モブNo.49:『地上支援部隊、聞こえるか!俺様はトニー・イコライ!ジャック・イコライ伯爵の息子だ!』
翌朝午前6時。
セットしておいた目覚ましのアラームが鳴った。
歯磨きをして顔を洗い、着替えをして、寝癖をなおしてから船の外に出る。
すると、昨日
つまり、BBQに使った炭・空き缶・紙皿・プラフォークやナイフといったゴミだ。
これを片付けるのは冗談じゃないので、無視して炊き出しのテントに行って朝食をとることにした。
特に知り合いに会うこともなく、朝食が終わって戻って来ると、陽キャ連中が伯爵の私兵と口論をしていた。
その口論を尻目に、自分の船のチェックをすることにした。
燃料・弾薬の残量、レーダーの作動確認・各
「ちょっとそこのキモデブ!ここの掃除はあんたがやりなさいよ!このゴミは全部あんたが出したんでしょ!」
陽キャの女の1人が、訳のわからない事を言ってきた。
「だよな。俺達が出したわけでもないのに掃除なんかする必要はねえよな」
一緒にいた男達も、同じような訳のわからない事をほざいてきた。
明らかに自分達が散らかしたくせに、なんでそれが僕の責任になるんだ?
まあようするに、こいつらは後片付けなんてものは自分達のする事では無いと本気で考えているんだろう。
学生時代、おんなじような連中に迷惑をかけられたからよくわかる。
が、彼等はこの場に伯爵の私兵がいることを失念しているらしい。
「勝手な事をいわずに自分達で掃除をしろ!朝までゴミを大量に放置していたのはお前達だけだ!それにお前達が昨日バカ騒ぎしていたのは、周りの連中に全て確認済みで私も確認している!他人に責任を押し付けるな!」
伯爵の私兵がそう叱責すると、周りの連中までも彼等を睨み付けていた。
どうやら彼等は、僕が色々と話を聞いている間に、周囲にかなりの迷惑をかけていたらしい。
流石に周りからの視線は耐えられなかったらしく、彼等は大人しく掃除を始めた。
が、彼等が腹いせになにをするかわからないので、点検が終了しても、彼等の掃除が終了するまでは点検しているフリをしていたが、伯爵の私兵が監視していたのもあって、掃除が終了すると、大人しく自分の船に戻っていった。
しかし、最初に僕に訳のわからない事を言った女だけは、僕の隣の船に戻っていった。
そうして点検を無事に終え、もし撃墜された時の為の、パラシュート付きサバイバルバックパックを装備してから操縦席に座った時に、地上部隊の航空支援任務についているメンバーにだけ一斉通信があった。
『地上支援部隊、聞こえるか!俺様はトニー・イコライ!ジャック・イコライ伯爵の息子だ!』
「あ!」
僕は思わず声をあげてしまった。
画面に映ったトニー・イコライと名乗ったイコライ伯爵の息子は、先日ガンショップで見たあの貴族子息だった。
まさかイコライ伯爵の息子だとはおもわなかった。
イコライ伯爵
どんな無茶をいってくるのかと思って身構えていると、
『今回俺がお前らの指揮官として指示をだす!
と、いいたい所だがよぉ!
俺様は何も口出しする気はねえから、地上部隊からの要請に従ってお前らで勝手に動け!
でも、地図に現状を書き入れて親父に報告しなきゃなんねえから、発見・交戦・撃破の報告だけは忘れんじゃねえぞ?!
未来永劫遊んで暮らせる
だから極力プラントは破壊するな!いいな!
補給と報酬はたっぷり用意してある !
俺様の未来の財産を強奪し、未来の俺様の領民を殺そうとしやがったテロリスト共を確実にぶちのめしてこい!』
という、なんとなく中途半端な傲慢さと、地元への愛情?を醸し出してきた。
『よし、そろそろ親父から話がある。全員、画面なり空中に視線を向けろ』
空中に投影された映像には、50代くらいのイケオジが映っていた。
この人が、惑星テウラの領主・ジャック・イコライ伯爵だろう。
たしかにイケオジではあるが、貴族と言うよりは海賊団か傭兵団の親分といった感じの、ワイルドな感じの人物だった。
その映像、近くにいる連中は本人を直接。に、全員が注目すると、伯爵が演説を始めた。
『傭兵・駐屯兵・私兵・民兵達よ!よく集まってくれた!
俺がこの惑星テウラを預かってるジャック・イコライ。伯爵の地位を親父から受けついだ
その俺が預かる惑星テウラに、テロリスト共が土足で上がり込んで、爺さんと親父と俺がやっとこ発見したトライダム鉱石の鉱脈を寄越せと抜かしやがったうえに、エネルギープラントの一部を占拠しやがった!
連中がどこのどいつらかは想像がつくが、盗人に違いはねえ!
初手は領民の避難を優先して後れをとった。
だが!領民の避難が完了したからには遠慮は要らねえ!
連中のケツを嫌というほどブッ叩いて、舐めたマネをしたことを死ぬほど後悔させてやる!
ありがたい事に、帝国軍の第5艦隊と第7艦隊が連中の逃亡を防ぐべく、衛星軌道上に展開をしてくれている。その包囲は
では今からテロリスト共をぶちのめしに出発する!遅れるんじゃねえぞ!』
見た目に相応しいワイルドな演説をかまし、伯爵みずから、近くにやって来た装甲車に乗り込んでいった。
え?まさか
まあ、見た感じ行きそうだよね…。
その伯爵に続いて、地上部隊や航空隊が続々と出発していった。
混雑しているところに飛び出すと衝突しかねないので、周りの船が飛び去った後に、ゆっくりと離陸した。
航空部隊=制空権奪還部隊はともかく、地上支援部隊は地上部隊に足並みを揃えるので、エネルギープラントまでは少し時間がかかる。
そこでさっきの伯爵の演説の一部を思い出していた。
まさか第5艦隊と第7艦隊が惑星テウラを包囲しているとは驚いた。
こりゃテロリスト達を絶対逃がす気はないし、彼等の援軍を参入させるつもりはないのだろう。
第7艦隊は以前世話になったところだけど、第5艦隊は初だ。
まあ、顔を会わせたりすることはないだろうけど。
その第5艦隊だけど、かなりとんでもないらしい。
検索エンジンの『シラベ・ロカス先生』によると、
第5艦隊の司令官はルナリィス・ブルッドウェル少将。
珍しい女性の司令官で、爵位は伯爵。
美人で有能だけど、冷酷冷徹な合理主義者で、敵にも部下にも上官にも容赦がないらしい。
噂じゃ、あの親衛隊隊長のキーレクト・エルンディバー大将閣下を怒鳴り付けた事があるとかないとか。
彼女の
噂だと、身分や階級を盾にしていじめや嫌がらせをしていた連中は、
平民としては、差別や虐めがないのはありがたいのかも知れないが、同時に訓練もめちゃくちゃ厳しいらしいので希望者は少ないそうだ。
ともかくそのおっかない艦隊が2つもバックに居てくれるのだから、宇宙からの援軍が湧いたり、逃げ遂せるたりする事はないので、安心して作戦遂行に集中する事にしよう。
次は開戦です。戦闘描写は苦手ですが。
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