モブNo.17:「あんたのその無駄に色々デカくてエロい身体に目が行かないとは…あのオタ傭兵…何者っ!?いや、ヘタレなだけなのか?」
少し訂正しました
波乱の論功行賞が終わると、どっと疲れが襲ってきた。
2時間ぐらい仮眠をとろうと、
ちなみにフィノ嬢の行動と決断は、その場にいた全員からは称賛の嵐だった。
俺様君と同じギルドの連中から聞こえてきた話によると、『新人にしては腕がいいが、頭の悪い貴族にありがちな我が儘野郎』というのが、俺様君の評価らしい。
そう考えると、無関係な他人すら自分の使用人扱い。とかをしていない分、ヒーロー君の方がまだマシだ。
迷惑のベクトルが違っているだけと言えなくもないが。
すると、途中にある談話室から、その聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「素晴らしいです!ミス・ノスワイル!貴女はやはり素晴らしい女性だ!」
「あ、ありがとう…」
談話室でそのヒーロー君が、ノスワイルさんの手を握り、ずいぶんと感動しているようだった。
どうやらさっきの援軍に参加していたのだろう。
ノスワイルさんはかなり引いているみたいだけど…。
よく考えると、ヒーロー君やノスワイルさんは、ロスヴァイゼさんの攻略対象なんじゃないかな?
見た目も腕もいいわけだし。
ともかく、見つかると五月蝿いのでさっさと通りすぎることにしよう。
無事に
「ちょっといい?」
そのお客はノスワイルさんだった。
そして最初の時のように、建物の外にある庭に向かった。
「それで、何の御用ですか?」
「お礼を言っておこうとおもってね。戦場で色々フォローしてくれたでしょう?理由。聞いてもいいかな?」
そんなものは決まっている。
「貴女が怪我をしたり、まかり間違って撃墜なんかされたら、知り合いだったってことだけで、全部僕の責任にされてしまうからですよ」
なにを
彼女に対しては思いやりの無い言い方になるが、誤魔化した事をいって、間違えられるよりはいい。
「あはは…ごめんね、なんか」
「慣れてるから大丈夫ですよ」
彼女も、自分の影響力とマスコミがどんな記事を書くかは理解しているようだ。
「そう言えば、傭兵ギルドの特別賞与と感謝状を私がもらっていいの?」
彼女は不安そうにそう訪ねてくる。
あの時の壇上に上がった時の彼女の表情が、かなり困惑していたのは、ほんの数十分前の事だ。
明らかに組織の人間ではないのに、表彰するというのは異例なことであり、むしろ自分たちの見せ場を取られたと、敵視してもおかしくないからだ。
「あれは多分、貴女が所属する『クリスタルウィード』の貴族スポンサーからの指示かなんかあったんですよ。
『たまたま巻き込まれたプロのプラネットレーサーが、本物の戦場で、凶悪な宇宙海賊を、プロの傭兵以上に撃墜した』
この宣伝効果は凄まじいでしょうね。
あとは、傭兵ギルドが太っ腹な所を見せて、新規入会を促す感じかな。
まあ、軍とかなんかの別の思惑が裏にあるのかも知れませんが、僕にはわかりませんね」
推測の域を出ないが、多分この辺りの理由で、傭兵ギルドは彼女に特別賞与と感謝状を贈呈したのだろう。
さらには彼女が有名人な上に、美人なのもあって、俺様君以外からは不満も出なかったのは、偶然なのか狙い通りなのかは不明だ。
とりあえずこれで話は終わったかな。
そう思っていたところに、彼女から声がかかった。
「ねえ、ウーゾスくん。うちのチームに入って…は、くれないわよね」
それは、前にした勧誘の話だった。
しかし、僕の考えを知っているだけに、すぐに引っ込めてしまった。
このへんが、リオル・バーンネクストとは違う所だ。
「はい。残念ですが無理です。あの俺様君程じゃないけど、傭兵なんてみんな我が儘で気ままなものですからね。傭兵ギルドぐらいが丁度いいんですよ」
改めてお断りをすると、彼女はちょっと寂しそうな表情をしたが、すぐに表情を変えた。
「じゃあせめて、私のレースを見に来てほしいかな。出来ればグランドチャンピオンレースとか」
「たしか一番でかいレースだっけ?チケット争いが凄そうだけど」
はっきり言って超プラチナチケットだ。
既に予約とか終わってるんじゃないかな。
その時、彼女の
「ごめんなさい。今度のレースの対策会議あるの忘れてたわ」
彼女は慌てながら、
「チケットがとれたらレース場で会いましょう!またね!」
「まあ、とれるようなことがあったらまた」
社交辞令の挨拶を残して、その場を去っていった。
まあ、もう会うこともそうそうないだろう。
雲の上、いや銀河の彼方にいる人だからな。
ノスワイルさんとの話が終わり、
「おい貴様!」
ヒーロー君に絡まれてしまった。
ならば、言っておかないといけないことがある。
「言っとくけど、ここで先に仕事をしてたのはこっちだからね?」
君の後を追いかけて嫌がらせに来たとかしてないからな?
むしろそっちがここにやって来たんだ。
文句を言われる筋合いはない。
しかし、ヒーロー君がからんで来たのは違う理由だった。
「なぜお前なんかがミス・ノスワイルと会話をしていたんだ?!」
あーこれはあれだ。
最初にノスワイルさんと一緒にいた時の様子を見れば解りそうな事じゃないか!
だが、やましいことなんかはしていない。
彼女が、僕に助けてもらったからと、お礼を言ってきただけだ。
「戦場で助けてもらったんでね。そのお礼を言ってただけだ」
しかし、彼女が僕に助けてもらってお礼を言った。
なんてのを、
だったら信用するように話せば言い。
「だとしてもお前みたいなやつが話しかけるな!」
「いや。それじゃお礼が言えないじゃん」
「彼女のマネージャーに伝えればいいんだ!」
「いやマネージャーさん船にいるみたいでここにいないし…」
甘かった。
どうやら内容に関わらず、話しかけられただけでアウトらしい。
彼女が貴族の令嬢ならともかく、そうではないのだから、話すくらい問題はないだろうに。
やっぱり
「とにかく彼女に近づくな!話しかけるな!見るな!話しかけられるな!いいな!」
いや、見るなと話しかけられるなは無理だお。
また殴りかかってくるかと思ったけれど、今回はなかった。
多分、ノスワイルさんを探しに行くため、時間を惜しんだんだろう。
さすがにこれ以上はもうなにも起こる事はなく、仮眠を終えた後は、つつがなく依頼が終了し、帰路に着くことが出来た。
ヒロインサイド:スクーナ・ノスワイル
2回目も断られちゃった…。
彼の状況判断や戦場を見る『眼』があれば、レースはもちろん、今後の活動にも大いに活躍してくれそうなのに。
彼の性格や立場からして、今の私に近づきたいと思わないのは理解できる。
さっきみたいな、異様に熱心なファンがいたり、マスコミにつきまとわれたりする
私も
その理由は、嫌な言い方をすれば見た目だ。
マスコミにとっては、それなりの見た目の
本人は目立つのが嫌いなようだから、願ったりかなったりの結果らしいけど。
そんなことを考えながら『
「おっかえりー!首尾はどうだった?」
私と同じプラネットレースのパイロットであるアエロが声をかけてきた。
「やっぱり断られちゃった」
「そっかー。あの『眼』は是非とも欲しかったんだけどねー」
「『眼』がいいから断られたのよ」
実は彼女を含めた何人かが、
以前の、私達の拠点を囮にした目眩まし作戦の時、銀と黄緑に羽兜のマークの付いた機体と、黒一色の機体を除けば、一番効果的な働きをしていたのが彼だった。
私がリモート操作していた戦闘艇を、あっさりと何機も撃破してくれた。
「あの『千里眼』。『戦術眼』だっけ?あれがあったら、レースも作戦も楽できそうなのに~」
アエロは残念そうに呟く。
「ねえスクーナ。色仕掛けとかはやってみたの?!」
そして、不満そうな視線を向けながら、とんでもない事をいってきた。
「そっ!そんなとこするわけないでしょう!それに、私には興味がなさそうだったしね」
自分の顔やスタイルに自信がないわけではない。
レース場やパーティー会場で、絡み付くような視線を感じることは何度も体験した。
しかし彼からは、そういった視線は感じなかった。
どちらかと言うと、美術品や絵画を見るような視線だった。
「あんたのその無駄に色々デカくてエロい身体に目が行かないとは…あのオタ傭兵…何者っ!?いや、ヘタレなだけなのか?」
アエロは、考え込むような顔をしながら、胸を揉むような手付きを始めた。
「エロい身体とか言わないでよ!」
アエロは明るく可愛らしい感じの娘だけど、そういう方向にはものすごく下品だ。
「まー、無理強いしたらロクなことにはならないものね。あ、
「しないわよ!」
脈もないのにしたって意味はないわよ。
ちょっと悔しいけど…。
私は頭を抱えながら、アエロと一緒に会議室に向かった。
ヒロインサイド:終了
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