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困った時の女神様達頼み

そうだ!!女神様達が居た!!仮にも神様なのだから、どうにか出来る手段を知っているかもしれない。そう思って俺は懐からギルドカードを取り出した。そんな俺の様子を見てグレイブさんが声を掛けてくる。


「急にギルドカードなんか出してどうしたんだ?」

「いや、ちょっと……」


さすがにギルドカード内が女神様達の寄り合い所みたいになっているなんて事は言えないので、曖昧にごまかしておいた。そうして俺は心の中で現状を綴ってからギルドカードを見た。


「海の女神は大海の穏やかさに眠っている」

くぅ~……すぴ~~……ふふっ……くすぐったいですよぅ~……


「戦女神は鍛錬に夢中で気付いていない」

オラオラ!!まだまだ私はこんなモンじゃねぇぞぉ!!!


「大地母神は木々の栽培に大忙し」

ふふふ……大きく大きく育つのですよ~。


「女神はおやつの時間」

ん~、このケーキおいしい!こんなに食べて大丈夫かな……後で運動しておかないと。


……。


なんでだ~~~~~!!!!!


何やってんの?この女神様達!!いつもは必要以上にこっちを見てる気がするのに、なんで今は見てないんだよ!!こっちはハオスイをどうにか助けようとしてるのに。なんで?興味が無いとか言わないよな?仮にも勇者でしょ?普通、神様って勇者を導き助ける存在じゃないの?……あれか?俺がちょいちょい放置してるから怒ってるとか?都合のいい女神様達じゃないと言いたいのかな……いや、それは……まさかな……


……と、とりあえず、もしかしたらタイミングが悪かっただけかもしれないし、もう1度確認してみようか。そうして俺はもう1度心の中で現状を綴ってギルドカードを確認してみた。


「海の女神は爆睡中」

……ZZZ。


「戦女神は自分の限界を模索中」

もっとだ!もっと!私はもっとやれるはずだ!


「大地母神は花達と歌っている」

ラララ~♪ラララ~♪ラララ~♪


「女神は真剣に悩んでいる」

どうしよう……これ以上食べたら太っちゃう……でも……もう1個くらいなら巻き返せるはず……


バシィ~~~~~~ッン!!!!!!


俺は思いっきりギルドカードを床に叩きつけた。ギルドカードが叩きつけられた部分からはシュウシュウと煙があがっていた。そんな俺の様子に気遣うようなグレイブさんが声を掛けてきた。


「お、おい!大丈夫か?一体何があった?」

「いえ……ちょっと予定外の事が起こりまして……大丈夫です。ギルドカードを叩きつけてちょっとスッとしましたから」

「そ、そうか……」


くっ……女神様達のせいでグレイブさんに俺が少しおかしい奴と思われたかもしれない。よ、よし。一旦落ち着こう。深呼吸して……す~は~す~は~……




ふぅ……だいぶ落ち着いた。よし、もう1度だ。女神様達ならきっと知っているはずだ。わかるまで続けるべきだろうか……けど、このままじゃ埒が明かない。何の答えも得られぬまま、ハオスイと戦う事になる。それはつまり、彼女を殺すという事になるかもしれない……仕方ない、試してみるか。なんか恥ずかしいから、これだけはやりたくなかったけど……手段は選んでいられない。俺はゆっくりと心を静め心の中で呟いた。


(どこかに居ないだろうか……こんな迷える俺を導き助けてくれる……優しく、強く、賢く、美しい……そんな素敵な女神様は……)


そうして、ギルドカードを拾い、見てみる。


「海の女神は目覚めた」

「戦女神は手を止めた」

「大地母神は即答する」

「女神は急いで答えた」

千年エンシェント級のホワイトドラゴンの涙は治癒力・神聖力が高く、彼女は龍人なので、よりその効果が高くなると思います。彼女から赤い玉を吐きださせて、涙を飲ませれば救えるやもしれません。


答えが返ってきた~~~!!!やっぱり見てたんかい!!!なら最初から答えてくれてもいいのに……ううう……でも、女神様達ありがとう!!大好きです!!!


と、思ったのがいけなかった。再び、ギルドカード内の文が変わった。


「海の女神は優しく微笑む」

「戦女神は不敵に笑う」

「大地母神は微笑する」

「女神は口角を吊り上げる」

これでワズさんは私に心奪われるはず……


と変わったと思ったら、直ぐにまた変わった。


「海の女神は臨戦態勢」

「戦女神は戦闘態勢」

「大地母神は突撃態勢」

「女神は徹底交戦」

ワズさんは私のモノだぁ~!!


……やめよう。深く考えるのはやめよう。とりあえず忘れよう。感謝はしてるが俺はそっとギルドカードを懐に入れた。どうか世界に影響がありませんように……




しかし、新たな問題だな。千年級のホワイトドラゴンの涙なんてどこで手に入れればいいんだ。そんな知り合い居ないぞ。山のホワイトドラゴンは皆そんなに長くは生きていないはずだし。メアルの母親のメラルもそこまでは生きていないはずだ。俺はどうすればいいかと視線を部屋の中へと向けると、部屋に飾られている花に興味を示しているのか、その周りを楽しそうに飛んでいるメアルを見ていると思いだした。


まてよ……確かメアルの祖母のホワイトドラゴンが居るはずだよな。確かメギルだったか。あのホワイトドラゴンならもしかしたら、千年級かもしれない。でも、今どこに居るんだ?メラルなら知ってるかもしれないな。他に情報はないし。久し振りに行ってみるか。あの夫婦がどうなったかも知りたいし、メアルを会わせてやりたいしな。そう思うと居てもたってもいられず、メアルを呼ぶ。


「メアル!!出掛けるぞ!!」

「キュイ!!」


メアルは俺の言葉に反応していつもの定位置である俺の頭の上へと戻ってくる。


「ん?どっか行くのか?」


グレイブさんが急に出掛けようとする俺に声を掛けてきた。


「あぁ!ちょっと当てが出来たから行ってくる。2日後のハオスイとの戦いまでには戻ってくるよ」

「俺も手伝おうか?」

「いや、大丈夫。まぁ、ちょっとした里帰りみたいなもんだから。じゃあ、行ってくる!!フロイドにも伝えといてくれ」

「わかった!とりあえず、気を付けてな!」

「あぁ!」


そう言って俺は部屋を出て、宿を出て、街を出て、大陸の中央にそびえ立つ山へと向かった。

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