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モブNo.5:「相手は侯爵家だ。聞く耳持たねえよ」

それからすぐ警察がきて、海賊のおじさん3人組を連行していった。

おじさん達は、3人ともリストラにあい、奥さん子供にさんざん馬鹿にされてから離婚されてしまったらしい。

その元家族を見返すために、3人で組んで借金をして小惑星住宅と戦闘艇を購入し、海賊をはじめたらしい。

切ないというかなんというか…。

最初にやったときに成功しちゃったのも良くなかったんだろうな…。

あとはそれに味をしめたってところか。

まあ、凶悪な連中みたいに皆殺しとかしてなかったのはよかったかな。

奪い取った金額もショボいし、そんなに酷いことにはならないだろう。

その辺りの話を、報酬をいただきにきたついでに、傭兵ギルド受付のローンズのおっちゃんに話したしたところ、

「世知辛いな…」

と、しみじみと実感と哀愁のこもった呟きを漏らした。


それにしても、もしこれが主人公属性のやつだったら、

海賊は美人3姉妹で、

元々はでかくて歴史も威厳もある海賊団の首領(ボス)の娘で、

部下の裏切りで、自分の女にならないならと殺されかけるも、

忠臣の命懸けの行動のおかげでなんとか生き延び、

裏切った部下に復讐するために資金集めをしていた。

さらにはなんかの特例がおりて、その3姉妹は主人公のパートナーになったりする。

ぐらいのことになるだろう。


そして、今回の仕事の顛末を話す前から気になっていたのが、

「で、あれどうしたの?」

傭兵達が何十人も連れだって、偉いさんを囲んで詰め寄っている光景だった。

「50人単位の依頼があっただろう?あれの報酬を、依頼主がたった1人にしか払わなかったのさ。しかも、全員に払う分全てをその1人に全額渡したらしい。なんでも依頼人の侯爵令嬢が『報酬が貰えないのは、お前達が信頼に足る仕事をしていないからだ!』とか、貰えなかった連中に言い放ちやがってな」

聞いた瞬間、自分の耳を疑ったお。

あれだけの人数を集めて報酬未払いって絶対にヤバイお!

たぶん侯爵令嬢が、集められたうちの誰かを気に入って、えこひいきするために難癖をつけてそういう形にしたのだろう。

「大事じゃん!ギルドは抗議はしたん?」

「相手は侯爵家だ。聞く耳持たねえよ」

やっぱりやらなくてよかった。

『貴族相手の仕事は、戦闘以外はあんまり受けない方がいい』

傭兵の先輩に教えて貰った言葉だ。

「で、その仕事を受注させたギルドの偉い人が責められてると」

「まあそんなとこだ」

いろんな傭兵に怒鳴り付けられている偉いさん、たしか依頼受注の責任者だっけ。

「それで、そのえこひいきされたヒーロー君は傭兵辞めて、その侯爵令嬢の専属になったの?」

そのえこひいきされたのは、絶対にあのヒーロー君だと確信した。

「いや。『自分は傭兵です。ほかにも救わなければいけない人がいるんです』とか抜かして断ったらしい」

「相手は怒らなかったの?」

「そのヒーロー君に令嬢がぞっこんらしくてな。怒るどころか感心しているらしい」

流石、主人公属性の人は違うお。

普通、貴族の要請に逆らおうものらなら、不敬罪という理不尽な罪を被せられかねない。

そこを、愛娘が惚れているから、性格・人格・外見が気に入ったからと許される。

モブの僕だったらその場で死刑確定かもしれない。

まあその前に気に入られることすら無いから大丈夫だけど。

てか、それだけいうなら、報酬をきちんと全員に払うように意見しろよ!

報酬額おかしいとかおもわなかったの?

「そういえば、その報酬を貰ったヒーロー君の姿が見えないけど?」

「あれに囲まれる前に帰ったんじゃないか?」

流石は主人公属性の人、時間や人の流れまで全てが味方だ。

しかしなんと言うかあのヒーロー君。

侯爵令嬢が気に入るのも理解ができる。

なにせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからだ。

あれだけの清潔感がだせる人はなかなかいない。

そんな選ばれた一握りの完璧なヒーロー君に、モブが絡んでいいことはひとつもない。

関わらないのが一番だ。

「終ったぞ」

そうしてるうちに、支払い手続きが終了した。

あのおじさん達の小惑星住宅と戦闘艇は、買い取りまでの手間賃を引かれても、それなりの額が舞い込んだ。

「はい、確かに。少し休んだらまた仕事受けにくるよ」

「おう。またな」

こうして僕は報酬を手に入れ、傭兵ギルドを後にした。


仕事が終われば、後はアニメショップをぶらついてから自宅に帰るのだが、その前にやっておかないといけないことがある。

両親への仕送りだ。

これをするために傭兵という仕事を選んだといっていい。

傭兵を選択肢に選んだ理由は、高1の時に学校の教師に騙され、傭兵団に無理矢理入団させられたことがきっかけだ。

そのときは、僕だけではなく、不良や陰キャといった、成績・性格・生活に難がある連中を、落第しないための特別な合宿だといって集めて、傭兵団に入団させられた。

とはいっても実際には、人数をかさ増しして依頼者からの報酬を増やし、正規の団員の盾にするために連れて来られただけで、しかもその給料は全部教師の懐というふざけたものだった。

そのときの出撃で戦死した連中は、傭兵にさせられた事を楽観視して突っ込んでいったり、正規の団員の盾や囮に使われたりして、僕を含めたたった3人を除いた、37人全員が死亡した。

そして僕以外で生き残った2人は、正に主人公的な活躍をして生き残った。

僕は楽観視せず、今のやり方と同様に、戦場の隅っこで生き残れるように立ち回って何とか生き残った。

ゲームでドッグファイト系のシューティングや、

ファースト(F)パーソン(P)シューター(S)をやっていたのも、多少なりと生き残れた原因のひとつかもしれない。

そしてその一度の出撃の直後に、そのクソ教師と傭兵団は逮捕された。

特に教師は、反省の色もなかったので、最速で死刑が確定したのを覚えている。

それからの高校生活は、()()特筆することもなく過ぎていったが、高3の受験シーズン直前に父親が脱サラして農業をはじめたために、大学にはいけなくなった。

脱サラといっているが、本当は不当解雇されたらしいのはわかったのでとくに文句は言わなかった。

受験が急にだめになったので、どうしようかと考えてチョイスしたのが傭兵だった。

成績が抜群にいいわけでもないし、自分の外見では通常のバイトは難しいと思ったのがあったのと、

逮捕はされてしまったが、同じ傭兵団内でも、クソ教師と繋がっていたのとは違う派閥の、親切にしてくれた先輩傭兵が、

『どんな戦果だろうと生き残るのがいい傭兵だ。お前はいい傭兵になる』

と、いってくれたことが、理由のひとつかもしれない。

ちなみに両親は現在、父親の生まれ故郷の惑星タブルで、夫婦仲良く農業をやってる。

まあいろいろ大変らしいが元気でやってるらしい。

ともかく最寄りの銀行に行き、ATMで両親の口座に仕送りをすることにする。

自分の決めたルールとして、1回の報酬の1/3を仕送りすることに決めている。

今回は、依頼報酬は40万クレジットだったけど、おじさん達の船が560万クレジットにもなった。

なので今回は、合計額の1/3の200万クレジットを仕送りした。

前回の依頼の時は、残骸回収不可で燃料弾薬は支給での300万ほどだったので100万を送っておいた。

半分くらいでもと考えたが、不測の事態のための資金は取っておいた方がいい。

仕送りが終わったら、次はアニメショップに、移動や待ち時間に読むノベルや、新作アニメのデータソフトを買いにいくことにする。

しかしその道中。会いたくない奴の姿をみた。

僕と一緒に騙されて傭兵団に入らされ、僕と違って主人公的な活躍をして生き残った1人、リオル・バーンネクストだった。

かなりのイケメンで、誰にでも親切で、真面目で正義感が強く、成績優秀・スポーツ万能な、非の打ち所の無い奴だ。

そしてそういう奴にありがちな『頑固』で『親切』なところがある。

だから僕は、こいつが苦手で嫌いだ。

なので、見つからないうちに早々に立ち去ろうとしたのだが、運の悪いことに見つかってしまった。

「やあ、ジョン・ウーゾス。いつまで()()()()()やっているつもりなんだい?」

基本は回避ですが、時々は絡ませようかと思っています。

常に絡んでくる美人を1人ぐらいはと考えてはいますが、ヒューマンは止めておこうと思います。

既に候補がいますが…


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