モブNo.41:「ウーゾス君じゃない!ここでなにやってるの?」
そうして銃のオーバーホールが終了すると同時に、勢いよく店の扉が開き、明らかに面倒臭い客が入ってきた。
まず入ってきたのは、身なりは上等で、髪型なんかも整ってはいるが、顔には小物の悪党感が漂っている連中数人だった。
そしてそいつらを従えるように入ってきたのは、小物のボスっぽい感じの男だった。
おそらく彼らは貴族の子息。
父親の地位=自分の地位な人達だ。
彼らは店内を見渡しつつ、
「いらっしゃいませ。修理ですか?御購入ですか?」
見た目はともかく、普通に買って帰るなら文句を言う必要はないので、リンダがごく当たり前の接客をはじめる。
するとボスらしい男がリンダを無視してある1点をみつめた。
「おい。あれ!」
「あれはカサワR78ですよ!掘り出し物です!」
彼らが話題にしているのは、カウンターの中の壁際のケース内に展示しているカサワR78という古い軍用
「おい!それを寄越せ。安心しろ。金なら払ってやるぞ。俺は寛大だからな!」
なんで商品の代金を払うなんて当たり前のことが寛大になるのかはわからないけれど、彼らは随分と興奮しているようだった。
いわゆる
するとリンダは、
「申し訳ありません。これは売り物ではなく、展示してあるだけなんです。この通りちゃんと『展示非売品』と表示してありますので」
と、その銃が売りものでないことを説明した。
すると当然ボスらしい男が声をあげた。
「なんだと?俺がせっかく買ってやるといってるんだぞ?」
「ですから、あれは展示品で売り物じゃないんです」
リンダが必死に説明するが聞き入れる様子はなく、取り巻きの1人がアクリルプレートを殴り付けた。
「このアマ…こちらの方がどんな御方かわかって言ってるんだろうな?!」
直接危害は加えられないだろうけど、流石にヤバイと思ったので割って入ろうとした。
すると不意に奥の扉が開き、親父さんが姿を現した。
「すみませんねお客さん。
そいつはね、完全に壊れてて修理すらできないんだ。
ガワだけ整えて展示してあるだけなんだよ。ほら」
親父さんはカサワR78の入ったケースを開け、工具を使って銃を分解しはじめる。
すると、中身はひどいものだった。
錆びだらけで部品にはヒビが入り、
「わかったかい。本来ならガワだけが博物館に置いてあるような代物なんだ。だから『展示非売品』にしてあるんだ。それでも欲しいならお売りするが?」
ボスらしい貴族はわなわなと身体を震わせ、
「誰がいるかそんなゴミ!帰るぞ!」
そう怒鳴り付けてから店を出ていった。
『よくもこの俺にそんなものを売り付けようとしたな!極刑にしてやる!』とかわめき散らかさないあたり、確かにあの貴族は寛大なのかもしれなかった。
するとリンダは安堵のため息を付き、
「ねえ父さん。いい加減それ飾るのやめようよ」
と、うんざりしながら親父さんに訴えた。
すると親父さんは涼しい顔で、
「何をいうか。ちゃんと『展示非売品』と書いてあるものを欲しがるのがおかしいんだ。それに、本当に欲しいならこの状態でも欲しがるはずだ。それで金を出した時にこいつを出してやるんだ」
そうして親父さんが取り出したのは、きちんと手入れが施された、ピッカピカのカサワR78だった。
「いつかトラブルになるから、早く止めて欲しいんだけどな~」
盛大にため息をつくリンダに、僕は同情することしか出来なかった。
銃のメンテナンスが終わったあと、アニメンバーへ行って色々見たり買ったりして日も落ち始めたので、夕食を食べてから帰ろうとしていた時、不意に近くにいた
何なんだと思って
「ウーゾス君じゃない!ここでなにやってるの?」
その車には、もう会うこともない雲の上・銀河の彼方・画面の向こうにいる人、プラネットレースのチーム『クリスタルウィード』のエースパイロットのスクーナ・ノスワイルさんがいた。
が、何故か少し驚いた様子だった。
「お久し振りですねノスワイルさん。僕は用事と買い物の帰りですが?」
会うとは思ってなかったので非常に驚いたが、とりあえず質問に答え、
「今日合同同窓会なのは知ってるわよね?」
その言葉で彼女が驚いていた理由が理解できた。
「ええ。招待状をもらった時は、予定日の今日までに仕事が終了するか分からなかったので、欠席の返事をしておいたんですよ。久しぶりに話をしたい友人もいませんしね」
僕としてはごく普通の理由だ。
いわゆる仕事の都合という、社会人のよく使う言い訳だが、事実にも間違いない。
なにより当日になっていきなり参加したら、会場や幹事に迷惑がかかってしまう。
ノスワイルさんもその事を理解したらしく、
「そう…じゃあ失礼するわね」
「ええ。楽しんできてください」
にこやかな笑顔を浮かべ、車を発進させた。
まあ彼女なら同窓会も楽しいだろう。
何しろプラネットレースのスーパースターだ。
話題にも友人にも困ることはないはずだお。
さあ、早く帰って新しく買ったラノベを読まないと。
ヒロインサイド:スクーナ・ノスワイル
私が向かった合同同窓会の会場は、この惑星イッツでも5本の指に入る一流ホテル『スペラスホテル』の大ホールだった。
市立ノウレ高等学校の132期生全体だから相当な人数になり、会場はすでに人で溢れていた。
「あ!スクーナ様がいらっしゃったわよ!」
私が会場に入ると、すぐに女性に囲まれてしまった。
「この前のレースでの優勝おめでとうございます!」
「ゲートでの海賊退治の時の事を聞かせてください!」
「インペリアルガールズコレクションに出るって本当ですか?」
「そのスーツ姿も素敵です!」
「あはは…」
その状態で、私は愛想笑いを浮かべることしか出来なかった。
私は子供のころから背が高く、中学に入学してからはますます背が伸びて、卒業する頃には既に今ぐらいの身長になっていた。
私は決して女の子が好きな訳ではないのに、何故か女の子によくモテた。
女の子らしい格好をしていてもそれは変わらなかった。
あの事件の後はさらに囲まれるようになってしまった。
女子からの本気の告白を受けたこともある。
男子からも告白されたことはあったけど、あんまり記憶にない。
レーサーになってからも変わらずで、私のファンクラブは8割女性だ。
私は男じゃないのに…。
よく見ろー!私はこの通りスカートはいてるんだぞー!
貴女達と性別は一緒だぞー!
そんなことを考えながら女性達の相手をしていると、1人の男性が声をかけてきた。
「やあノスワイルさん。活躍は拝見しているよ」
高そうなスーツにネクタイ。
生まれながらだというストロベリーブロンドの人物だ。
「えっと確か…3年の時のクラスメイトの…」
もちろん名前は知っている。
でも名前をあんまり言いたくない。
そのぐらい、私はこの男が嫌いだ。
だけど、顔がいいのと金持ちなのもあって、当時からかなり人気があったらしい。
「アロディッヒ・イレブルガスだよ。酷いなあ、覚えてないなんて」
「レースやトレーニングが忙しくて、なかなかゆっくりする暇がないの。だから余計な事は忘れるようにしてるのよ」
私は
「じゃあ、今日はゆっくりするといいよ。俺も付き合うからさ」
そう言いながら、今度は顔を近づけてきた。
ひっぱたいてやろうかと思ったとき、周りから黄色い声が響いてきた。
「久しぶりだねノスワイルさん」
その原因は、
「お久し振り少佐殿」
顔を近づけてきた
彼にもあまり良い印象はないけれど、身体を触ったり関係を求めてくるような
「今は止めて欲しいな。僕たちは仮にも同級生だろう?」
困ったように笑いながら、常識的なところまで距離を詰めてくる。
それを見て、
『自分の女を横取りしやがって!』とか考えているんだろう。
私は早いとここの場から立ち去るために、思わず友人の姿を探した。
出欠をだす前に友人に確認しておけばよかった。
頼むからいて欲しい。
居なかったら…最悪ね。
ヒロインサイド:終了
今週にコロナワクチンの接種(2回目)をうけます。
どうなるか分かりませんので、次週は投稿をおやすみさせていただきます。
場合によってはということもありますので、ご理解のほどをよろしくお願いいたします。
前回副作用が少なかったので大丈夫だとはおもいますが、遺書を用意して見ようとおもいます。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします
まあ、遺書の内容はヤバイブツの処分になりますが…(大人な書籍やヤバイ資料etc…)