5話 理想郷は本当にあったんだ
俺TUEEEってタグは知っていましたが、
俺DEKEEE ってタグがあるかどうか調べてみると、1作品だけありました。
同士よ!って思ったんですけど、でかいのはアレでした。
ご興味を持った方が居ましたら、ご検索ください。
-------------------------------
ちょっとしたアクシデント(エイルを鼻から吸っちゃう所でした)もあったが、その後は順調に移動ができた。
野を超え、山を越え、俺の足で二時間ほど進むと、開けた場所にでる。
平原のど真ん中に真っ黒に塗られた石によって積み上げられた防壁が唐突に現れる。
街をぐるりと取り囲むように張り巡らされた黒い壁によって、街はまるで要塞のようだった。
確かにあんなに丈夫そうな壁があるなら、街に立てこもって逃げ出そうとしないのも理解できる。
「ま、街から火の手が!!! それに、防壁の外周に魔物の集団が見えます! コウ様、急いで下さい!」
自慢の壁も、空から来る魔物相手では役には立たない。
翼の生えたトカゲのような魔物が街の上空に何匹も飛んでいた。
口から炎を吹き出している。
その他、数百匹ぐらいの魔物が門の前に集まっていた。
大部分は飛行能力を持っていないようで、街を襲っている魔物の数は決して多くはない。
だが、飛んでいる魔物に対して町の防衛隊は苦戦しているようだった。
これは、急ぐ必要があるな。
俺は強めに地面を蹴って進む。
このスピードは本気ではないが、エイルを持ったままではこれくらいが限界だろうという速度だ。
「落ちたら死んじまうぞ。気をつけて!」
「はい!」
魔物の集団のヘイトをまず俺に集めなければならない。
ズシンズシンとわざと轟音を響かせながら街へと近づいていく。
「コウ様。まずは周辺の魔物を一掃して頂けないでしょうか?」
「オッケイ、任せろ!」
こんな巨体が急に現れたのだ。狙い通り魔物たちは全て俺の方に向いていた。
あの技を使う時が来た!
集合してるとは都合がいい。
俺は丹田と呼ばれる体の中央に力を貯め、大きく空気を吸う。
全てを焼き尽くす灼熱のイメージを具現化する。
「――さぁ、焼き尽くしてやろう!! 巨人の吐息!!!!」
俺の吐息は赤い光の光線となって、街周辺にいる魔物たちを消滅させ……はしなかった。
はい、やっぱり出ないよね。光線。
「コウ様!?」
「気にするな今のは戦闘開始前にやる特別な呼吸法だ。これで準備は万端。さぁやろうか!」
勢いで誤魔化して魔物の集団と退治する。
俺がでかすぎるので見下ろすといった表現が正しいだろうか。
しかしこの体。でっかいだけで何か特別な能力はマジで持ってないらしい。
これではただの大きなニンゲンではないか。
「…………」
先程までは元気いっぱいに街の周辺を闊歩していた魔物たちだが、今はみなピタッと動きを止めて俺の様子を伺っている。
「あん? ヤんのかオルァ!!」
ガンをつけた。
体が大きいヤツは気も大きくなるというが、まさに今の俺のことだろう。
俺TUEEEE!!!! & 俺DEKEEE!!!
言葉と俺の眼力通じたのかは不明だが、魔物たちは一斉に蜘蛛の子を散らすように走り出す。
まぁ、俺からすれば本当に蜘蛛の子くらいのサイズだから、表現のまんまな光景だ。
「……さすがですコウ様。魔物たちが逃げていきます」
うっとりとした表情で俺を見つめる。
「それほどでもない」
謙虚な俺だが賞賛の言葉は素直に嬉しいと思う。
これまで孤独だった分、心が満たされていくのを感じる。
もっと、もっと褒めて!! プリーズ!
空を飛んでいた魔物も含めて全ての魔物たちが撤退したようだ。
防壁の中までは魔物は入りこんでいないようで、火もあらかた鎮火した。
「私をあそこへ置いてくれませんか。街の皆に我らが神の御使い、コウ様のご降臨を告げます」
エイルに言われるがままに、防壁の上に腕を伸ばしてそっと置いた。
防壁に近づいたので城壁より高い俺は(悲しみ)ので、街の様子が覗けるようになった。
魔物に襲われていて唯でさえ緊張感MAXの街に、防壁の上に巨大な顔が出現したのだ。
さぞかし街は恐怖に包まれて……いなかった。
「巨人……様。まさか……」
「か、神の御使い様だ! 見よ! 我らを救ってくださったのは……。 感謝致します、感謝致します!」
「おお、皆のもの顔をあげよ! 救いの手は差し伸べられたぞ!」
「我らの祈りは届いたぞ!!」
戸惑いの色は最初だけで、だんだんと声が上がり始める。
街中から感謝の声が俺に集まってくる。
あれ? 大歓迎されてるっぽい。
Why? 何故に?
「歓迎されてるのかな?」
「当然でしょう。……私も最初はコウ様に驚きましたが、それはその偉大さに驚いただけです。この街は巨神教の聖地、毎日のように賛美の言葉を捧げている神の姿を見て、恐れはしないでしょう。あれを見てください!」
街の中心を指差すエイル。
そこには、巨大な人間の像が立っていたのだ。
どうすればこんな巨大な建築物を作ることができるのだろうか。
「皆、聞け!! 私は約束通り教団に伝わる巨人、伝説の神の御使いコウ様をここ、聖地アズタランにお連れした! 教えは本当だったのだ! もう恐れることはない、今こそ反撃のとき!」
勝どきをあげるような大きな声を上げて宣言する。
彼女はこの町では有名なようで、涙を流して彼女の名前を連呼する信者の様子も見受けられる。
ここは、巨人の像を崇める一神教の宗教都市アズタラン。
住んでいるのは巨神教とかいうちょっとカルトっぽい教徒たち。
防壁から頭を突き出している俺を跪いて拝んでいる人までいる。
なんだろうこの俺のために用意されたような素晴らしい街は。
神様、ありがとう(女神は除く)。