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足が地面につくって安心するよね

ギルドカードをしまった俺は、とりあえずフロイド達の所へ行こうと体を起こした。


ビキビキビキビキ……


いったぁ~~~~~~~~!!!!!!


身体中が悲鳴をあげて痛みを訴えてきた。少し上半身を動かしただけなのに、身体中至るところが痛い。思いあたるのは神格化だろうか?人ではない状態から戻った反動だと思われる。うぅ……こんなに痛みを感じるのは久々だ。あまりの痛さにちょっと涙目になってしまった。それでも我慢して体を起こし、フロイド達を探す。歩くだけでも痛い。


フロイド達は案の定船の縁から顔を出して、いつでも吐ける体勢で会話をしていた。俺は痛む体を動かしてその場へと向かう。


「ワズ様。もう起きられて大丈夫なんですか?」

「あぁ、大丈夫だ」

「船に戻ったと思ったら急に倒れるもんだから、びっくりしたぜ」

「心配をかけたようで……」


フロイド達はとりあえう無事な俺の様子に、顔色は悪いが笑顔を向けてきた。むしろ、お前達の方が死にそうになっていると思うんだが……


「しかし、一体何があったのですか?髪も少し変化していますし……」

「変化?」


え?なんか変わってるの?見えないからわからなかった。どう変化したんだろう……変になってなければいいんだけど。確認しようがないな……


「ほれ、これで見てみ

我が姿を写すは 水の鏡」


グレイブさんが魔法を唱えると、指先に顔が写るぐらいの大きさの薄い水が現れた。そこに俺の顔を近付けると変化している部分がわかった。俺の髪色は元々全部が真っ黒であったが、今はその黒の中に所々白い髪が出来ている。大体黒白の割合が半々くらいかな。なんというかまだら模様みたいな感じだ。


「この髪はどうなんだろうか?」

「行って帰ってきたら、その状態でしたからね……何かそうなった原因に思い当たる事でもありますか?」

「ある事はあるな……」


おそらく神格化の影響だと思う……元に戻るんだろうか……


「気にしなくていいんじゃねぇか?俺は格好いいと思うぞ!!」

「そうですかねぇ?」


グレイブさんは肯定的だな……まぁ、元に戻るとしても今すぐは無理だろうから、このままでいいか。戻す方法もわからないし。


「ところで、俺って戻ってからどれぐらい寝てたんですか?」

「ん?そんなに時間はたってねぇぞ、なぁ?」

「そうですね、1時間もたってはないんじゃないでしょうか?」


俺の問いにグレイブさんが軽く答え、フロイドがおおよそで答えてくれる。神格化じゃなくなるとそれぐらいの時間は全く動けなくなる上に、こんなバキバキの体の状態になるのか……生命の危機なんてそうそう起こらないとは思うが少し気を付けよう。


その後は3人で雑談して時間を潰していった。主にグレイブさんのハーレム関係の話で。この人の女性の趣味への幅広さには恐れ入った。年齢は関係なく自分が気に入った女性には本気で口説いているらしく、女性達の職業も普通の町民から騎士に、南の海には海賊まで、ほぼ網羅しているそうだ。ただ、グレイブさん本人が言っていたように王族関係には手を出しておらず、また、特定の相手がいる女性には見向きもしないそうだ。しかし、そんなに大勢の女性を囲って喧嘩にならないのか?とか、嫉妬に狂った奴から狙われないのか?と聞けば、どうやらグレイブさんの女性達は非常に仲が良く、「グレイブ奥様連合」なるものを立ち上げて日々情報のやり取りをし、悪漢からグレイブさんを守っているらしい。


「いや、グレイブさんはSランク冒険者でしょ?守られる立場じゃないでしょ?」

「いやいや、俺だって常に周りを警戒してる訳じゃねぇよ。そんな時に襲われてみろ?Sランクだろうが1発で御陀仏だぜ」


確かにそうだと思った。多分俺は例外だろうけど。


「馬鹿に出来ねぇぜ!俺の奥様連合の情報網は!なんつっても俺の愛する奥様は世界中に居るからな!ハッハッハッ!!」

「つぅか、完全に尻に敷かれてますよね?」

「そりゃそうだ!俺は逆立ちしたって奥様には勝てねぇよ!!けど、そんな俺の奥様を傷付けるような奴が居たら……死んで理解するだろうな……誰の女を傷付けたかって事をな」


そう言ったグレイブさんの雰囲気が一気に変わる。周りの空気が重くなり、威圧と重圧で動けなくなる。まさにその姿はSランクと言えるだろう。まぁ、俺は平気だけど。


「わかってるよ!俺だって無闇にグレイブさんと敵対しようとは思ってないから」

「そりゃ、俺もだ!!」


先程までの雰囲気が一気に消え去り、人懐っこい柔和な笑みをグレイブさんが浮かべた。こんな人も居るんだなぁ……俺とグレイブさんはガッチリと握手を交わした。


しかし、ハーレムねぇ……


まっ、俺には無理だな。まず相手が居ないし。






そうして3人で話していると、程なくして船は港へと着いた。着いた瞬間、フロイドは船から飛び降り地面へと寝そべり、愛おしそうに地面を撫で始めた。


「はぁ~、揺れないって素晴らしい!!私はもう大地から離れる事は出来ない!!」


俺とグレイブさんはそんなフロイドの奇行にポカーンとしてしまった。グレイブさんはゆっくりとフロイドを指差すと


「あいつはいつもあんな感じなのか?執事なのに?いや、面白いから別にいいんだけど……」

「知らん……俺も出会ったのはつい最近だ」


とりあえず、フロイドの事を深く考えるのはやめようと思った。というか、もうほっとこうかな……

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