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最終話 旅人

ありがとうございました。


 もう目が見えない。だが、暖かい声が聞こえてくる。

「エイルか……」

「はい、コウ様……」


 俺はボロボロだった。

 両腕を失っているし、片目も潰れている。

 さらには腹にでかい穴まで開けられている。

 

 残った片方の視界も霞んできた。




「申し訳ございません。私が無茶なことをいったために、コウ様がこんなお姿に……」


「いや、いいんだ。これで」


 お前が来てくれるまで、孤独な異世界転生だった。

 だけど、エイルが来てくれてからは楽しかった気がする。

 金髪碧眼の美女と知り合えただけで、満足さ


「わ、私など騎士修行しかしていませんでしたし、誰も見向きもしないです。こんな私になど……」

「大丈夫だよ。美人さんだよ、エイルは」

「……。コウ様。私はズルい女です」

「どこが、コウ様が、そういってくれるのではないかとおもい、自分で自分を卑下したのです」

「馬鹿だなぁエイルは」

「はい……」


 痛みが引いていく。

 いや、もう痛みなど感じなくなっているのだろう。


 どうやら終わりの時間が近づいてきたようだ。

 

 ああ、そうだった。勇者一行がどうなったかって?


 大丈夫。あいつはしっかりとシメといた。

 勇者なんて名乗っておいて、あんな態度を取っていれば、必ず勝利する因果なんてものも味方はしてくれないだろう。


 地中深くめり込むくらいの頭突きでFINISHしてやったぜ。

 ザマァ見ろ。


「コウ様、お体の様子が……」


 体が黒っぽい緑色に染まっていく。

 俺の、前世? のゴリアテもこうやって石になったのだろう。

 

 俺の異世界生活もここまでのようだ。

 やり残したこと? たくさんある。イチャラブのイも出来なかったし、無双どころか、ボロボロだ。

 あんまりエンジョイしてない気もするが、この胸にあふれるのは大きな達成感だ。


 まぁ死ぬには良い日だ。





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 気がつくと、また、あの白い部屋に俺は立っていた。


 お疲れ様。

 女神は言った。。

 

 おうよ。

 と、俺は答えた。

 

 その後、しばらく無言だった女神だが、俺にこう教えてくれた。

 

 ゴリアテは、やはり俺の前世らしい。

 次は普通の暮らしがしたいなとなどと言って地球という星の日本に生まれ変わりをしたそうだ。


 その俺がまた異世界なんて望んじまったのは笑い話だろう。ちなみに、あの街がピンチになったらまたあそこに戻りたいと、そう願ったらしい。前世の俺は。


 ティーカップが落ちてきたのはどうやら、偶然ではなく俺の前世の願いを聞いてくれたようだ。


さて、今度はどんな世界に連れて行かれるのだろうか。

 

「一つ残念なお知らせがあるわ。あなたは二度の人生に渡ってハイペリオンの加護、つまり巨人化してしまった。これはもう、そういう因果があなたに生まれたと言っていい。多分次の人生も巨大化からは逃げられない」


「まじかよ……」


 次もムフフなイチャコラできねえじゃねえか。


「そこで私は考えた。あなたが大きくても問題がない世界。そう周りもみんな大きければ問題ない」


「そんな世界があるのか?」


「あるわ。それはM87星雲星雲の彼方にある光の国。地球の約60倍の大きさの惑星よ」

「それってシュワッチの星じゃね!!!!??」


 どうやら、次もとんでもない人生になりそうだ。

 

 だが、まあいい。楽しんでいこうと思う。


「分かった。それでいいよ。名前はタロウだけは避けたいところだな。でも、最後に一つ聞いていいか?」

「良いわよ」


「本当のところ、どっちだったんだ? ゴリアテ――、俺は前世で人間を救おうとしたのか、食べようとしたのか?」

「ゴリアテのこと? んー……」


 女神は十分にもったいぶって、そして飛び切りの笑顔でいった。


「彼は本当に、人間のことが大好きだったわ!」

「おいおいそれじゃどっちの意味にも取れるだろうがよ」

「あなたはどっちに取るかしら?」

 

「そうだな、 俺は――」







 終。











文章の練習や毎日書く習慣をつけようと、中編くらいのテンプレモノを書こうと思いました。

全然テンプレからは遠ざかってしまいましたが楽しかったので良しとします。

次は、長編に挑戦したいと思います。

どうぞよろしくおねがいします。


最後まで読んでくれてありがとうございます。

ブクマ、評価、感想  厳しいご意見でも全然Okですので頂ければ、次の糧となります。

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