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モブNo.45:『よく聞け獲物共!俺達は泣く子もだま『今だ!一斉射撃!』』

なんとなく疑惑が残る作戦会議が終了したところで、ついに海賊が肉薄してきた。

大小取り混ぜた海賊旗(ジョリー・ロジャー)のマークがこちらを睨み付けるように向かって来ていた。

『よし!みんな落ち着け!よく引き付けてから、俺の合図で撃ち始めるんだ!』

司教階級(ビショップランク)の男が船団(キャラバン)の人達を鼓舞し、指示を出す。

それから数分の沈黙があり、海賊からこちらに対して

オープンチャンネルで通信があった。

『よく聞け獲物共!俺達は泣く子もだま『今だ!一斉射撃!』』

海賊のボスらしい男が話している途中に、司教階級(ビショップランク)の男の合図で、一斉射撃が開始された。

岩石破壊用のビームとはいえ、150隻近い船が一斉に放ったそれは、光の雨の様だった。

先頭にいた連中は、油断もあってか、見事に被弾・撃沈していった。

僕とバトと呼ばれた傭兵は、海賊達がその事態に驚いている隙に、彼等の背後をとることに成功した。

だが攻撃するのは、二手なり三手なりに分かれた後だ。

そうでなければ意味がない。

『くそうっ!ふざけやがって!横から回り込め!』

案の定、海賊達は二手に別れてくれた。

それにしてもあの海賊、作戦がこちらに駄々漏れなんだが大丈夫なんだろうか?

ともかく海賊達が二手に分かれてくれたのだから、やることは一つだ。

『おっし!じゃあ俺が旗艦のいる右!あんた左だ!』

「了解」

そうしてほぼ同時に、最後尾の船に陽子魚雷(プロトントーピード)を撃ちこむと、ド派手に爆発してくれた。

『いまだ!行け!』

その合図と共に、船団側にいた8機が一斉に攻撃を仕掛け、船団の岩石破壊用ビームを二手に分けての射撃を開始した。

このまま押しきれば勝てる?とも考えるけれど、そんなに甘くはなかった。

海賊達は二手に分かれ、最後尾の船が大破したにもかかわらず状態を立て直し、大型の船にバリアを張り、それを盾に船団にジリジリと近づきはじめた。

もちろんこれにも対策はある。

単純に下がりながら、岩石破壊用ビームを撃ち続けることだ。

しかしそれも時間稼ぎにしかならない。

司教階級(ビショップランク)の男が、船団の人達に指示や檄を飛ばしてなんとか持たせているが、時間の問題だろう。

それに、この船団に紛れ込んでいる海賊団のスパイがなんらかの行動をしかねない。

このままじり貧かなと思っていた時、海賊達の上方向から、熱源が迫ってきた。

なので僕は、慌て海賊達から離れた。

その熱源により、海賊達の船がことごとく大破していく。

間違いなく、艦隊からの一斉射撃だ。

そして間髪を容れずに、

『海賊共に告ぐ!我々は銀河大帝国軍第2艦隊だ!

抵抗するなら更なる一撃で宇宙の塵に変える!

抵抗か降伏か好きな方を選べ!』

若い男、おそらく艦隊司令官が海賊達に勧告を行った。

どうやらこちらの報告と、船団(キャラバン)の人達の通報をちゃんと聞いてくれたらしい。

が、此方への通告なしでの艦砲射撃は酷いだろう。

反応が遅かったらお陀仏だった。

この辺りが、第7艦隊とはちがうところかな。

それからすぐに警察もやってきて、海賊達はことごとく捕縛された。

第2艦隊は、処理を全部警察に丸投げして、すぐにその場を後にした。

それから警察は、捕縛した海賊を連行・その場の残骸の処理・船団キャラバンの先導兼護衛とに分かれて行動を開始した。

護衛する理由としては、もしかしたら残党がいて、襲ってくる可能性がなくはないからだそうだ。

でも普通それは軍の仕事だと思うんだけど。


そうして半日の移動の後、惑星ナチレマにたどり着いた。

その宇宙港のロビーで、戦闘をした10人に対して、船団(キャラバン)の責任者がお礼を言ってきた。

「いやあ皆さん!有り難う御座いました!まさか我々が海賊とあそこまでやりあえるとは思いませんでしたよ!」

責任者は、多少なりと自分たちが海賊を怯ませた事に興奮しているらしい。

「護衛を依頼された俺達としては、報酬を期待するだけなんだがな」

「もちろん期待してくれたまえ!」

責任者はにこにこしながら、司教階級(ビショップランク)の男の手を握っていた。

そして僕と海賊推定姉妹にも近寄ってくる。

「それから、君たちにはこれを。色々かかって手持ちが少ないので、わずかばかりだが受け取って欲しい」

そういって渡された封筒には、現金(キャッシュ)で20万クレジット入っていた。

「有り難うございます」

「まあ端金(はしたがね)でもないよりはマシね」

「失礼ですよシーラ姉さん」

海賊推定姉妹は堂々と封筒を受け取り、中身を確認していた。

さて、どうやって彼女達を海賊と特定しようかと考えていたところ。

「じゃあこれで解散と言いたいが」

司教階級(ビショップランク)の男の仲間が、海賊推定姉妹を拘束した。

「ちょっとなにするのよ!」

「いやっ!離してください!」

「黙れ!海賊風情が!さっきまでは緊急時だったから見逃してやっていたが、海賊と分かれば容赦はしない!」

「どこにそんな証拠があるのよ!」

「痛い!痛い!」

海賊推定姉妹は、司教階級(ビショップランク)の男を睨み付けるが、司教階級(ビショップランク)の男とその仲間は厳しく睨み返すだけだった。

そして司教階級(ビショップランク)の仲間たちは、海賊推定姉妹の封筒も取り上げた。

意地が悪いな。

金を自分たちの懐に入れるために、彼女達が報酬を貰うまで放置したんだろう。

彼等がどうやって彼女達を海賊と特定したのかは気になるが、こちらとしてはどうしてもやらないといけないことがある。

「あー。ちょっといいですかね?」

「なんだ!?」

司教階級(ビショップランク)の男は、僕が声をかけた事に、イラつきながら視線を向けてきた。

「彼女達が海賊だと断定した理由はなんです?」

「依頼人の知り合いに、この2人の被害者がいて特定した」

司教階級(ビショップランク)の男の言葉と同時に、若い男が前にでてきて、海賊推定姉妹を睨み付け、

「お前達に荷物を奪われたせいで、俺は大変な目にあったんだからな!」

と、罵声を浴びせた。

姉の方はプイと視線を反らし、妹の方は不機嫌そうに男を睨み付ける。

その様子をみる限り、被害者に間違いはないようだ。

「成る程。では被害者の方、傭兵ギルドに依頼はだしましたか?」

「いや。そんな金がなかったからだしてない」

「では、私の方で受けた依頼は別の人が出したものですね」

これだけ分かれば後は簡単だ。

多分司教階級の男と仲間(こいつら)は、僕が先に目を付けていたといっても聞かないだろうし、手柄を譲った方が面倒は少ないだろう。

そう考えていた矢先に、向こうから文句が飛んできた。

「さっきからなんなんだ?手柄でも横取りしようとでも言うのか?」

司教階級(ビショップランク)の男は、こちらを蔑むように嘲笑してきた。

まあ、それぐらいは予測の範疇(はんちゅう)だ。

「そんなことはしませんよ。まず、僕は依頼を受けてその2人を捕縛するべく色々探っていて、大規模海賊襲撃の時に目星をつけました。

しかし確定はしていなかったので捕縛はしていませんでした。

そこに、そちらは海賊と確定できて捕縛した。

こういう場合は『外的要因による捕獲』ということで、こちらが受けた依頼は無効になりペナルティは無し。かけられていた賞金は捕獲者に支払われます。

その辺をスムーズにするための確認ですよ。

司教階級(ビショップランク)の人ならご存知のはずですよね?」

追い詰めていたのを目の前でかっさらったりした場合は別だが、向こうは僕があの姉妹を追いかけていたのを知らなかったし、僕はこの場を解散してから、確定と捕縛を考えていたから、こうなった場合は仕方ない。

「受けた依頼と言ったな?お前、傭兵だったのか?」

司教階級(ビショップランク)の男は、慌てた様子で僕が傭兵かどうか聞いてきた。

「はい。あなた方とはちがう支部に所属しています。ところでさっきの『外的要因による捕獲』の手続きの話はご存知ですよね?」

「あ!そうだそうだそうだった!うん!それで進めてくれ!」

明らかに話を知らなかった感じだな。

ともかく、傭兵ギルドと警察に連絡をする。

「…よし。手続きは終了。そちらのギルドで報告して、報酬を受け取ってください。警察もすぐに…ああ、きましたね」

意外にも、警察は早くにやってきた。

多分、警護についていた船に乗っていた警官なんだろう。

早くにやってきた警察は、すぐに海賊姉妹を捕縛した。

海賊姉妹は色々わめいているが、逃げられるはずはない。

すると、司教階級(ビショップランク)の男の仲間が『余計なことしやがって』てな顔で睨んできた。

多分、仲間内であの海賊姉妹を()()()つもりだったんだろう。

その後で警察に引き渡すつもりだったか、もしくは売り飛ばす予定だったのかも知れない。

しっかり犯罪だし、場合によっては匿ったことになって犯人の逃亡幇助(とうぼうほうじょ)になるんだけど…。

多分理解してないっぽいな。

というか本当に司教階級(ビショップランク)なのかな?

それ以前に本当に傭兵かどうかも怪しい。

まあ、追求はしないけどね。

そしてそんな事は知るはずもなく、

「観念しなさいクロア。あんなオタクみたいな奴に捕まえられるよりははるかにマシよ」

「そうですね…多少なりとイケメンのほうが、シーラ姉さんにはありがたいですものね」

「クロア…。それはどういう意味かしら?」

「ひいっ!ごめんなさいシーラ姉さん!」

美人海賊姉妹は、僕に捕まらなかった事を大変に喜んでいた。

「では私はこれで」

そういって、僕はその場を後にした、

下手に絡まれないうちに、さっさと逃げるにかぎる。



UNKNOWNサイド:司教階級ビショップランク達


大型の貨物船の内部で、7人の人物が、酒の入ったグラスを片手に盛り上がっていた。

「それにしても上手くいったな!」

「本当にバカな海賊共だったぜ!」

「あのクソオタ野郎が邪魔しなけりゃ、おまけも楽しめたのによ…」

「しかしあのオタ野郎がマジで傭兵とはな…」

彼等が好き勝手に話していると、不意に部屋にあったモニターの画像が切り替わった。

『ご苦労だった』

それを見た瞬間、彼等は起立し、敬礼の状態になった。

『今回お前の提案した、民間人を囮にして、海賊共に情報を渡し、民間人と戦闘をさせ、消耗したところを()()が一網打尽にする作戦は上手くいった。帰還して次の指示をまて』

モニターに映った若い男は、それだけを伝えると通信を切ろうとした。

「ちょっとは休暇を下さいよ。おまけも手に入れ損なったのに」

そこに、男達の1人が要求を伝えたところ、

『余計な事はするな。お前達は愚直に上からの命令にしたがっていればいいのだ』

若い男は不機嫌な表情をし、直ぐに通信を切った。

するとそのモニターに、グラスが投げつけられた。

「くそっ!親のお陰で司令官になった癖に偉そうにしやがって!」

「なあ。気晴らしにあのクソオタ野郎殺しにいこうぜ!」

「落ち着け」

彼等は怒りを露にし、ストレスの解消を提案したりするが、司教階級(ビショップランク)の男が(いさ)める。

「目立つ行動は止めろ。それに、今はせいぜい威張らせてやればいい。()()()

司教階級(ビショップランク)の男の言葉に、全員が落ち着きを取り戻し、不敵な笑みを浮かべた。


UNKNOWNサイド:終了

戦闘描写は苦手です


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ほんのり修正しました

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