船上での出会い
ユニーク3万人突破しました!!
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「オロロロロロロロロロロロ……」
吐瀉物が海へと落ち、綺麗に混ざり流れていくのが見えた。小さな虹も出来ている。しかし、盛大に吐いたな……フロイドが。
俺達が乗った船の甲板の縁でフロイドは船酔いが元で吐いていた。俺は先程借りた金の分、優しく背中をさすってやる、2人分を……
「オロロロロロロロロロロロ……」
「はいはい、全部吐いちゃえば少しは楽になるよ~」
片手はフロイドの背中をさすっているのだが、もう片方はフロイドの隣で吐いている男の背中をさすっている。
「申し訳ありません、ワズ様。こんなにも自分が船に弱いとは思わーーー」
「悪いな坊主。俺は海が苦手でーーー」
「「オロロロロロロロロロロロ……」」
どうしてこうなったのだろうか……最初はフロイドも普通だったのだが、船の縁で吐いているこの男を発見し途端に吐き出したのだ。所々の話によると、フロイドはどうやら船に乗るのは初めてで、まさか自分が船酔いになるとは思ってなかったみたいな事を言っていた。俺はそんな話を聞きながらも背中をさすってやった。船員に頼み、水を持ってきて貰い、口をゆすぐのも手伝った。
俺も船には初めて乗ったのだが、不思議と船酔いにはならなかった。スキルのおかげかな?
そして、フロイドの横で吐いているこの男なんだが、黒髪の長髪で格好は軽装なんだが所々見えている筋肉は充分に鍛えられており、腰に2本の剣を交差する様に差している。顔立ちは切れ長の目で今まで見た中で一番の男前なんだが、その顔は現在辛そうな表情で見る影もない。
しばらく、そんな光景が続くとようやく少し落ち着いたのか、ほんの少し2人の顔色が戻った。
「背中をさすっていただき誠にありがとうございます」
「助かったぜ坊主」
「はいはい、お礼はいいから」
2人は俺に感謝の言葉を掛けると、フロイドは自分の隣に居る男の顔を何か確認するように観察している。
「もしや、あなた様は『疾風迅雷のグレイブ』様ではあられませんか?」
「おぅ!その名で呼ばれるのは久し振りだな。てか、様付けはやめてくれ。なんかこうこそばゆい。同じ吐き仲間だろ?」
「私は執事ですので、自然と様付けになってしまうのでご容赦を」
「疾風迅雷?」
誰だそれ?俺がわからず首を傾げていると、フロイドが説明してくれた。
「疾風迅雷のグレイブ様はSランク冒険者であり、数々の武勇伝を御持ちの御方でございます」
「へ~」
「中でも有名な別名が『ハーレム王』世界中にグレイブ様の奥方様が居られるそうですよ」
「おぅ、今は195人だ」
「ひゃ……」
なんというか凄いなこの人……
「温泉街で働いてる俺の女に会いに行く途中でな、ついでにハオスイちゃんもそこに居るみたいだし、楽しみだなぁ~」
「私達もちょうど温泉街へと向かう途中でして」
「おぉ、なら一緒に行くか!!」
え?一緒に行くの?こんな出会ったばっかりなのに、そんな簡単に決めていいのか?なんというか、見た目と違って豪快な人なんだな。
「紹介が遅れました。私は執事をしております、フロイドと申します。そして、先程まで私達を介護して下さった方が」
「ワズです。Fランクの冒険者をやってます」
自分で言ってて、そういえば俺まだFランクなんだなぁと改めて思った。ほんとこれはどうにかしないとな。
「おぅ!同じ冒険者か!ヨロシクな!」
そうして俺達は互いの事を話していると、船体が急に大きく揺れだした。その揺れによってフロイドとグレイブさんは再び船酔い状態に直行した。
「「オロロロロロロロロロロロ……」」
「一体何事だ?」
俺は2人の背中をさすりながら、近くを通った船員に確認する。
「ヤバイんだ!!近海の主が現れやがった!!早く逃げないと!!」
そう言ってその船員が指差す方向へ視線を向けると、そこには海の上へと顔を出す巨大な蛇が居た。体長は海に入っているためわからないが、胴回りは直径で3メートルはあるだろう。その巨大な蛇が獲物を見つけたかのように、大きく波を起こして前方から船へと近付いて来る。
俺は一端2人の背中をさするのをやめ、船上を一瞬で駆け船の先から巨大な蛇めがけ跳躍する。
「今はそれ所じゃねぇんだよっ!!」
ドパァッン!!
程よい力加減の拳で殴ると、巨大な蛇の頭部は爆発したように弾けとび、絶命する。その後は海の上を走って戻ると、船員達からは称賛の言葉が届き、口々に「ありがとう」だの「助かった」だの言われた。そうして俺は再び2人の背中をさすりながら航海は続いていく。ちなみの蛇はその巨大な胴体の一部を船体にくくりつけ運んでいる。どうやら目的地の港町に着くと換金してくれるらしい。
「さすがワズ様でございます」
「強いんだなぁ、ワズ坊は」
ワズ坊はやめろ。フロイドは血色は悪いがいつも通りの顔で、グレイブさんも血色は悪いが感心したような顔をしている。だが、まだ吐き気は治まらないのか顔は直ぐに海の方へと向けた。俺はため息を吐いて再び背中をさすってやった。
「海賊船だ~~~!!!」
またか……これで何度目だろうか。あの巨大な蛇の後も何度も魔物に襲われていたのに今度は海賊か……お俺は2つの背中をさする手をやめ、慣れた感じで駆け出す。
「もう少し出てくるタイミングを考えろ!!」
一撃の元、海賊船を破壊して船へと海上を走り戻った。運が良ければ生き残れるだろう。