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モブNo.46:「嫌な話だなあ…」

御指摘があり、テロリストの名称を変更しました。


美人海賊姉妹捕縛の依頼が横槍で消滅して、その横槍を入れてきた連中に絡まれないように、素早くイッツに戻れたのは、本当にラッキーだったお。

あの司教階級(ビショップランク)達が、美人海賊姉妹で()()()()()()()事で僕を逆恨み?して、襲撃くらいはあるだろうかと思っていたのだけれど、それもなかった。

その事に安堵しながら、船を駐艇場(ちゅうていじょう)に泊め、受付(カウンター)に向かった。

でもやっぱり、連中が潜んで居ないか気にはなってしまう。

「うっす」

「よう。依頼は失敗だったらしいな」

僕が声をかけると、ローンズのおっちゃんは、ニヤリと笑いながらこちらを向いた。

「失敗じゃなくて無効だよ。依頼を受けてない奴がたまたま捕まえただけ。きちんと連絡したっしょ」

「冗談だよ。でも、なんで自分の獲物だっていわなかったんだ?」

「確定前だったし、面倒臭い連中だったからね」

「お前らしいな」

ローンズのおっちゃんは、今度は歯を見せて笑った。

ちなみに、謝礼金をもらった事も連絡済みなので、後ろめたい事もない。

そして適当な仕事を選ぼうとした時に、ふと人影が現れた。

「あ、ウーゾスさん良いところに!」

「げ…」

そこに現れたのは、超絶美少女男の娘受付嬢の、アルフォンス・ゼイストール氏だった。

「なんですか?私の顔になにかついてますか?」

「別に何にもないです」

お願いだから話しかけないで欲しい。

別に『彼』が何かをしたわけではない。

先も言った通り、超絶美少女男の娘受付嬢なために、『彼』と仕事の会話をしているだけで、周りから嫉妬と殺気を飛ばされるのだ。

それを察したのか、ローンズのおっちゃんがゼイストール氏に話しかけてくれた。

「ところで、こいつになんか用か?」

「はい。ウーゾスさんにだけではないんですが、今し方こういう依頼が回ってきまして」

ゼイストール氏は、映像書類(ホロ・ペーパー)を見せてくる。

「なになに…『イコライ伯爵領惑星テウラでの惑星上戦闘での対テロリスト戦力補充要請』?最重要案件じゃないか!」

「惑星表面での戦闘依頼です。統治者のイコライ伯爵は現・皇帝派で、領民の生活は平穏だったそうです。

ところが突然、『正しき者達』と名乗る反・皇帝派レジスタンスが登場し、エネルギープラントや工業地帯を占拠したそうです」

その内容は実に傭兵らしい、戦闘への参加だった。

だが、それを鵜呑みにするほど単純じゃあない。

「その伯爵が裏で悪いことしてたんじゃないの?あと息子とかが」

表面だけ善人を気取っている貴族なんか、掃いて捨てるほどいる。

「どちらも悪い噂はありませんね。ちょっと癖の強い人物らしいですけど」

その癖が強いというのが、一番の問題を含んでいるように思うのは気のせいだろうか?

「それに、普通そういうのは軍が対処するものなんじゃないの?帝国のエネルギー供給の最重要地点なのに」

「軍に要請はしたそうですが、反・皇帝派が邪魔をしてくるかもしれないので、迅速に対処したいと言う事だそうです」

「嫌な話だなあ…」

なぜ今回の依頼が、こんなにも重要視されているのか?

さっきも話にでたが、惑星テウラが帝国のエネルギー供給の最重要地点だからだ。

惑星テウラは、帝国領地になる前のネキレルマ星王国時代は何にもない惑星と判断され、開発などは一切されていなかった。

帝国に侵略された時も、当時の統治者は、防衛もせずに住民など殺されても良いとばかりに放棄したくらいだった。

それをイコライ伯爵、当時は男爵だった一族が、100年前・4代前の皇帝陛下から下賜(かし)されてから、ずっと開発し続けて住民の生活を向上させ、40年前にようやく惑星調査が開始された。

それから5年間の調査の結果、エネルギー鉱石であるトライダムの鉱脈を発見したのは、帝国の歴史の教科書にも乗っている有名な話だ。

トライダム鉱石は、溶解した後に精製して不純物を取り除くことで、綺麗なオレンジ色の結晶になる。

これをさらに溶解させることで、都市の機能維持や移動手段の動力といった物に必要なエネルギー燃料になる。

惑星テウラには調査の結果、大銀河帝国全体のエネルギーを、約1万年間賄う事ができるだけのトライダム鉱石があるという。

そこがテロリストに狙われたのだから一大事だ。

おそらく、情報の整理と精査が済めば、すぐにでも速報が流されるはずだ。

「今回テロリスト側への戦力提供はなし。当たり前だな。どうする?受けてみるか?」

ローンズのおっちゃんは、映像書類(ホロ・ペーパー)をこちらへ差し出してくる。

大気内部での戦闘経験がなくはないが、豊富ではないため、あんまり自信はない。

それに、なんとなく貴族の派閥対立がからんでくるんじゃないかという、嫌な感じもする。

だけど、傭兵同士での戦闘にならないのは気分的に楽だ。

そしてなにより、今後の自分たちの生活に関わるのだから、受けないわけにはいかない。

しかしそれでも調べてからでなければ受けないのが僕のやり方だ。

「取り敢えず、もう少し考えてからにするよ。受付期間はまだあるっしょ?」

そう言って受付(カウンター)を後にした。


組合(ギルド)を出てから、情報を仕入れるために、パットソン調剤薬局(ゴンザレスのところ)に向かった。

闇市商店街はいつもの雰囲気で、今回あの肉屋さんは新作を出していないようだ。

そうして、パットソン調剤薬局(ゴンザレスのところ)に到着したのだが、扉には『臨時休業』の張り紙があった。

店はもちろん、裏の自宅のインターホンを鳴らしても出ないので、腕輪型端末(リスト・コム)通信(でんわ)を入れたところ、

『よお。珍しいな、通信(でんわ)してくるなんて』

ちょっと疲れた様子で電話にでた。

「今お前の店の前にいるんだけど、臨時休業ってどうしたんだ?」

もしかして身体(ボディ)に故障でもあったのだろうか?

『薬剤師組合の会合でさ~。持ち回りで司会進行が回ってきたんだよ。

どうせ年寄りの長話だけなんだからブッチしたいんだけど、断ったら資格剥奪とかの噂があるからさ~』

しかしそんな心配もなく、ものすごく嫌そうな顔で、助けてくれという雰囲気で愚痴を垂れ流してきた。

普段はクールぶっているが、案外逆境に弱いからなあいつ。

ともかく助けるのは無理っしょ。

戦闘的なことならともかく、職務上の義務的な事は無理だ。

僕は完全に無関係な人間だからね。

「大変だな…」

『しかも「今度からは君に専属で頼もうかな?」とか言いながら尻をさわってくる爺さんまでいてよ~』

「本当に大変だな…」

中身を知っているならともかく、知らなければゴンザレスはかなりの眼鏡美人だ。

ゴンザレスが薬剤師の資格をとったのは、大学での事故の後。

普通、全身儀体は生前の本人そのままになるように作られる。

外見を変えたとしても、性別までは変えないのが一般的だ。

つまりその爺さん達にとっては、ゴンザレスは生まれついての眼鏡美人薬剤師なわけだ。

中身が男と言えば、専属司会の仕事は免れるだろうけど、薬剤師の資格を剥奪されかねないねこりゃ。

『つーわけで、情報は占いのばあちゃんにでも聞いてくれ』

「わかったよ。まあ、頑張れ」

『あー嫌だなあ…』

ゴンザレスは、最後まで嫌そうに呟きながら通話を切った。

今度会ったらグッズでも奢るか…。

主人公のようにトラブルがおきますが、これは主人公のトラブルに巻き込まれているだけです!


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします


いただいた御指摘を間違って消してしまいました…。

申し訳ありません…

できればご連絡お願いします。

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