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3話 神にも悪魔にもなれる


 ――巨大化(ギガンテス)

 それは俺を殺した女神のくれた加護(チート)だった。


「ふ、ふざけるなああああああ!!!」


 女神のくれた加護(チート)の正体に気がついたのは、異世界に転送されてしばらく経ってからだった。

 俺は目が覚めると見知らぬ砂漠のど真ん中で、倒れていた。


 一時間も歩けば外に出られる大きさだったので、その時は気が付かなかったのだ。

 砂しかない砂漠では自分の大きさなど、気がつけるはずがない。

 

 砂の世界を抜けて、緑が生い茂る山林を目にした時、どうしようもない違和感が俺を襲った。

 丘に芝生(しばふ)が生えていると思ったら、よく見ると草ではなく生い茂る木々であった。

 小さな虫かと思っていたら、節足動物(せっそくどうぶつ)ではなく、ヤモリくらいのイノシシがいた。

 

 この時点では、異世界なんだから小さなイノシシだっているさと、思っていた。

 だが、次々と出会う生物全てが、小さかった。

 小さすぎた。

 

「……え? もしかして俺がデカイ?」


 そんなはずはない。

 そんなはずはないと思い込もうとした。

 

 だが、人間の街を見つけた時、そしてそれがミニチュアサイズの街だったのを確認したときに、疑問は確信に変わった。

 

 この巨体では、俺は化物だ。

 人間に追い払われてしまい、それ以降、俺は誰にも見つからないようにひっそりと深い山脈で隠れ住むようにして暮らしている。


 最強の肉体はどうやら腹も減らないらしい。

 それだけが救いかもしれない。このサイズで飲食をすればそれこそ世界の生態系を狂わせるだろう。


 俺を脅かすような存在はいないが、友人、恋人、仲間と呼べるような相手もいない。

 辺りを探索したとき、地下ダンジョンらしいものも見つけたのだが、どう考えても俺が入れるとは思えない。


 やはり、この異世界ライフは()んでいた。


 ――プツン。

 

 何かが切れる音がした。

 もちろん俺の堪忍袋さんがお切れになった音だ。


「もういい、俺は寝る」


 よし決めた。


 明日起きたら、こんな世界は滅ぼすくらい大暴れしてやる。


 題して、あなたを殺して私も死ぬわ作戦だ。

 あのアホ女神だって管理する世界がなくなるのは困るだろう。






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「――それは非常に困る」


 声が聞こえた。これは、夢の中か?

 前にみた真っ白い部屋に、俺はまた立っていた。


「あなたそれでも人間? 無責任。最悪。望み通りに世界最大最強の力を与えたのに」

「俺が言ったのは最強だ。最大にしてくれなんて言ってない。元に戻せ」


「それは無理。大きくなりすぎて私の力が及んでいない。転送もできない。あなたの世界の単位でいう10メートルは切らないと」

「なんでココには来れたのに戻せないんだよ?」


「今回は世界の階層をずらす形であなたを転送させた。例えるならビルから落とすことは簡単だけど、引き上げるのは難しいということ。質量が大きすぎる。重い、ダイエットして」


「お前が大きくしたんだろうが!!! 責任とれ!」

「あなたの希望を叶えた。その肉体は最強。そして最大!!!! クー、カッコイイ(棒読み)」


「最大はいらねえ!! ねえ? 分かっててこんなふうにしたよね? これ嫌がらせだよね?」

「あなたにさずけた力を伸ばしていけば、きっと……もしかしたら、体の伸縮を制御できるようになる、かもしれない。多分。きっと」


「多分じゃ困るんだよ……」


 全然話にならなかった。


「その世界であなたの神格を上げれば自分の力で戻ってこれる可能性はある」


「神格?」


「そう、あなたは今神様に近い存在とも言える。巨人というのは人間と神の狭間の存在。徳を積めば神になれる。神となり命ある存在を助け続ければ、クラスアップする……かもしれない」


「一応聞くが、悪事を働くとどうなるんだ?」

「その場合、悪魔にもなれる」


「マジンガー!!!」


 ふざけんなー! 


「私は、疲れた。あなたの体を作るのに力を使い切った。今回もかなり無理をしている。私の力が回復したら、また夢に召喚する。だから、それまであの世界で良い行いを……」

「ちょっと待てまだ話は――」


 手を伸ばした所で、俺は夢から覚めた。


 いや、悪夢から、覚めた。



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