1話 高身長男子は好きですか?
毎日、1話更新で頑張っていきまっせ。
こんな話を知っているか?
生物の身長が2倍になると、筋力は4倍になり、体重は8倍になる。
これを2乗3乗の法則と呼ぶらしいが、体重は8倍で筋力は4倍だと、筋力よりも体重が増えた影響が大きくなってしまい、動きは遅くなってしまう。だから大概のでかい生物は動きが遅い。
だが、もし巨大な生物は動きが遅い……なんてことはなく、身体能力に変化がないまま巨大化できたらどうなるか?
例えば100メートル超の人間が元の大きさのままのスピードで動くとどうなるか?
答え:左ジャブ一発で全てが潰れたトマトになる。
当然の結果である。
ガンダムやマジンガーZよりも2倍以上大きな体は、ただ存在するだけでも生きとし生ける生物にとっての抗いようのない驚異となりうる。
その大質量な巨体が倒れ込むだけで、そこに敵がいた形跡ごと無かったことに出来てしまう。
どんな巨大なモンスターだって人間にとっての「巨大」であって100メートルの巨人からすれば違う。
ドラゴンだってきっとチワワサイズだ。
まぁ噛まれたら痛いかもしれない。チワワに噛まれたことはないが。
俺はそんなチートを実は手に入れてしまったのだ。
小説なんかで読んだ物語ではみんな素晴らしいチートを得て、冒険者ギルドなんかに登録しちゃってランクを上げていずれは英雄に!
そうすれば現地の女の子にもモテモテになる! 的なお話が多かった。俺もそうなれるのだ!と妄想をしたこともあった。
しかし、人の夢と書いて儚い。
俺の想像した異世界ライフは妄想で終わった。
この100メートルを超す巨体では、肝心の冒険がそもそも始まらないのだ。
ここに来てすぐ、最初に見つけた大きな城のある街に立ち寄ろうとした時の話をしよう。
まぁブラウザバックせずに聞いてくれ、そう長い話にはならない。
一行で終わる話だ。
【巨人の接近を知った住民はパニックに陥り、街を防衛する衛兵や、冒険者っぽやつらに攻撃されて(痛くなかったけど)話も出来ずに逃げ出しました】
どうよ? 俺の異世界の生活は、最初から詰んでる気がする。
そりゃ、小人にしか見えない人間と戦って負ける気はしない。
だが、勝ってどうするよ?
俺は街を滅ぼしにきたわけじゃない。
俺は走って逃げた。
今では、人気のない深い山脈の中で生活をしている。
強者は孤独だというが、これは別の次元の孤独だ。
ボッチだ。異世界でボッチなのだ……。
人恋しい……。
身長(全長、と言いたくなるサイズだ)50メートルの男性とか興味ありますか? 高身長男子ですよ?
自分で言ってて悲しくなってきた。
そういえば俺をこうしたあの女神は「必要なら、あっちは小さくしておく? でもそれウケますね(笑)」
とか、言って笑っていたな。
俺がこうなったときのことを思い出すと今でも胸が燃えるように熱い怒りがこみ上げてくる。
俺がこの世界にきてこんな体になってしまった原因。
それは――。