モブNo.31:「お久しぶりですなウーゾス氏!」
向こうの星、惑星ガライフで報酬を受け取った後。
僕たちは解散し、各自バラバラの行動をとった。
どうして往復で仕事を受けないのか?
理由は簡単。依頼人が片道分しか依頼していないからだ。
往復の依頼もあることはあるが、復路が開始されるまでの待機料金が発生する事になる。
待機する期間が長いとかなりの出費になるため、大抵は片道だけだ。
ちなみに解散した後は、
レビン君は海賊討伐。
バーナードのおっさんは休暇。
モリーゼは別の護衛依頼に。
アーサー君とセイラ嬢は、今回の事件解決の立役者として、軍のレセプションに呼ばれている。
僕は、幸い惑星イッツへのゲートが近くにあったので、直ぐに引き返すことにした。
ちなみにレセプションへの招待状は、僕とバーナードのおっさん以外には届いたらしい。
まあ、例え届いたとしても辞退していたので問題はない。
ちなみに
緊急事態以外で免許のない人が船の舵を勝手に動かした場合、間違いなく逮捕案件なのだが、そのお陰で命拾いしたのも事実なので、緊急事態だったということにして、逮捕だけは勘弁してもらったらしい。
癇癪持ちで我が儘ではあったが、部下の手柄を横取りしたり、自分の失敗を部下に押し付けるような人ではなかったらしく、さらには自分の非を素直に認めたのも、情状酌量があった理由だろう。
行きと違って、のんびりとしたペースで本拠地である惑星イッツに戻って来た時、いつものカウンターではなくロビーで、ローンズのおっさんに出くわした。
いつものスーツ姿ではあったが、なんとなく浮かれた様子だった。
「珍しいね。こんなとこにいるなんて。どっかいくの?」
「休暇だ。久しぶりに妻と娘に会うんだよ♪」
ローンズのおっさんは、嬉しそうにネクタイの結び目を調整する。
「じゃあ僕もしばらく休みかな」
「一応引き継ぎは頼んであるぞ」
「女の子だと酷い目に遭うの間違いないんだけど」
「男だから大丈夫だ」
以前にもローンズのおっさんが休みを取った事があり、その時には引き継ぎをした女性職員に応対をしてもらった。
もちろん、彼女に対して失礼な態度は取らないし、喋り方も服装も気をつけた。
街中の色んなお店の女性の店員さんなら、普通に対応してくれる格好や態度だったはずだ。
ちなみに僕が傭兵になって一番最初に話しかけた女性職員は、
『ちっ…。すみません。処理がたて込んでおりますので別の窓口にどうぞ』
と、不機嫌満載であしらわれた事がある。
幸いその彼女はそんなこともなく、なんの問題もなく、仕事を紹介し、手続きをしてくれた。
しかし、それを見ていた傭兵の1人が、
「おい貴様!彼女が嫌がっているのがわからないのか?とっとと失せろ!」
そういって、
受付の女性職員は、そいつに対して抗議をしていたようだが、そいつは聞く耳をもたず、
「大丈夫!こんな醜い奴は直ぐに追い払ってあげよう!」
自分の言葉に酔いながら、女性職員にアピールをしていた。
ムカついたので反撃してやってもよかったけれど、
後ろからは、そいつの仲間らしい連中が、僕に向かってバカ笑いをしていた。
後から分かった事だけど、そいつは有名な貴族のアホボンで、今は
さらにはヒーロー君もいる。
ともかく、あんなのは2度とごめんだし、まともな受付の人達に迷惑はかけたくない。
ちなみに惑星ガライフで報酬を受け取ったのも男性の職員からだ。
「まあ休みはとるよ」
元々休暇はとるつもりだったので、おっさんが帰ってくるまで延長してみることにしてみる。
そこに、ローンズのおっさんが耳早い話を振ってきた。
「そういや聞いたぜ。レセプションを断ったらしいな」
「まあね。めんどくさいから」
実際は違うが、否定するのもめんどくさい。
軍としては、誘ったが断られたと言った方が、初めから誘わなかったより体裁が良いからだろう。
そのうちに時間がきて、ローンズのおっさんは家族に会うべく、惑星内の航空機に乗るために、ギルドを後にした。
僕もさっさと帰って寝ることにしよう。
翌日は、部屋の掃除を終わらせた後、『アニメンバー』へと足を進めることにした。
久しぶりのアニメショップはやっぱり落ち着く。
このビルは、アニメ・マンガ・ゲーム・同人誌・トレカ・ホビーなどの全てつまったありがたいビルだ。
この惑星イッツにすむオタクたちは大抵ここにやってくる。
店員は、アニメキャラのコスプレ衣裳を着たり、わざわざ外装をアニメキャラそっくりに換装したりしているアンドロイドまでいる。
そして、傭兵ギルドの一部受付嬢と違い、客によって態度を変えたりはしない。
まあ、男性客2人組を見て興奮している女性店員や女性客がいたりはするけれど。
お、僕の好きな漫画の新刊でてる。
あのラノベのコミカライズでたのか。買っとこう。
そんな感じでアニメンバーを堪能していると、不意に声をかけられた。
「お久しぶりですなウーゾス氏!」
そこにいたのは、高校2年からの友人のクルス・アーノイドだった。
「おーアーノイド氏!相変わらず?」
「二次でも三次でも美少女は尊い。その尊さを追及しているとも!」
クルス・アーノイドは、顔と両腕の肘までを、強化外骨格で被っている、僕とゴンザレスの友人である。
ちなみに学校は違う。
知り合ったのはコミックマルシェの会場だ。
彼は中学に入る直前に、火災事故で両腕と顔にでかい
いまではかなり研究が進み、始めは腕全体だったのが、手首までは元に戻り、顔の方も6割は戻っているらしい。
ちなみにかなりのイケボなため、趣味でやってるゲーム実況はかなり人気らしい。
ちなみに僕が傭兵をやっていると知った時の第一声が、
『美少女傭兵には会った?できればのじゃロリとか最高なんだけど!?』
である。
これでも彼は役所の職員だ。
まあ、役所にはそういう趣味の人が多いらしい。
カレンダー通りの休みで残業もないため、イベントなんかにも行きやすいからだそうだ。
久しぶりな事もあって、適当なファーストフードの店にはいり、久しぶりのオタトークを楽しんだ。
どうせなら夜通しといきたかったが、僕もクルスも午後からは予定があったので、昼過ぎくらいで切り上げた。
新たな友人の登場です。
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