モブNo.26:「こんにちは。ネイマ商会の護衛参加の方ですか?」
レーダーの有効距離について再度ご指摘をいただきましたので、改訂いたしました。
前回の報酬を受け取ってから2日後。
毎度の事ながら、傭兵ギルドのカウンターで、僕はローンズのおっさんと無駄話をしながら、次の依頼の吟味をしていた。
「じゃあ、今のところ多いのは商船団の護衛なわけだ」
「ああ、軍と警察が躍起になって海賊狩りをやってるらしくてな。海賊の手配書がどんどん消えてるんだ」
おっさんは、こっちの仕事が無くなっちまう。と、どことなく疲れた顔をする。
しかし本来なら、軍や警察が海賊を退治するのは当たり前の事だ。
問題は、何で躍起になってるか。だが、考えたところでどうしようもない。
「でもそれなら護衛は雇わなくていいんじゃ?」
「まあ、海賊がゼロになったわけではないからな。安全をカネで買うのは至極まっとうな考えだ」
おっさんは
自分で探せということだろう。
「では、条件の合う奴はあるかなと…あ」
「どうした?」
僕の声に、コーヒーではなくミネラルウォーターを手にしたおっさんが声をかけた。
「これ。あのヒーロー君をえこひいきした侯爵家だ。今度は10人になってる」
おそらく、彼の姉が犯罪者になったことから、専属を解約したんだろう。
「そのヒーロー君がエライことになったろ?だから今回はまっとうな依頼を出したってとこだな」
おっさんも、はっきりは言わないが、その辺りを示唆しているのは間違いない。
「受ける人いないとおもうけどね」
以前やらかした事がやらかした事だけに、かなり厳しいだろう。
やらかし侯爵の依頼を無視し、
「お、受付期限が今日までの商船団護衛がある。募集人数は6名・ミーティング日は明日の13時にNo.53の
「ミーティングには遅れるなよ」
ミーティングとは、こういった商船団護衛のような、小規模複数人での依頼の場合に行われる
以前は当日に行き当たりばったりでやっていたために、トラブルやミスが多発していたらしい。
さらに出発日がミーティングの翌日でないのは、ミーティングでもめて、募集のやり直しなんて場合があるからだ。
そうして手続きを済ませると、改めて『
翌日僕は、昼食を早めに済ませて傭兵ギルドの
ここには120もの
えーと、今回のミーティングルームは…No.53…ここだな。
ちなみに集合時間の10分前に到着が、遅刻をしないコツだ。
誰もいないと思うが、一応ノックをしてみる。
「どうぞ」
と、返事があって驚いた。
まさかこんなに早い人がいるとは思わなかった。
「失礼します」
「こんにちは。ネイマ商会の護衛参加の方ですか?」
中にいたのは、明らかなイケメン青年と、ライトグリーンの髪色の美少女だった。
青年は爽やかな笑顔を向けてくるが、美少女の方は『せっかく2人きりだったのを邪魔しやがって』といった表情だ。
「ああ、参加者で間違いない。君たち2人も関係者でいいのかな?」
「はい。自己紹介は集まってからでいいでしょう」
必要最低限の会話を済ますと、彼らから一番遠い席に
座った。
それから5分後、
「お、早いんだな。遅刻したかと思ったぜ」
僕よりはるかに歳上の、そしておそらく、ローンズのおっさんより歳上の男性がやってきた。
「こんにちは。ネイマ商会の護衛参加の方ですか?」
「おう。よろしくな」
そのおっさんは僕の対面にどっかと座った。
それからさらに3分後、タンクトップにカーゴパンツにレザーのグローブという、闇市商店街にたむろしてそうな青年が無言で入ってきた。
真面目青年が彼に声をかけると、
「こんにちは。ネイマ商会の護衛参加の方ですか?」
「ああ、さっさとはじめろよ」
不機嫌なような、格好をつけているような雰囲気で返事をする。
「あと1人来てないんですよ」
「ちっ!」
しかしまだ人数が集まって無いことを告げると、舌打ちをし、腕を組んで黙りこくってしまった。
そして2分後の集合時間ギリギリの13時。
「やーわりぃわりぃ!時間あると思ってメシ食ってて遅くなっちまった!」
背の高い、筋肉質な女性が入ってきた。
発言から考えると、かなり時間にルーズな人のようだ。
「遅せえんだよ!」
「ん?でもギリギリ遅刻はしてねえだろ?」
闇市青年が文句をいうが、何処吹く風だ。
「ネイマ商会の護衛参加の方で間違いないみたいですね」
真面目青年は少し困った顔をしながらも、話を進行させた。
「ではまず自己紹介といきましょう。僕はアーサー・リンガード。
「私はセイラ・サイニッダ。
僕より早く来ていた2人は、恋人同士でもあるらしい。
「バーナード・ザグだ。
その発言に、本人以外の全員が、『集まった中で一番の歳上が、なんで
「ああ、ちょっと前まで警官やってたんだが、へまをしちまってな。再就職したんだよ」
という、本人の説明で納得がいった。
「俺はレビン・グリセル。
闇市青年はムスッとした表情を崩さず、うざったそうに自己紹介をした。
多分間違いなく闇市商店街の常連だな。
「あたしはモリーゼ・ロトルア。
一番最後に来た彼女は、僕と同じ
高い身長に筋肉質な身体。雰囲気からして、腕のいい傭兵なのは間違いない。
「僕はジョン・ウーゾス。
全員が自己紹介をしおわると、真面目青年=アーサー君が、僕とギリギリ女=モリーゼさんを見つめてきて、
「ではミーティングを始めようと思います。普通は一番
と、いってきた。
すると、その彼の横にいるライトグリーンの髪色の美少女=セイラ嬢は、『アーサーからリーダーの座を奪う奴は許さない』とばかりにプレッシャーをかけてくる。
「僕は仕切りは苦手だから、お願いするよ」
「あたしもだ」
元々リーダーシップを取るのは苦手だから、丸投げ出来るならしておく。
アーサー君は真面目そうだから無茶は言わないだろうしね。
モリーゼさんは純粋な怠惰だろうけど。
そしてその結果に、セイラ嬢は満足げに鼻を鳴らしていた。
「ではまず護衛のポジショニングですが、
「この人数ならそれが一番だな」
おっさん=バーナードが煙草を取り出しながら同意する。
「後は、誰を何処に配置するかですが」
「上下には探査の広い船が定番ですわね。
「あ、僕のもそれなりに広いんで」
僕が名乗りをあげると、ものすごい形相で睨んできたが、
「では御二人で上下をお願いします。頼むよセイラ」
「はい!おまかせください!」
アーサー君に声をかけられると、一瞬で表情が
「あたしの船は頑丈だけど足が遅いから前でいいかい?」
「俺の
それぞれ、すんなりと前後が決まり、
「じゃあ、俺とお前さんが左右だな」
「現場では僕の判断で動いてもらいます。報・連・相は確実にお願いします」
こうして意外にもあっさりと、特にもめること無くミーティングは終わった。
それだけに、なんとなく不安だ。
次は護衛です。
傭兵は基本何でも屋な雰囲気があります
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