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女皇帝との夜

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戴冠式が終わり、黒龍城に戻って夜は晩餐会を迎える八雲―――

―――戴冠式と会談を終えた後


同じ馬車で一緒に黒龍城へと戻ってきたヴァレリアとシャルロット、それにユリエルと自分の馬車でついて来たフレデリカが到着した―――


「はあ~疲れた……」


「―――大丈夫ですか?八雲様」


八雲の言葉にヴァレリアが心配そうに横から覗き込む。


赤いストレートロングの髪を揺らし、淑やかな笑顔で細まった茶色い瞳を向ける美しい少女。


思わぬ不意打ちの笑顔に八雲は少し照れながら、


「ああ、大丈夫……です/////」


(前屈みになるとけっこう胸あるんだな……)


と横から覗いてきた時に開いた胸元から見えた、ぷるん♪ としていた胸に視線がロックオンされてしまう八雲。


「ンッ!ンンッ!!―――撃ち抜くぞ……/////」


その視線に真っ先に気がついたサジテールが咳払いをして恐ろしい言葉を告げてくる……弓使いは眼がいい。


「……どこの部位をですかね?」


サジテールの視線が下半身に狙いを定めているので恐る恐る八雲は確認する。


「フンッ!―――自分で考えろ!!この色情魔め!!/////」


そう吐き捨てるように叫んでサジテールは去っていった。


「しきじょうま?とは、どういう意味でしょうか?」


純粋なヴァレリア王女には縁のない言葉だったようで八雲にその意味を問い掛けるがどう答えたものか迷っていると、そこにフレデリカが寄って来て、


「ふふっ♪ ヴァレリア王女、さっきの言葉は彼女の照れ隠しで少し悪口を言ったのですわ。王女は使わないようにしてくださいまし」


そう上手く説明してくれるとヴァレリアも納得したようで、


「そうなのですね!分かりました。ありがとうございます♪ フレデリカ陛下」


「ふふっ♪ これからは八雲様の妻となる者同士、公式な場でなければお互い名前で呼び合いませんか?わたくしもヴァレリアと呼びますから、どうかわたくしのことはフレデリカとお呼びくださいな」


「そ、それは、エーグルの女皇帝となられた方を呼び捨てには出来ません!ではフレデリカ様と」


「分かりました。でも、慣れてきたらフレデリカとお呼びくださいね」


「ど、努力致します……」


そんなふたりのやり取りを見て上手くやっていけそうだと八雲はホッと胸を撫で下す。


「―――ところで、八雲様はこのあと何かご予定でも?」


「そうだな。保護したエルフの子達の家をドワーフ達が仕上げているはずだから、その作業の進捗を見に行こうと思っている。夜はエドワード王達も黒龍城に来て身内での晩餐会の予定だから、それまでは自由かな」


「そうですか……では……」


八雲の耳元に唇を近づけたフレデリカはそっと囁く―――


「―――では、今晩お邪魔致します♡/////」


―――急接近したフレデリカのふわりとした甘い香りが八雲の鼻孔をくすぐり、その言葉でカッと顔が熱くなるのを覚える。


「お、おう/////」


そう答えるのがやっとだったことに八雲は自分が意外なところでヘタレだと認識してしまった。


そんな八雲とフレデリカの秘めた話は聞こえていなかったヴァレリアは―――


「で、では、ついて行ってもよろしいでしょうか?/////」


―――そう声を奮って八雲に告げるがヴァレリアはヴァレリアで八雲との距離を詰めようと一生懸命だった。


「いいけど、面白くはないと思うぞ?」


「―――かまいません!けっしてお邪魔はしませんので!」


思いがけない一面を見せてきたヴァレリアに驚いた八雲だが、そんな懸命な姿が少し眩しく思えて連れて行くと約束した。


「おっと、その前に少しやりたいことがあるんだった。こっちだ」


ヴァレリアの手を取って八雲は先を歩くが、突然手を繋がれたヴァレリアは顔を真っ赤にして八雲のあとについて行くしかなかった―――






―――移動した先はシュティーアの工房だった。


「おーい!皆!家はどんな感じだ?」


工房でエルフの娘達の家に使う家具や道具を造っているドワーフ達に八雲は大声で問い掛ける。


「―――御子様!へい!必要な家具なんかはほとんど揃いやした!あとは持ち込んで設置するだけでさぁ!」


「おお!いいペースだな!これならもう明日から住むのも出来そうだな!」


「あとは寝具なんかを揃えるだけでいけそうですぜ!」


「ようし!いいか!―――安全第一!!」


「百人乗っても、でぇ丈夫!!!」


謎の掛け声で気合いを入れる八雲とドワーフ達を見て―――


「……いまのはなんなのですか?」


―――と問い掛けるヴァレリアに、


「ああ、家を建てる時の掛け声みたいなもんだよ。気にしないで」


「はあ……そうですか」


八雲は笑顔で答えて工房から外に出ると近くの広場に向かい魔術飛行艇エア・ライドを『収納』から取り出すと『創造』を発動する。


「―――あの、今度は何を?」


「ん?ああ、コイツに何度も乗って改良したいところがあったから、今のうちにチョチョイと改造しておこうと思ってね。すぐ終わるから」


以前から使っている魔術飛行艇エア・ライドだがやはり乗っているとここをこうしたいといった改善点が見えてくるもので、この機に改造してからエルフの家を見に行くことにしたのだ。


車高が高いと感じていたところを下げ、正面に大きく取り付けていたバイザーボディーを透明度のあるキャノピータイプに取り換え、全体的に空気抵抗なども考えて低く纏め、スマートなボディへと造り変えていった。


風属性推進部もさらに外部装甲部の硬度を上げて八雲の魔力を込めてもそう簡単には破損しないように強度を上げ、だが燃費と言える魔力消費は少なくて済むように付与魔法を重ね掛けして燃費軽減を実現したがそれでもまだ常人では枯渇させるほどの燃費だった。


「―――出来たぞ」



挿絵(By みてみん)



新たな姿に変わった魔術飛行艇エア・ライドMk-Ⅱに早速跨る八雲は、


「ほら、後ろに乗って。横座りに腰を下ろして、此処のステップに足を置いて、そうして俺の腰に掴まっていてくれよ」


「―――は、はい。これでよろしいですか?/////」


ヴァレリアの状態を確認して八雲が魔力を流し込むとふわりと宙に浮く魔術飛行艇エア・ライドに、ヴァレリアは驚きつつも八雲にしがみ付いて笑って喜んでいた。


「凄いです!八雲様!飛んでいますわ♪」


「よおし、それじゃ走るからしっかり掴まっていろよ!ヴァレリア」


「―――あ、はい♪/////」


宙に浮いた魔術飛行艇エア・ライドの推進部が空気を前から吸い込み、風属性魔術のジェット気流を生み出して軽快に速度を上げて走り出して行く。


そして門から飛び出した八雲とヴァレリアは地面から二mほど浮いたところを走りながら、エルフの家が建てられた場所へと向かうのだった―――






―――エルフの家を建造しているエリアに行って、


八雲の建てた建物にドワーフ達が扉に窓枠とガラスをはめ込む作業は終わっており、いつからでも住めそうな形に出来上がっていた。


だが、やはり内装まで仕上がってはいても家具が一切ない状態では床で寝ることになってしまうので、それは明日になりそうだと見通していた。


現場の状況を確認する八雲と、それを楽しそうに見て回るヴァレリアが黒龍城に戻ってきた頃にはちょうど辺りも薄暗くなり、もうすぐ晩餐会といったタイミングだった―――






「―――新たな皇帝の誕生と我等のシュヴァルツ皇国とフォック聖法国の繁栄を願って、乾杯!!!」


エドワードの音頭により黒龍城での晩餐会が始まる。


晩餐会にはエドワード王、アルフォンス王子、アンジェラ王女、エアスト公爵と公爵夫人―――


―――エミリオ王、レオン先代王、ジョヴァンニ評議長。


ジェローム聖法王と先に城に来ていたフレデリカ、ヴァレリア、シャルロットにユリエルという四カ国の代表とフォック聖法国の聖法王と身内である参加者―――


―――当然主役の八雲にノワール、そしてエルフの娘達も着飾って参加している。


エルフ達にはレベッカとルドルフにも参加してもらって気を許せる空気を作ってもらった。


龍の牙(ドラゴン・ファング)のメイド達も給仕をしながら今回護衛をした王族達と楽しく話し込む者もいる。


また護衛に来ていた『ティーグル近衛騎士団』のラルフと教会騎士パラディンの『聖法庁聖戦騎士団クルセイダーズ』のフォスター=クレブス団長も今日は王達の命令で参加している。


―――フォスターは教会騎士パラディンの中でも最高の騎士と謳われる人物で年齢は二十六歳。


髪は少し長めの金髪で蒼い瞳をしている美男子であり剣の腕も立ち人望も厚く、フォックの民衆からは『騎士の中の騎士』『騎士の鏡』と呼ばれているとのことで八雲も話してみて実際にその誠実さが伺い知れた。


「―――黒帝陛下とこうして直にお話出来て光栄に思っております」


フォスターに深々と頭を下げられて八雲が困っている姿を見てラルフが思わず笑ってしまい、そのラルフは八雲にジト目で見られたりしてなかなか見られない場面もあった。


―――今日は無礼講だと八雲が宣言して身分に関係なく皆で楽しく過ごした。


アクアーリオの料理とフィッツェのデザートは大好評で再びアンヌの店を出しましょう!攻撃にタジタジになるふたりだったが、リオンのミネアでの経験がふたりにとって良い経験になったようで、以前ほどオドオドせずに前向きな話をアンヌとクリストフを交えて四人で話し合っていた。


ノワールとレオ、リブラは走り回るチビッ子達が怪我をしないかとヒヤヒヤしながら追いかけている。


シェーナは抱いているクマのぬいぐるみの口元にサラダで添えられていたプチトマトを押し付けてひとりでおままごとをしているようで、その姿に八雲とノワールはニマニマとした笑みを浮かべて可愛らしさに癒されていた。


八雲の正式な妻となるフレデリカ、ヴァレリア、シャルロット、ユリエルは四人でお互いの知っている八雲の話しを交換してキャッキャ♪ うふふ♡ と盛り上がっていた。


アンジェラも姫様達の輪に入って夫との生活というものについて心構えなどを話して更に盛り上がっている。


エドワード王達男組は聖法王を交えて今後のシュヴァルツ皇国と教会との協力体制について話し合い、最後には今は亡きフレデリック皇帝に酒の入った盃を手向けていた。


―――そんな楽しい一夜は盛り上がったまま続けられて、気がつけば夜中になろうとしていて漸くお開きとなった。


エルフの娘達やシェーナ達チビッ子組は、もうとっくにお眠の時間になって先に休んでいた。


そうしてそれぞれが帰路についてルドルフとレベッカも城に泊まっていけば?と八雲が伝えたが、レベッカが知り合いに頼んではいるものの孤児院を長く空け過ぎたからとふたりとも今日は帰っていった。


楽しかった時間が一気に静まり返って八雲も自室に戻ることにした―――






―――自室のドアを開けて中に入るとそこには、


「―――お待ちしておりました♡ 八雲様/////」


寝る前とあってか透けている赤いナイトガウンに下に着た赤い上下の下着が見えているフレデリカがベッドの縁に座って待っていた。


しかも透けて見えている下着は見えてはいけないものが見えている扇情的な下着だ。


「フレデリカ、その下着は?」


八雲が近づきながら問い掛けるとフレデリカは妖しい笑みを浮かべながら長い銀髪を靡かせて八雲に近づき、首に両腕を回したかと思うと、


「八雲様に喜んで頂きたくて、とても扇情的な形にしましたの。如何ですか?気に入って頂けました?/////」


顔を近づけて囁くので、


「最高……ん!」


「んん!……ちゅ……あ…はん♡……んん/////」


そのまま唇を奪い八雲は舌を突き入れてフレデリカの口内を蹂躙していくと、フレデリカの息も熱いものに変わっていく……


そしてふたりは大きなベッドに倒れ込んでいった―――


「あぁあぁ!!!ああ♡ やくもさまぁ―――♡/////」


フレデリカのそんな嬌声は、空が白むまで止むことはなかった……






―――翌朝


ベッドで気を失った時から眠り続けるフレデリカの額にキスをする。


着替えを手伝いにきたレオとリブラによって八雲は身形を整えた。


それから厨房に向かうとアクアーリオとフィッツェがもう食事の支度をほとんど済ませて皆を待っていた。


「―――おはようございます♡ 八雲様……んちゅ♡」


「―――今日もいいお天気ですわ八雲様……ちゅ♡」


最早当たり前のようにフィッツェとアクアーリオにキスを交わす八雲。


「ん、ちゅ……おはようふたりとも。俺の部屋でフレデリカが休んでいるから、起きてきたら食事をさせてやってくれないか」


「ふふっ♪ かしこまりました。昨日はそれほど激しかったのですか♡」


フィッツェが悪戯っぽく笑いながら問い掛けると、フィッツェの腰を引き寄せながら耳元で―――


「―――何度も続けたから」


―――ワザと囁き伝える。


「まあ♡ そんなに激しくフレデリカ陛下を可愛がられたなんて♡ 少し妬けてしまいますわ/////」


八雲の声でそんな激しい情事を聴かされてしまい、フィッツェは無意識に頬を赤らめる。


だが今日の八雲は予定があるので朝食を早めに済ませてひとり、城の外に出ると魔術飛行艇エア・ライドを『収納』から取り出す。



挿絵(By みてみん)



そして魔術飛行艇エア・ライドに跨ると、


「さて、それじゃあ行くか!」


軽く気合いを入れて、魔術飛行艇エア・ライドを空中に浮遊させると推進部に魔力を送り、ジェット機の様な速度で首都アードラーに向かって飛び出して行くのだった―――



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