モブNo.34:「傭兵に依頼の斡旋をするのが受付の仕事です。それを拒否するなんてことはありえません」
主人公サイド:ユーリィ・プリリエラ
悔しい…。
悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい!
あんな俺より絶対に弱い奴に言い返せなくなるなんて!
今、俺を取り巻く状況は最悪だ。
姉さんが、俺の知らないところで、とんでもない事をしでかしていた。
それが発覚したために、姉さんは傭兵ギルドの追及から逃げ出し、今では賞金首だ。
そのせいで、俺までが姉さんと同じ不正をしていると思われている。
俺はまだ
だから俺は、不正なしで実績を上げる必要があった。
しかし、その為に依頼を受けたくても、姉さんの事件以来、殆ど受付嬢が手のひらを返すように俺を邪険にし始め、依頼を受けさせてくれなくなった。
それで焦っていたのもあって、色んな奴に喧嘩を売っていた。
あの、キモオタ野郎に喧嘩を売ったのも、その流れだった。
なんとなくはわかっていた。
喧嘩を売り歩いて勝利したところで、何にもならないことは。
あのキモオタの言葉に改めて ムカつきながらも、カウンターのあるロビーに向かう。
すると当然、受付嬢たちは、席を立ったり目をそらしたりと、あからさまに俺に仕事を受けさせないようにしてくる。
その時、
「こちらへどうぞ」
と、声をかけてくれた受付嬢がいた。
その
見たことがないから新人の受付嬢だと思うが、俺の噂を聞いていないはずがない。
場合によっては何かの罠という可能性もある。
もしくは受付嬢同士の罰ゲームで、無理矢理やらされているのかもしれない。
だが、仕事を受けれる可能性があるなら、
「仕事を受けたい…」
「
「ああ」
俺は言われたとおり、
「
彼女が見せてくれた
それはもちろん
しかし、俺の強さなら、あのキモオタ野郎と同じ、いや、それ以上の依頼だってこなせるはずだ!
「
「見てどうなさるんですか?」
俺の言葉に、彼女は驚き、怪訝な表情を浮かべる。
「依頼をうける。そして俺の実力を知らしめてやるんだ!」
俺は強い口調で宣言した。
すると、当然と言えば当然の言葉が返ってきた。
「残念ですが無理です」
「どうしてだ?」
「依頼がないんです。
流石は
「じゃあ
「だめです」
ならばとその下のをと希望したが、それもことわられた。
やっぱり嫌がらせか。
仕事を受けさせてやるような空気をつくり、その直前で却下する。
何て嫌がらせだ!
そう思って怒鳴りつけようとしたが、すぐに思い止まった。
なにを馬鹿なことを。
そう改めて理解し、深くため息をついた時に、
「貴方に何があったかは存じています。で、あるならば。尚更無茶な依頼をするべきではありません。身の丈にあった依頼を確実にこなしていくべきです」
彼女は、真剣な表情で俺にそう語りかけてきた。
「でも、次の仕事を受付して貰えるかどうかわからない…」
俺はその言葉に動揺し、不安を口にした。
すると彼女は、
「傭兵に依頼の斡旋をするのが受付の仕事です。それを拒否するなんてことはありえません」
と、いってくれた。
それはつまり、俺に対してちゃんと受付をしてくれるということだ。
俺は思わず目頭が熱くなった。
姉さんの事件以来、殆どの受付嬢が手のひらを返すように俺を邪険にし始めた。
でも彼女だけが、俺に手を差し伸べてくれた。
「ありがとう!俺…俺、頑張るよ!」
俺は思わず、泣きながら彼女の手を握りしめていた。
主人公サイド:終了
射撃訓練を終えてカウンターのあるロビーに戻ってくると、ヒーロー君がゼイストールさんの所で受け付けをしていた。
その光景は、イケメン若手傭兵と美少女受付嬢のやり取りにしか見えないが、両方とも『男』だ。
ヒーロー君は、お姉さんの事件と、それが理由でかなり荒れていたせいで、打算で彼に親切にしていた受付嬢達からは、相手にされなくなっていたらしい。
うん。その時の悲しい気持ちはよくわかるよ。
僕はギルドに登録した瞬間から始まり、今でもその状態だからね。
なので、彼にとっては久しぶりにまともに対応してくれた受付じ…受付係なんじゃないだろうか。
彼は感激の涙を流しながら、『彼』の手を握りしめていた。
まあ、ローンズのおっさんも同じ対応をしてくれたと思うけどね。
そして、その光景から目をそらしている受付嬢と、睨み付けている受付嬢がいた。
睨み付けているほうが、手のひら返しした方かな?
多いなあ…。6割はいそうだ。
目をそらしてる方は、少しは恥じ入るところがあった人達かな。
そして当然、その『男同士』の光景を、目をらんらんと輝かせ、空間に穴が開くんじゃないかと思うぐらい凝視し、過呼吸かと思うぐらいの荒い呼吸をしている、職員と傭兵の女性の集団がいるのは間違いなかった。
そして案の定、ヒーロー君を睨み付ける男性の集団がいるのも当然のことだ。
流石主人公、どん底から這い上がるためのイベントがすでにスタンバイ済みのようだ。
そうしてギルドの用事を終えて建物を出たときには、午後1時をすぎていた。
昼食がまだだったから、コンビニで何か買って帰ることにしよう。
うろついて、何かにからまれたらたまったものじゃないお。
そんなとき、街頭ビジョンに知った顔が現れた。
『ノスワイル選手!今回のスタークルスタス
『ありがとうごさいます』
それは、学生時代に僕と同じ事件に巻き込まれて生き残り、現在はプラネットレースチーム『クリスタルウィード』のエースパイロットのスクーナ・ノスワイル嬢だった。
どうやらまたレースに勝ったようだ。
『今回のレースはフリントロック
『確かにフリントロックは危険ですが、砲撃はしてきませんから』
『なるほど!さすがに実戦を体験した方は違いますね!』
どうやらノスワイルさんも頑張っているらしい。
現れたのが、生身の本人じゃなかったのをほっとしつつ、家路を急ぐことにした。
とりあえず、明日は1日アニメ三昧だお!
モブの出番が少なく、申し訳ありませんでした。
トラブルを引き起こすと、周りの人達の態度が変わったりするのはよくあることです。
受付嬢達の気持ちもわからなくはないですが、
プロとしてはどうでしょう?
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