モブNo.43:『こちらは銀河大帝国軍第2艦隊だ。現在大規模海賊団を捜索中。お前はそれを追っている傭兵だな?直ぐに手を引け。あれは我々の獲物だ』
強盗少年を警察に引き渡すと、そのままこのサービスエリアで一晩をすごし、翌朝から毒塩の惑星タッシアに向かうことにした。
近くにゲートもないため地道に進むしかないので、
僕に話しかけてくるような知り合いは片手で数えられるくらいだから、誰だろうと相手を確認すると、なんと相手は帝国軍の艦隊だった。
いったい何用なんだろうと思いながらも、通信を受けた。
「こちら民間艇『パッチワーク号』。帝国艦隊の方がいったい何のご用件でしょうか?」
すると現れたのは、いかつい顔の中年の男性軍人だった。
『こちらは銀河大帝国軍第2艦隊だ。現在大規模海賊団を捜索中。お前はそれを追っている傭兵だな?直ぐに手を引け。あれは我々の獲物だ』
ずいぶんと偉そうな口調で上からものを言ってきたが、どうやら彼らは海賊退治にやってきたらしい。
話の内容は『俺達の邪魔をするな』と、いうことらしいが、僕が探している海賊とは違うようだ。
ちなみに銀河大帝国軍第2艦隊は、以前助けられた事のある第7艦隊と同じ中央艦隊の討伐部隊だ。
そしてこの中央艦隊の司令官や佐官は、ほぼ100%貴族が務めている。
そしてその態度や思考は実に貴族的だ。
こっちが何者か名乗ってもいないのに、海賊退治をする傭兵だと決めつけて話をしている。
まあ間違いではないし、後から傭兵だと判明して色々文句を言われても嫌なので、正直に答えることにする。
しかしそれならそれで言葉づかいに気を付けないといけない。
言葉づかいの揚げ足を取られて、罰金だの不敬罪だのと言われかねないからだ。
「それなら大丈夫です。こちらの探しているのは小規模な小物なので。多分、潜伏先か逃亡先が同じ方向になっただけだと思いますよ」
『では情報があれば開示しろ。出さないなら海賊の協力者と見なす』
なので言葉使いを気をつけて返答したが、その辺は問題なかったらしい。
「たいした情報があるわけじゃないんですが…。毒塩の惑星タッシアあたりで大小両方の海賊が出たって噂話程度です。さらに情報を集めるために、いまからそっちに向かってるところです」
隠したりする必要がないので正直に全部話した。
これで『嘘を
『ふむ…どうやら嘘ではないようだな。大規模海賊団の情報が手に入ったら、迅速に軍まで通報しろ』
「わかりました」
が、そんなことはなかったようだ。
落ち着いて考えれば、僕みたいなのが軍隊が追いかけるような規模の海賊団を単独で狙うわけないのだが、
なにか焦るような事態でもあったのだろうか?
ともかくその辺りの事情は僕にはわかるわけはないので、気にする必要はないだろう。
先に出発したりすると色々めんどくさいので、艦隊に先行させてから改めて惑星タッシアに向かった。
そのせいか、惑星タッシアのサービスエリア『ルテタ』に到着した時には夕方も過ぎてしまっていた。
惑星タッシアは、別名『毒塩の惑星』と言う異名があるが、宇宙空間から見ると真っ白で、遠い恒星からの光を反射してキラキラと輝く美しい惑星だ。
この光景を見るために観光客などもやってくるため、かなり高い頻度で軍隊や警察のパトロールが回っている。
にも関わらず。いや、人が集まるからこそ海賊に狙われるポイントになっている。
最近の大規模海賊団の討伐をきっかけに、小規模の海賊が増えてしまったのは皮肉な話だ。
そのためかどうかはわからないが、配達業者をはじめとしたさまざまな船が、かなりの数停泊していた。
やっぱり海賊のせいで足止めを食らっているのかもしれない。
その事実を確認するために、中にある
空いている近くの席に座りビールを注文する。
酒はあまり好きではないけれど、1杯ぐらいなら問題はない。
そうして彼らの話に耳を傾けていると、なるほどな話が聞こえてきた。
「しかし考えたな。業者で船団作って移動とはな!」
「これなら簡単には手出しできないだろうよ!」
「でもこの前、ジュロのやつが海賊に出くわして、積み荷を奪われたらしいじゃないか」
「その海賊は2人組だったらしいじゃないか。だったらこっちは数で勝てるぜ!」
「そうだな!蜂の巣にしてやればいいんだ!」
どうやら彼らは、船団を組んで移動する手段を取ったらしい。
たしかにこうすれば、なかなか襲いづらくはなるし、岩石破壊用のビームだったとしても、集中砲火を受けたらひとたまりもない。
護衛の戦闘艇を搭載していたりするかもしれないし、業者の中に元軍人や元傭兵みたいな人がいるかもしれない。
そういうリスクを考えれば、小規模な海賊なら襲わないのが賢い選択だ。
だが大規模な海賊の場合だと、向こうのほうが上手なので格好の獲物になってしまう。
それにしても、酒が入っているとはいえずいぶんと大きな事を言ってるなあ。
これは軍に報告した方が良いのか悪いのか判断がつかない。
なのでとりあえず、配達業者のリーダーらしい人に、旅行者を
「すみません。皆さん惑星ナチレマに向かう予定ですか?」
「そうだがあんたは?」
「寂しく一人旅をしてたんですが、この辺は海賊が出るっていうので、できれば一緒に行動したいのですが、よろしいですか?」
「ああいいぜ。少しでも数が多い方が脅しになるからな。あんた以外にも、おんなじことを考えた連中が山ほどいるからな。だが、出発は明日の朝6時だ。遅れるなよ。遅れたらそのまま出発するからな」
「有り難うございます!助かります!」
マズイかもしれない。
とりあえず一緒に行動して、大規模なり小規模なりの
配達業者だけの船団なら大丈夫かもしれないけど、不特定多数の人間が一緒となると、その中に海賊の一味が混ざってる可能性がなくはない。
2人組のほうならまだいいが、大規模の方なら絶対勝ち目はない。
やめるように言ったとしても、やめてくれる様子は無いだろう。
とりあえず中座して帝国軍に連絡するかな。
僕はビールの代金を支払ってから店をでると、船に戻って帝国軍に連絡をいれた。
『はい。こちらは銀河大帝国軍情報部です。ご用件をどうぞ』
しかも笑顔で機械的な応対をしてくれているので実に話しやすい。
生身の女性に、明らかに嫌そうな顔で応対をされるよりは何倍もマシだ。
「実は惑星タッシアに向かう途中に中央艦隊討伐部隊の第2艦隊と接触しまして、その時に追跡中の大規模海賊団に関する情報があったら報告しろと言われたので、報告の連絡をしました」
『有り難うございます。では情報の詳細を』
「はい。今現在、惑星タッシアのサービスエリアにいるんですが、そこから翌朝に配達業者たちを中心とした
『了解しました。情報の提供に感謝いたします』
これで、まあ合流は無理だとしても近隣宙域には来てくれるだろう。
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