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モブNo.21:『あー気持ち悪い』

戦闘描写は苦手です

ついに戦闘が始まった。

僕は左翼に配置され、ロスヴァイゼさんも左翼に配置された。

彼女の言葉や行動はともかく、頼りになるのは間違いない。

これで左翼での生存率は高くなったが油断は禁物。

みっともなかったとしても、生き残るための立ち回りをするつもりだ。

なにしろ向こうは、か弱いフリした男爵夫人を守るために、使命感に燃えている連中だ。

宇宙空間に、大小数百の艦艇の集団が2つ。

小惑星帯(アステロイドベルト)に近づいているような錯覚を覚えながらも、双方から放たれた火線が、岩石ではないことを嫌でも教えてくれる。

僕は操縦桿を握り直すと、バリアを張り、火線に向けて船を進めた。


「ふー。いまのは危なかったー!」

戦闘開始から1時間。

敵右翼は動きもよく、こちらを的確に狙ってくる。

しかし、やはりあの姉弟に勧誘されたり、ろくに下調べせずに男爵夫人側に付いた連中のほとんどは、自信だけはある連中なだけに、たとえ即席でも連携が全く出来ていないし、人によっては口ほどの腕がなかったりする。

そのあたりが付け入る隙になり、こちらが何とか勝利できている状態だ。

そして凄いのが、やはりロスヴァイゼさんだ。

速度・反応・機動の全てが人間以上であり、火力も凄まじい。

そんな時に、右翼が押されぎみという情報がはいった。

ちなみに中央は拮抗し、僕とロスヴァイゼさんのいるこの左翼は押しぎみ状態らしい。

とはいえ今の戦場を離れるわけにはいかず、そのまま戦闘は続けられる。


そしてそれから30分後。

敵右翼は8割が撃墜・逃走し、残った2割も戦意喪失か戦闘不能状態だ。

この戦果の7割は、イキリ君ことロスヴァイゼさんによるもの。

やっぱり意思のある古代兵器はすごいね。

勿論そんな事実は本隊にも伝えられる。

その情報を聞いた本隊から、全軍の位置をずらして、三方から包囲する作戦が通達された。

しかしその時。

同時に右翼の7割がこちらを裏切り、残りの右翼部隊と本隊に攻撃をしかけてきたと、全軍に通達があった。

やられた。

どうやらあの姉弟が仕込んだことなのだろう。

そこに本隊からさらに通達があった。

『本部より通達。左翼部隊の半数は右翼の支援に向かえ!繰り返す!左翼部隊の半数は右翼の支援に向かえ!残った左翼部隊はそのまま前進!敵本隊に少しでもダメージを与えてくれ!部隊分けはそちらに任す!』

その通信を聞くと同時に

『では私は右翼に行ってきますので!』

ロスヴァイゼさんはにこにこしながら、物凄いスピードで右翼に向かった。

多分、傀儡(あいぼう)を探しに行くんだろう。

もしくは暴れ足りなかったのかもしれない。

ロスヴァイゼさん=ランベルト・リアグラズ君が右翼に向かったのを、何人もが確認し、半分くらいがその後を付いていった。

多分おこぼれを狙いに行ったんだろう。

だが僕は行くつもりは無い。

向こうはなんとなく嫌な予感がするんだよね。



主人公サイド:ユーリィ・プリリエラ


「よし!ロセロ伯爵軍右翼潜伏部隊は反転後に砲撃開始!グリエント男爵軍左翼部隊は砲撃後に前進!貞淑で麗しいグリエント男爵夫人に勝利を捧げるぞ!」

俺の命令で、その全ての部隊が動きはじめる。

さすが姉さんだ。

説得して、男爵夫人側に引き込んでおきながら、あえて敵陣営に送り込み、敵左翼が前進したのを見計らってから寝返らせる。

単純だが効果的な作戦だ。

右翼には、チャラそうな奴や姉さんに色目を使った奴。俺に色目を使って来た奴なんかを配置しておいたから、潰れたとしても惜しくはない。

このまま前進し、男爵夫人に因縁をつけて国宝を奪おうとする醜い伯爵風情は、この俺が宇宙の塵にしてやる!

そのとき、味方から報告が来た。

『敵機襲来!機影は1!いえ、その遥か後方に多数の機体を確認!中央を突っ切って来たようです。機影は…呼出符号(コールサイン)ロスヴァイゼ!()()ランベルト・リアグラズです!』

あいつか。今間違いなく(キング)階級(ランク)に近い男。

伯爵側につくとは愚かな奴め。

正義を行うこの俺に挑んでくるか!

相手にとって不足はない!

『あいつは俺が相手をする。敵本隊は頼む!』

俺はスロットルを開き、悪の手先(リアグラズ)に向かっていった。

どちらが強い(正義)か証明するために!


くそっくそっくそっくそっくそっくそっ!

なんでだ!?なんでこの俺の攻撃が当たらないんだ!

あとからやって来た雑魚は、奴との戦闘の余波程度でバンバン落とせたのに!

『しっかりしなさいユーリィ!』

俺の必殺のパターンをことごとく潰され、かなり頭にきていたところに、姉さんの声が響いた。

目の前に居たなら、頬の一発ぐらい張られていただろう。

『あの男は男爵夫人が所有する国宝を奪おうとする伯爵の手下よ!しょせん私の神託(せっとく)を聞き入れない男は生きる価値はないわ。

女性が優雅に快適に生きていくために、私達が負けるわけにはいかないのよ!』

その姉さんの言葉で、僕は冷静さを取り戻した。

「わかってるよ姉さん!僕らはか弱い女性の味方。それは正しいことだ。」

改めて気合いを入れ直し、悪の手先(リアグラズ)を睨み付ける。

その時、誰かがオープン回線で話しかけてきた。

『あー気持ち悪い』

それは、()()()()()()()()()()()()()だった。


主人公サイド:終了



ヒロインサイド:ロスヴァイゼ


戦闘中、プリリエラ姉弟の会話を盗聴し(聞い)ていましたが、その会話の内容は気持ち悪いの一言でしたね。

ファディルナ(あの)・プリリエラ(おんな)のあからさまな女尊男卑は、単に自分の欲望を満たすためのお題目。

おまけに自分の弟を、女性(じぶん)の話だけを鵜呑みにするように調教(きょういく)したのでしょう。

私に生体の身体があったら、確実に嘔吐をしていましたね。

そのあまりの気持ち悪さに、思わずオープン回線で呟いてしまいました。

ちなみに戦闘中は、気絶男(ランベルト)立体映像(ホロ)を投影し、音声も合成しているので問題はありません。

それにしても、よくファディルナ(あん)・プリリエラ(なの)司教(ビショップ)階級(ランク)になれましたね。

ちょっと調べてみたところ、あの女は惑星イッツ支部の所属ではなく、惑星ダアデの所属で、今回は弟に話を聞いてわざわざやって来たみたいですね。

すると、ファディルナ(姉の)・プリリエラ()が、ランベルト()に話しかけてきました。

『私は全銀河の女性のために活動をしているわ。それが気持ち悪いですって?愚かなことね。でも今なら許してあげる。愚かで醜い伯爵を始末してくれるならね』

明らかにこちらを見下しながらも妖艶な表情をしています。

どうやら気絶男(ランベルト)が自分の美貌に舞い上がり、味方になると確信しているようですねファディルナ(この)・プリリエラ(おんな)は。

おそらく男爵夫人がろくでもないのは承知の上、それでも味方をするのは、ギルドを通さない報酬でももらっているのでしょう。

『やれやれ仕方ない。少し痛め付けて大人しくさせるつもりだったが、人を気持ち悪くした責任を取ってもらう!』

少しは気絶男(ランベルト)っぽく話せたとは思います。

まいど気絶男(ランベルト)の手柄になるのは納得がいきませんが、この気持ち悪い姉弟を、少しばかりしつけてあげることにしましょう。


ヒロインサイド:終了

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