仲間達は、プラントがあるところからかなり離れたところに不時着していった。

それから1時間ほどしたころ。

これ以上は無理だと判断したテロリスト達が、仲間の1人を捕縛して白旗をあげてきた。

なんでも、捕縛された1人がリモート式の爆弾を仕掛けて、自分だけが逃げ出してから、仲間ごとプラントを爆破しようとしたらしい。

そのため彼等はそいつ=テロリストリーダーを捕縛し、投降してきたらしい。

こうして、今回のテロリスト退治はなんとか終了した。

戦闘は終了しました。

このあとはどうなることやら…



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